焔 The Flame (実業之日本社文庫 堂場瞬一スポーツ小説コレクション)

著者 :
  • 実業之日本社
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  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408550466

感想・レビュー・書評

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  • 「焔」 堂場瞬一 著

    1.物語
    プロ野球選手。
    シリーズ終了後、FA権を行使して大リーグへの意思をもつ選手。
    成績は、打率、打点、ホームランともに、過去タイトルは一度もなし。常連二位という具合。

    シリーズは、いよいよ残り20試合。
    チームは優勝争い、彼は三冠王が狙える位置に。

    2.構図
    物語は、下記の構図で展開します。

    ①タイトル常連の選手と彼の違い。
    ②代理人とその要求に戸惑いながら実行する彼。
    ③PRづくりに取り繕う表面の彼と本音の彼。
    ④チームの戦績と彼自身の戦績で揺れる彼。

    読者側は、プロの世界で生き残りつづける彼の姿勢から、プロフェッショナルとは何なのか? その仕事の流儀なるものを垣間見ることができます。


    「いまの自分以上の存在になろうという強い意志がない限り、いつの日か魂は乾いた矮小な魂になってしまう。」
    ※著書より。

    3.読み終えて
    プロフェッショナル。
    結果をだしてなんぼ、どの世界でも恐らく同じです。
    己が己の現在の立ち位置を認識して、初めて練習、インプットをするのかもしれません。
    一方で、練習をしたから、結果につながるわけでもありません。相手がありますから。
    ただし、己の戦闘力を高めておくことは、未来の機会に備える点で、マイナスはないとも考えます。




  •  警察小説も含めてドーバー作品は20冊くらい読んできたけど、本書がいちばんおもしろかった( ´ ▽ ` )ノ

     ああだこうだ考え自分を失っていった主人公・沢崎がライバル・神宮寺との交流により覚醒、すべてを吹っ切り焔と化して以降はまさに圧巻( ´ ▽ ` )ノ
     周囲の人間もことごとく延焼、偽りの仮面が燃え落ちて、本来の自分を奪還( ´ ▽ ` )ノ
     最もその影響を受けた代理人・藍川が、自分では決してそれを認めず虚勢を張りつつ動揺してるとこがゆかい( ´ ▽ ` )ノ
     ま、いちおう彼のようなシニカルな視点も描いておかないと、こういう展開の話はオールキャラクターハイ(? ええじゃないか的な)で嘘くさくなっちゃうからね( ´ ▽ ` )ノ

     練習シーンからイメージ作りから試合展開からペナント動向から、とにかく作り込みがリアルで「ほんとに野球が好きなんだなあ」と感心( ´ ▽ ` )ノ

     と同時に、ちょっとプロ野球を知ってる人なら「あ」と思うことが山ほどあるよね( ´ ▽ ` )ノ
     そも舞台は明らかに第一次原政権期のジャイアンツがモデル(新人ピッチャーに弱い)で、主人公・沢崎は松井+清原、神宮寺は落合(どっちも性格・経歴を大幅に変えてるのにすぐそれとわかるところが面白い)、藍川は団野村?とか( ´ ▽ ` )ノ
     年俸を削ってトレーニングルーム増設とか、ファンがホームランボールキャッチとか、沢崎の会見内容とか、神宮寺の連続敬遠(ピッチャーには涙ぐんでほしかったな)とか、八百長疑惑とか……「どっかで聞いたことあるぞ」的エピソードが、事実とは微妙にニュアンスを変えつつ、次から次へ( ´ ▽ ` )ノ
     こういうの、大好き( ´ ▽ ` )ノ
     
     しかし、楽天イーグルス誕生はまだだったかもしれないけど、この小説の執筆時ナゴヤドームと福岡ドームはとっくに完成してたよねえ?……あえてそれらが「ない」ことになってるのはなんでだろう? よっぽど天井付き球場が嫌いなのかな、ドーバー? 東京ドームもとい東京スタジアムもボロクソに描かれてるし( ´ ▽ ` )ノ
     セパ球団を入れ替えてまで、博多イーグルス(笑)なるスターズのライバルチームを捏造してるとこにもドーバーの嗜好だか願望だかが現れていて楽しいね( ´ ▽ ` )ノ
     あと、助っ人外国人の存在がまったく無視されているのもなんかの意思表明なのかな?( ´ ▽ ` )ノ

     藍川と沢崎の関係は、「マイ・フェア・レディ」における教授とオードリーのそれみたいだね( ´ ▽ ` )ノ
     異人種として見下し「自分が教育してやる」とマウントを取りつつ、じつは沢崎の天性の魅力にはじめから首ったけなんだ( ´ ▽ ` )ノ
     それは恋だよ。恋なんだよ、藍川( ´ ▽ ` )ノ
     悪女の深情けみたいなおせっかいを裏から表から繰り返し、情が通じないとやきもきし、「ほかにも男はいるさ」「いずれあたしのとこに戻ってくるさ」とたかをくくり……( ´ ▽ ` )ノ
     すなおに自分は沢崎の熱狂的いちファンなんだと自覚しちゃえばいいんだ( ´ ▽ ` )ノ
    (ちなみに「ミスジャッジ」によれば、その後の藍川は代理人としてちゃんと成功してるらしい)
     

     ほか、いろいろ読みどころ読み応えがたっぷりの、傑作胸アツ野球小説だった( ´ ▽ ` )ノ
     闘士に最も必要なもの、それはもう一人の自分=ライバルだ( ´ ▽ ` )ノ

    2019/09/17

  • 堂場舜一さんのスポーツ小説は「チーム」、「水を打つ」に続いて3作品目。

    「焔」はプロ野球が舞台。
    スターズの三番打者である沢崎鉄人はメジャー入りを目指す。
    何よりも練習を優先させる努力の人。
    スターズの四番打者、神宮司光は練習を嫌い、とにかく遊ぶことを優先させる天才肌の人。
    ペナントレース終盤、チームの優勝とメジャー入りを巡り、追い込まれる沢崎だが…

    もともと野球にはそろほど興味がないので、ちょっと入り込めなかったかな…

  • シリアスに読むより、メジャーリーグ(映画)の様に楽しめば良いと思う。

  • 考えすぎると良くない

  • 堂場瞬一氏のスポーツものは相変わらず面白い。
    メジャーリーグに行く日本人選手もずいぶん増え、さらに大いに活躍しているのを目にするが、行くためには、それも好条件で行くには様々な準備が必要なんですね。
    実力は当たり前だけど運も必要。

    4打席連続本塁打。それも狙ってやる。
    愛する人のため、愛してると気づいた人のため。

    幼い頃から実力を認められてきたが、周りのこともきちんと気遣えるようにならないとあかんということで、人格改造にも取り組んだが、小手先ではやっぱりダメなんだな。

    なんて脈絡もなく乱文に仕上がってしまった。

    読後感はとても気持ちのいいものでした~

  • 日本を代表する主人公がFAを取得し、大リーグへの移籍を目指す。

    自分を高く売るために今まで言動を改め、万人受けするように変わろうと努めるが、恋人から仮面を被っているとようで、昔みたいに野球に対するがむしゃらさが見えなくなったと指摘される。

    ここからの主人公の心の変化が男気がありかっこいい。

    野球好きは楽しく読めると思う。

  • 堂場さんのスポーツ小説。生き方とか好きな事への取り組み方が肝の内容。

  • 野球を舞台とした小説。

    真ん中ぐらいから最後がかなり引き込まれました。

  • 「刑事 鳴沢了」シリーズでこの作者を知り読んでみました。命の危険やスリリングな犯人との対決こそはありませんが、緊張感や人間味溢れる人物に惹きつけられてしまい、この作者の新たな側面を見れたように思います。

    沢崎も藍川もなんだかただの嫌な奴のように見え、神宮寺ばかりが読者の好感度メーター稼ぎまくり…かと思いきやドラマチックな展開と沢崎のど根性で熱い場面を自ら引き寄せる。そして、藍川も忘れかけていた思いが…。

    終盤はやや涙ぐみながら読んでました。これは面白かった。

  • 【読間】
    “野球サスペンス”…聞きなれない言葉だ(笑)。

    現在約60ページ。
    堂場スポーツもの、と思って購入したが、単なるスポーツものでは終わらない予感。関連作(?)『ラストダンス』を先に読んだので同じ系統の“熱さ”を想像していたが、どうやら違う模様。これはコレで、楽しめそうだ。 2013.01.09.


    【読了】
    最終戦の迫力、興奮といったら、もう…。スポーツもの・警察もの、を問わず堂場作品は、後半4分の1、5分の1の盛り上がり・失踪感がたまらない。

    関連作を先に読んでいたため彼らの後日談を知っていたから良かったものの、本作の結末だけだと、ボカされ過ぎていて消化不良を起こしたかもしれない(苦笑)。

    「ラストダンス」にも敬意を表して★4つ、9ポイント半。
    2013.01.10.了。

  • 既読

  • 堂場瞬一のスポーツ小説シリーズ。『8年』『ミス・ジャッジ』でMLBの世界が描かれていますが、この作品は、そのMLBに行こうとする選手を巡る話。

    サスペンスと銘打たれていますが、確かに描かれている策謀剣術の世界はサスペンス。最近のプロスポーツ選手は、イメージも重要なのでイメージ戦略はもちろんのこと、目的を達成するためには手段を選ばないエージェントなど、プロスポーツの裏世界の話がこの物語の一つのテーマになっています。

    もう一つは、首位打者を争うライバルとの戦いが描かれています。戦いといっても、戦いだと思っているのは主人公の方だけで、相手方の方は“自然体”な訳ですが。しかし、争って行く間に、二人の戦う者同士=似た者同士の間に、ある種の友情のようなものが生まれ来ます。

    堂場瞬一のスポーツ小説は、結末がはっきりと述べられない事が多いですが、これもそうです。って言うか、物語としたら、こう言う終わり方のほうが面白いのかな。

  • 読みやすくて良い。自分の中で何が大切なのかと、考えさせられた。

  • トップアスリート、それも野球の世界の。
    考えすぎで素直じゃない彼が最後に素直になる。
    もっと早く素直になれるんじゃない??と思ってしまった。

    メジャーがどれほど目標になるか良くわからない私には
    今一歩の話だった。

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著者プロフィール

堂場瞬一(どうば しゅんいち)
1963年茨城県生まれ。2000年、『8年』で第13回小説すばる新人賞受賞。警察小説、スポーツ小説など多彩なジャンルで意欲的に作品を発表し続けている。著書に「刑事・鳴沢了」「警視庁失踪課・高城賢吾」「警視庁追跡捜査係」「アナザーフェイス」「刑事の挑戦・一之瀬拓真」「捜査一課・澤村慶司」「ラストライン」「警視庁犯罪被害者支援課」などのシリーズ作品のほか、『八月からの手紙』『傷』『誤断』『黄金の時』『Killers』『社長室の冬』『バビロンの秘文字』(上・下)『犬の報酬』『絶望の歌を唄え』『砂の家』『ネタ元』『動乱の刑事』『宴の前』『帰還』『凍結捜査』『決断の刻』『チーム3』『空の声』『ダブル・トライ』など多数。

「2023年 『ラットトラップ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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