- Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784408551432
作品紹介・あらすじ
低迷に喘ぎ、売却が決定した名門球団"スターズ"。本拠地でのシーズン最終戦、プロ初先発のルーキー有原はノーヒットノーランのまま9回を迎えた。スターズのリードは1点。快挙達成へのアウト3つを奪うため、ルーキーが綱渡りで投じる20球を巡り、両軍選手や監督ほか関係者の思惑を、1球ごとに語り手を替えて濃密に描き出す。堂場野球小説の真骨頂、渾身の書き下ろし!
感想・レビュー・書評
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『20[ニジュウ]』というその小説は、設定が凄い。
歴史あるプロ野球チーム“スターズ”に入団した有原。かつては人気と実力を誇るチームだったが、低迷を極めて売却が決定。来期にはオーナーが替わり、首脳陣も一新されてしまうのです。今のメンバーでは最後になるだろう本拠地での試合で、先発を任されたのは有原。高卒ルーキー、プロ初先発の彼は、なんと8回終了までノーヒットノーラン。スターズが1点リードして迎えた9回、このわずか1回の20球について、350頁をかけて描かれるのですから、なんと面白い。
20球を1球ずつ、20人から見た1球毎に描いています。有原本人、それを受ける捕手、守る野手、有原に対する打者。両チーム監督に高校時代の監督、現オーナー、新オーナー、球場のビールの売り子、新聞記者と、さまざまな立場の者にとっての1球。上記の『プロ野球解説者を解説する』を読んだあとだから、これは誰タイプかななどと解説にも興味を惹かれます。
球は速いけれど、制球力皆無の有原は、四球か三振か。投球のリズムが悪くて、守備についている野手は辟易。あり得ないほど汚いスコアブックで、もしも達成されれば史上最低のノーヒットノーラン劇になるだろう、そんな試合。
「野球は、人の心や生き様を変えることもあるんだぜ。お前の今の一球で、人生が変わったと感じた人間は、俺以外にも何人もいるはずだ」。この台詞に、伊坂幸太郎の『あるキング』を思い出しました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
結果は何と無く分かるのになかなか展開しない。が、20球の間の様々な人間模様から、一球一球に多くの人達の物語があることを感じさせてくれた。スポーツは深い。
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堂場瞬一の野球観は最後の3行に凝縮されているんだと思う。
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ノーコン高卒ルーキー、初先発ノーヒットノーランを賭けて9回のマウンドへ。9回表の20球を巡る群像劇、ってことになるのかな。投手本人、キャッチャー、守ってる野手、打者、敵味方の監督、味方のピッチングコーチ、身売りを発表したチームの新旧オーナー、次期監督のオファーを受けている解説者、次期コーチ候補のOB、スポーツ紙記者、高校時代の監督、ビールの売り子、トレーナー、近所の中華料理店の大将。
さすが堂場瞬一、読ませるねぇ。独立した章にはなってないけど、相手チームのスコアラー(というか、マネーボールのポール・デポデスタ役)とかの物語も読みたい。
あと、20球ってのはやはり「江夏の21球」へのオマージュなのかな。 -
(架空の)プロ野球チームの新人投手が、初登板初先発のマウンドであと少しでノーヒットノーランを達成する最終イニングから物語は始まります。タイトルの「20」は、つまりこの新人投手が最終イニングで投げる「20」球のこと。そう、347ページ(文庫)はこの20球のドラマが描かれています。まるで、週刊漫画雑誌の野球マンガでわずか1球をドラマチックに連載1回分まるまる描くような。
新人投手をはじめとして、この物語にはチームメイト、監督、コーチ、OB、球団オーナー、球場の売り子さんなど、さまざまな人物が登場します。しかしながら、新人投手の初登板での大偉業をだれもが応援しているわけではなく、自身の現状や将来を案ずる心情を絡ませつつ、それぞれの人物の視点からこの20球のドラマが描かれています。
スポーツを題材にした小説は初めて読んだかもしれません。とても新鮮でした。 -
堂場瞬一の野球ものはいままではずれがなかったが、文句なしにこれが最高に面白かった。たった一イニングで300ページというのも凄いのだが、全て各章の異なる登場人部の独白という形で書かれているのだ。こんな形式の小説が初めてだ。強いて近いものをあげると、「桐島部活やめるってよ」だろうか。しかしあれは独白ではなかったと思う。
心理描写だけの文章は非常に読みにくいものだが、本作にはテンポがある。内容は結構他愛のない悩みなのだけれど、妙にリアリティがあって、実話ではないかと錯覚すtるぐらいだ。さすがに警察もので鍛えられた味なのだろうと思う。 -
野球の試合の1イニング、ピッチャーが20球を投げる間だけに起こるプレーを様々な登場人物の視点から物語る小説。新人投手がプロ初先発の試合でノーヒットノーランを達成しかけている9回のマウンドを舞台にした小説です。1試合、1シーズンなどの長い時間ではなく、実時間では30分にも満たない出来事を、これほど多様な切り口で描くことができるとは。サッカー、バスケットボールなどと違い、野球が1球ごとにプレーが止まり、選手、観客、みんなが考える時間がある故に成り立つ小説か。野球の好きな人ならどの視点からも「こういうのあるやろうなぁ」と思いながら読めると思います。山際淳司氏の「江夏の21球」を読み返したくなりました。
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堂場瞬一先生の野球小説を久々に堪能。
過去の野球小説とのリンクもあり、少々ニヤニヤ…
名門球団 スターズ の高卒ルーキーがシーズン最終戦の『消化試合』でノーヒットノーランを達成しそうになる最終回での20球を本人を含む各関係者の視点から描いた作品。
おそらく時間にすれば20分程度のお話をここまで濃密に描写したスポーツ小説は他にはなかったのではないでしょうか⁉
読後は、やはり 野球は良いなァ と思わせてくれる作品です。
有原、分かるか? 野球は人の心や生き様を変えることもあるんだぜ。
お前の今の一球で、人生が変わったと感じた人間は、俺以外にも何人もいるはずだ。 -
様々な立場から、最後の20球を描いた小説。語り手のチョイスが面白い。
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低迷を理由に、売却が決定した名目球団。最後の試合で、選手たちは…?