バスを待つ男 (実業之日本社文庫)

著者 :
  • 実業之日本社
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本棚登録 : 75
感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408555881

作品紹介・あらすじ

赤羽、池袋、北品川、青梅など、元刑事がバスに乗りながら、謎を追う。解決するのは麗しき妻。大人のための傑作ミステリー!

感想・レビュー・書評

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  • 土地勘があればもっと楽しめたのかな?

  • 西村健『バスを待つ男』実業之日本社文庫。

    トラベルミステリーと安楽椅子探偵の融合という珍しい仕掛の連作短編である。主人公は70歳の元刑事とその妻で、最後まで2人の名前は明かされない。様々なミステリーが描かれるが謎解きは明解で、この殺伐とした時代に思わずほっこりする短編ばかりが並び、非常に面白い。是非とも読むべき作品である。

    定年を迎え、特に趣味も無く日常を過ごしていた70歳になる元刑事が見付けたのはシルバーパスを利用しての都バスの小さな旅。旅先で出会う様々な日常のミステリー。しかし、謎を解くのは、いつも元刑事の妻というのだから面白い。

    『第一章 バスを待つ男』。元刑事が不審に感じたバス停に佇む男性の目的は……

    『第二章 母子の狐』。王子の稲荷に佇むお狐様に掛けられた白い前掛けの謎……

    『第三章 うそと裏切り』。元刑事が出会った家電量販店を徘徊する中学生が抱える悩みとは……

    『第四章 迷宮霊園』。元刑事がバスの中で偶然出会った、かつての同僚。かつての同僚の言葉のままに多摩霊園の目当ての墓を探すが……

    『第五章 居残りサベージ』。品川に居残り、ひたすらみたらし団子を食べ歩く、アメリカの大学生クリス・サベージの謎……

    『第六章 鬼のいる街』。既に解決した連続殺人鬼事件。犯人は何故、目撃者の女性に手を掛けず、踵を返したのか……

    『第七章 花違い』。女子高生の家に毎朝届けられる1輪の花の謎は……

    『第八章 長い旅』。元刑事が現役の頃、迷宮入りした三鷹駅近くで起きた殺人事件……

    『終章』。最後に泣いた。泣かされた。

    本体価格700円
    ★★★★★

  • いわゆる連作物。

    ちょっとした謎を解き明かす安楽椅子ものだが、あまりの妻の切れ物ぶりが凄すぎます。

    舞台設定は土地勘のある所なので楽しめますが、謎解きそのものは安易すぎてどうなのかなと思うところもあります。

    最後の終章で最初に提示されていたモヤモヤした謎が、綺麗に解き明かされるます。思わず涙ぐんでしまいました。

  • 路線バス✖️ミステリーということで、西村京太郎さんのようなバスを使ったトリックを想像していたのですが、この作品では主人公が旅先で見たちょっと疑問に思ったことを解決していくミステリーです。

    主人公は元捜査一課の刑事。定年退職し、余暇を楽しもうと妻の助言で、東京都シルバーパスを使って、色んなところを周ります。
    ちなみに東京都シルバーパスは、東京都在住で70歳以上の方が使えるパス。東京都内のバスや都電、都営地下鉄が乗り放題です。

    東京のコアなところや現地での歴史などを紹介していて、ちょっとした東京観光を味わうことができます。
    旅先では、ふと疑問に思った人・場面を目撃し、元刑事の能力で解決!かと思いきや、事件を解くのは、その奥さん。主人公の話を元に解決していくという安楽椅子探偵のような存在で、一風変わった作品になっています。
    この奥さんといったら、まぁ上品で、格好・言葉遣いが文章から清楚な雰囲気を醸し出していて、芸能人に例えてみると市毛良枝さんのような感じがしました。
    その推理ぶりが秀逸で面白かったです。
    内容としては殺人のような重めのテーマよりも、軽めなほんわかミステリーが多く、気軽に読めました。ちょっと物足りない感じがありましたが、「鬼のいる街」や「長い旅」の章では、本格的なミステリーが含まれていたので、色々楽しめました。

    東京限定でしたが、自分の住んでいるところで、普段、車で通るところもバスを使ってみると、新たな発見があるかもしれません。新たな楽しみ方を味わうのも良いなと思いました。

  • そこが大事なんだとは思うんだけど、日本地図覚えきれないナビなんて絶対無理なわたしにはバス路線の説明が。
    ちょっと高速で飛ばし読みしてしまって申し訳ない。
    奥様が素敵で賢くて奥ゆかしくて最高だということは間違いない。

  • 記録

  • 某雑誌にて新種のトラベルミステリーとして紹介されていた作品で、定年退職した元刑事が都営バスで都内を旅し、そこで遭遇した日常の謎を自分の妻に解決させるという安楽椅子探偵もの。土地勘のある場所が数多く登場するので、都内在住者としては結構楽しめる。名所巡りと謎解きがミスマッチだったり、キャラクターの人物造形が前時代的で乗り切れない部分も多々あるが、それでも「居残りサベージ」や「鬼のいる街」なんかは実に良い塩梅ではないだろうか。外勤の頃、バスを利用する機会が多かったので、バス移動の旅情感を久方ぶりに味わいたいな。

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著者プロフィール

1965年、福岡県生まれ。東京大学工学部卒業。労働省(現厚生労働省)勤務後、フリーライターに転身。96年、『ビンゴ BINGO』で小説家デビュー。『劫火』『残火』で2005年と10年に日本冒険小説協会大賞(第24回、29回)、『地の底のヤマ』で11年に第33回吉川英治文学新人賞と第30回日本冒険小説協会大賞を受賞。14年、筑豊ヤクザ抗争を描いた『ヤマの疾風』で第16回大藪春彦賞受賞。他の著書に『光陰の刃』『最果ての街』『目撃』『激震』などがある。本作は『バスを待つ男』に続くシリーズ第二弾。最新刊は、シリーズ第三弾の単行本『バスに集う人々』。

「2023年 『バスへ誘う男』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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