動物倫理の最前線: 批判的動物研究とは何か

著者 :
  • 人文書院
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784409031155

作品紹介・あらすじ

動物をめぐる思想はここまで到達した

いまや動物にとどまらず、あらゆる存在の解放をめざす包括的正義の理論へと至った批判的動物研究を始めて本格的に紹介。理論水準を大幅に引き上げるとともに、実践へと誘い、シンガー『動物の解放』以来の衝撃をもたらす力作。

19世紀にはじまり、ピーター・シンガー『動物の解放』をもって本格化した動物擁護、動物解放の理論はその後、多様な社会運動や学問との協力・批判を経て、種を越えたあらゆる抑圧と差別に反対し包括的正義の実現を目指す、強靭な理論=実践へと鍛え上げられた。批判的動物研究と呼ばれ、世界的な隆盛をみせるその潮流は、いまやどんな思想も理論も無視できないものとなっている。本書では批判的動物研究を主に哲学、社会学、ポスト人間主義、フェミニズムの観点から整理、検証し、諸正義を結ぶ領域横断的な解放理論として描き出す。動物をめぐる数々の翻訳を手掛けてきた著者が、渾身の力で放つ初の著書。

◎目次
謝辞

序論
 批判的動物研究
 本書の構成

第一章 動物たちの現状
 食用利用
  肉用牛/乳用牛/豚/乳用牛/産卵鶏/魚介類
 動物実験
  行動研究/医学研究/製品試験 
 動物園と水族館 
 ペット産業

第二章 道徳哲学
 功利主義革命 
  理論の重要性/功利主義アプローチの問題
 動物の権利 
  内在的価値と生の主体/尊重原則から権利の導出まで/
  権利論の実践的帰結/救命ボートの事例
 新福祉主義
  新福祉主義の実害/新福祉主義の元凶
 廃絶主義アプローチ
  単一争点の活動/平和的な脱搾取の啓蒙活動

第三章 社会学
 抑圧理論
 資本主義
  商品化/物神崇拝
 疎外
 構造的暴力
  労働者の逆境/環境破壊
 動物産業複合体
 エコテロリズム

第四章 ポスト人間主義
 人間学、人間主義、人間中心主義 
  人間の名、動物の問い/生贄構造
 生政治
  生政治と生贄構造/動物生政治
 ポスト人間主義の倫理
  ポスト人間的状況/差異と応答/未分化と変成
 資本・労働・抵抗
  動物労働論/接触地帯/紛争地帯

第五章 フェミニズム
 父権制と自然
  女性・動物・自然/二元論の形成
 父権的抑圧
  残酷への意志/暴力の正当化/生殖支配/性と肉食
 交差性 
  批判的動物研究における交差性/交差性分析の意義
 寄り添いの倫理 
  倫理と感情/動物への寄り添い/エコフェミニズムの倫理

終章 総合的解放
 総合的解放の系譜
 総合的解放の障壁
  特権・単一争点・抑圧オリンピック/社会正義の動物軽視/
  動物擁護の諸問題
 総合的解放の展望
  抑圧ネットワークの解明/共通軸の確立

人名索引

感想・レビュー・書評

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  • 動物倫理系の本の翻訳で著名な井上太一さんの初の単著。いつも翻訳本のあとがきで井上さんの視点には学びがあったが、本書も学びしかない本。特に社会学と動物倫理が交じり合う視点は重要だと思いつつ触れたことがなかったので勉強になった。また自分が本書を必ず読もうと思ったきっかけとなったポスト人間中心主義の章だけでも非常に有意義な学びがある。
    個人的にも人間の肉食主義や飼いならし(本書でいう飼い貶し:domesecration)にはほとほとに呆れ、失望を禁じ得ないが井上さんは本書全体を通じて、肉食の構造的な暴力を指摘し、活動家もやりがちな個人攻撃等の矮小化には警鐘を鳴らしている。
    最後の章でも総合的な解放と原始的な愛について語っている。改めて多くの視座が与えられる本だと強く感じた。

  • 種差別、フェミニズム、父権性。
    すべての抑圧は繋がっていることを学べる。
    が、ところどころ難しい文脈や言い回し、堅苦しい言葉がたくさん出てくるので、定期的に読むことが大切なのでは。

  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/

  • 紀伊国屋じんぶん大賞2023
    摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB50313634

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    『動物をめぐる思想はここまで到達した
    いまや動物にとどまらず、あらゆる存在の解放をめざす包括的正義の理論へと至った批判的動物研究を始めて本格的に紹介。理論水準を大幅に引き上げるとともに、実践へと誘い、シンガー『動物の解放』以来の衝撃をもたらす力作。
    19世紀にはじまり、ピーター・シンガー『動物の解放』をもって本格化した動物擁護、動物解放の理論はその後、多様な社会運動や学問との協力・批判を経て、種を越えたあらゆる抑圧と差別に反対し包括的正義の実現を目指す、強靭な理論=実践へと鍛え上げられた。批判的動物研究と呼ばれ、世界的な隆盛をみせるその潮流は、いまやどんな思想も理論も無視できないものとなっている。本書では批判的動物研究を主に哲学、社会学、ポスト人間主義、フェミニズムの観点から整理、検証し、諸正義を結ぶ領域横断的な解放理論として描き出す。動物をめぐる数々の翻訳を手掛けてきた著者が、渾身の力で放つ初の著書。』(「‎人文書院」サイトより)

    『動物倫理の最前線: 批判的動物研究とは何か』
    著者:井上 太一
    出版社 ‏: ‎人文書院
    単行本 ‏: ‎360ページ
    発売日 ‏: ‎2022/5/26

  • 序論
     批判的動物研究
     本書の構成

    第一章 動物たちの現状
     食用利用
      肉用牛/乳用牛/豚/肉用鶏/産卵鶏/魚介類
     動物実験
      行動研究/医学研究/製品試験 
     動物園と水族館 
     ペット産業

    第二章 道徳哲学
     功利主義革命 
      理論の重要性/功利主義アプローチの問題
     動物の権利 
      内在的価値と生の主体/尊重原則から権利の導出まで/
      権利論の実践的帰結/救命ボートの事例
     新福祉主義
      新福祉主義の実害/新福祉主義の元凶
     廃絶主義アプローチ
      単一争点の活動/平和的な脱搾取の啓蒙活動

    第三章 社会学
     抑圧理論
     資本主義
      商品化/物神崇拝
     疎外
     構造的暴力
      労働者の逆境/環境破壊
     動物産業複合体
     エコテロリズム

    第四章 ポスト人間主義
     人間学、人間主義、人間中心主義 
      人間の名、動物の問い/生贄構造
     生政治
      生政治と生贄構造/動物生政治
     ポスト人間主義の倫理
      ポスト人間的状況/差異と応答/未分化と変成
     資本・労働・抵抗
      動物労働論/接触地帯/紛争地帯

    第五章 フェミニズム
     父権制と自然
      女性・動物・自然/二元論の形成
     父権的抑圧
      残酷への意志/暴力の正当化/生殖支配/性と肉食
     交差性 
      批判的動物研究における交差性/交差性分析の意義
     寄り添いの倫理 
      倫理と感情/動物への寄り添い/エコフェミニズムの倫理

    終章 総合的解放
     総合的解放の系譜
     総合的解放の障壁
      特権・単一争点・抑圧オリンピック/社会正義の動物軽視/
      動物擁護の諸問題
     総合的解放の展望
      抑圧ネットワークの解明/共通軸の確立

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著者プロフィール

1984年生まれ。翻訳家・執筆家。人間中心主義を超えた倫理の発展ならびにビーガニズムの普及をめざし、関連書籍の翻訳と執筆に携わる。趣味は料理研究。得意料理はペペロンチーノ、麻婆豆腐、中東風トマトシチューなど(もちろんすべて動物成分なし)。著書に『動物倫理の最前線』(人文書院、2022年)、訳書にシェリー・F・コーブ『菜食への疑問に答える13章』(新評論、2017年)、マイケル・A・スラッシャー『動物実験の闇』(合同出版、2017年)、エリーズ・ドゥソルニエ『牛乳をめぐる10の神話』(緑風出版、2020年)、ロアンヌ・ファン・フォーシュト『さよなら肉食』(亜紀書房、2023年)などがある。

「2023年 『今日からはじめるビーガン生活』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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