食の歴史人類学: 比較文化論の地平

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  • 人文書院
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  • Amazon.co.jp ・本 (363ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784409530153

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  • ●構成:
    Ⅰ 日本人と異国料理
    Ⅱ 南欧人と日本料理
    Ⅲ 雑食動物ホモ・サピエンス
    Ⅳ 食物タブーと文化理論
    --
     食事を摂ることは、人間にとって絶対欠かすことの出来ない行為である。しかし、その内容や方法など、食を文化として捉えると、民族ごとの差異が、さらには同じ民族でも地域的な差異が見られる。それは決して小さなものではなく、そのことが異文化との接触の際の軋轢となる場合も少なくない。
     本書は人間の食文化について、主として15世紀~18世紀の日本と西洋の比較文化論として、また時にはいわゆる先住民族も含めた三者間の比較によって考察する。
     比較文化論として一般的な手法である二項対立によって、西洋/日本においては手食/非手食(西洋では16世紀においても手食であった)の作法や暴食/粗食の摂取量及び種類、獣食/菜食といった動物性食物と植物性食物の摂取比率の違いなど、様々な切り口で日洋の文化的差異を際立たせる。日本は従来、基本的に菜食主義的な食卓の時期が多いとされてきたが、実際には獣肉を全く食べないわけではなく、実際に戦国期や江戸期においても少なからず獣食がなされていた点を指摘している。
     また、史実の提示による考察だけでなく、リーチの文化記号論やダグラスの文化象徴論、レヴィ=ストロースの「野生の思考」などの文化理論を適用して、食文化におけるタブーに関して理論的な分析も行っている。結論としては、著者も認めているように、食文化の分析には必ずしも西洋的な二項対立だけでは収まらない、その中間領域をも含めたアナログ的・連続的な理論的枠組みが必要である。
     「専門の学術書ではない」と著者自身が記しているように(p.352)、比較的読みやすい内容であるが、Ⅳ章の理論的な分析に関しては、この分野に多少慣れていたほうが理解しやすい。
    --
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著者プロフィール

1929年東京生まれ。京都大学仏文学科卒業。同大学院(旧制)修了後、パリ大学高等研究院に留学。元・大手前大学教授、甲南大学名誉教授。著書:『食具』、『もののけ Ⅰ・Ⅱ』(ものと人間の文化史)、『ロマンの誕生』、『現代フランスの文学と思想』、『経済人類学への招待』、『タブーの謎を解く』。訳書:マンデル『カール・マルクス』、マレ『労働者権力』、サーリンズ『人類学と文化記号論』『人類学と文化記号論』、ゴドリエ『人類学の地平と針路』『観念と物質』『贈与の謎』、プィヨン編『経済人類学の現在』、ロダンソン『イスラームと資本主義』、トマス『人間と自然界』、アタリ『所有の歴史』、テスタール『新不平等起源論』ほか。2006年死去。

「2014年 『贈与の謎 〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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