これならわかる「カラマーゾフの兄弟」 (青春新書インテリジェンス PI 675)
- 青春出版社 (2023年8月2日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784413046756
作品紹介・あらすじ
世界文学史上の傑作として読み継がれている『カラマーゾフの兄弟』。この作品で、著者のドストエフスキーは何を伝えたかったのか? 作中ではいくつもの視点が絡み合い、登場人物も多いため、多様な解釈が可能です。また、本当に深く理解するには、キリスト教文化やロシアについての基礎知識が必要になります。キリスト教者でロシアにも精通している佐藤優氏が、難関と言われる「大審問官」、「ロシアの修道僧」を中心に解説していきます。読むのをためらっていた人、読んだものの理解が不十分だと感じていた人に、その魅力を余すところなく伝える一冊です。
感想・レビュー・書評
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ロシア及びキリスト教知識について
おそらく日本一と思われる佐藤優さんによる講義。
「これならわかる」と言うにはちょっと厳しいですが
佐藤さんのお話は面白かったので、
いくつかメモします。
〈複数の解釈ができることは、優れた文学作品の特徴だと言えます。テキストというものは、テキストができた瞬間に著者の手を離れる。読者にはさまざまな解釈をする権利があって、誤読する権利もある。それに対して、著者は何も言えないんです。
ドストエフスキーの作品はこうした特徴がことのほか顕著で、それをロシアのバフチンという文芸批評家は、「ポリフォニー」があると表現しました〉
〈ドストエフスキーの小説は、良い人は本当に良い人なのか、悪い人は本当に悪い人なのかを幾度も問い返し、しょっちゅうどんでん返しが起こるところに真骨頂があります〉
〈ドストエフスキーは自分の立場をあいまいに書いています。このよくわからないところを曖昧なまま書くのがドストエフスキーの腕で、これによっていくつもの声が聞こえるようになっています〉
〈最終的にキリスト教は反知性主義で、仏教のほうがよほど知性を大切にします。そういう点に注意してドストエフスキー作品を読んでいくと、さらに読みが深まります〉
〈これだけ多様な話をごちゃごちゃに入れて、破綻しない形でつなげられるドストエフスキーはやはりすぐれた長編作家です。要素がこんなにあると、普通は収拾がつかなくなりそうなものですが〉
〈人間の意志なんてあいまいなもので、いったん決めたことも時間の経過とともに両極に揺れるものです。これも人間の誇るべき特性でしょう〉
〈後発国であるロシアから見たとき、ヨーロッパを理想的な未来だとは思えなかったのでしょう。こういうところからヨーロッパに対する批判の精神が生まれ、それが科学技術批判にもつながります。ただ、批判一辺倒ではない面もあり、ドストエフスキーの中ではアンビバレントな問題だったのです〉詳細をみるコメント0件をすべて表示