これならわかる「カラマーゾフの兄弟」 (青春新書インテリジェンス PI 675)

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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784413046756

作品紹介・あらすじ

世界文学史上の傑作として読み継がれている『カラマーゾフの兄弟』。この作品で、著者のドストエフスキーは何を伝えたかったのか? 作中ではいくつもの視点が絡み合い、登場人物も多いため、多様な解釈が可能です。また、本当に深く理解するには、キリスト教文化やロシアについての基礎知識が必要になります。キリスト教者でロシアにも精通している佐藤優氏が、難関と言われる「大審問官」、「ロシアの修道僧」を中心に解説していきます。読むのをためらっていた人、読んだものの理解が不十分だと感じていた人に、その魅力を余すところなく伝える一冊です。

感想・レビュー・書評

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  • ロシア及びキリスト教知識について
    おそらく日本一と思われる佐藤優さんによる講義。

    「これならわかる」と言うにはちょっと厳しいですが
    佐藤さんのお話は面白かったので、
    いくつかメモします。

    〈複数の解釈ができることは、優れた文学作品の特徴だと言えます。テキストというものは、テキストができた瞬間に著者の手を離れる。読者にはさまざまな解釈をする権利があって、誤読する権利もある。それに対して、著者は何も言えないんです。
    ドストエフスキーの作品はこうした特徴がことのほか顕著で、それをロシアのバフチンという文芸批評家は、「ポリフォニー」があると表現しました〉

    〈ドストエフスキーの小説は、良い人は本当に良い人なのか、悪い人は本当に悪い人なのかを幾度も問い返し、しょっちゅうどんでん返しが起こるところに真骨頂があります〉

    〈ドストエフスキーは自分の立場をあいまいに書いています。このよくわからないところを曖昧なまま書くのがドストエフスキーの腕で、これによっていくつもの声が聞こえるようになっています〉

    〈最終的にキリスト教は反知性主義で、仏教のほうがよほど知性を大切にします。そういう点に注意してドストエフスキー作品を読んでいくと、さらに読みが深まります〉

    〈これだけ多様な話をごちゃごちゃに入れて、破綻しない形でつなげられるドストエフスキーはやはりすぐれた長編作家です。要素がこんなにあると、普通は収拾がつかなくなりそうなものですが〉

    〈人間の意志なんてあいまいなもので、いったん決めたことも時間の経過とともに両極に揺れるものです。これも人間の誇るべき特性でしょう〉

    〈後発国であるロシアから見たとき、ヨーロッパを理想的な未来だとは思えなかったのでしょう。こういうところからヨーロッパに対する批判の精神が生まれ、それが科学技術批判にもつながります。ただ、批判一辺倒ではない面もあり、ドストエフスキーの中ではアンビバレントな問題だったのです〉

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著者プロフィール

1960年1月18日、東京都生まれ。1985年同志社大学大学院神学研究科修了 (神学修士)。1985年に外務省入省。英国、ロシアなどに勤務。2002年5月に鈴木宗男事件に連座し、2009年6月に執行猶予付き有罪確定。2013年6月に執行猶予期間を満了し、刑の言い渡しが効力を失った。『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて―』(新潮社)、『自壊する帝国』(新潮社)、『交渉術』(文藝春秋)などの作品がある。

「2023年 『三人の女 二〇世紀の春 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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