水曜日のアニメが待ち遠しい:フランス人から見た日本サブカルチャーの魅力を解き明かす
- 誠文堂新光社 (2015年8月3日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (233ページ)
- / ISBN・EAN: 9784416315088
感想・レビュー・書評
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ああ~、どこの国でもオタク世代差における隔たりはあるものなのだなあ…一般化による特別感の薄れと、安易さへの危惧ってやつね…と思ってしまったのはやはり私が共感大好き日本人だからなのかもしれない。
日本アニメの受容方法の変化は、確かに最初から「外」のものとして受け取るよりはそりゃあ、そんなこと意識せず共感できた方が自分の体験として落とし込めるだろうなあ、と思うけども、インターネットに色んなものが溢れかえっているこのご時世では、たとえ子どもであっても「オリジナル」の情報を知らずにいるのは最早難しいことなのではないかなあ…と思ったりもした。
まあ、わからんけども。
しかしそれはそれとして、確かに「クールジャパン」はちょっと、と思う。思った。もう懐かしいワードのような気もする。 -
フランス人から見た日本アニメ論ということで興味を持った。著者は「フランス人オタク第一世代」という日本史研究家であり、にして、フランス語版『北斗の拳』などマンガの翻訳も手がける人物。
「とにかく安かったから」という理由で、子ども向けプログラムが欲しかったフランスのテレビ局に買われた日本製アニメ。『UFOロボグレンダイザー』に子どもたちは夢中になった。悪役にも人間性があったり、アウトローが主人公であったりするストーリー性の深みは、アメリカ製子ども向けアニメにはないものだった。しかし、暴力的であるとの批判を受け、バッシングを受けるようになる。テレビアニメが下火になるとこんどはゲームやマンガといったカルチャーに人は流れ、しだいにファンが組織化され、ジャパンエキスポが台頭するといった流れが解説される。
おおまかな流れの説明のなかに、彼自身の経験や、フランス人と日本人との考え方違いなどが挟み込まれていく形で、たいへん読みやすい。著者は「日本マンガの未来は明るいとは限らない」として、『NARUTO』終了後にヒット作がなく、市場は停滞もしくは縮小傾向にあると指摘している。また「クールジャパン」に対しても〈「二歩の作品」であることをひとつのブランドのように押し出したり、それを自ら「クール」と言ってしまうようなその政府のやり方は、過去の「偶然」に基づく成功理恵を無批判に再生産しようとしているようにも見える〉と否定的だ。
また、日本特有の文化――たとえば部活動や先輩後輩といった学校文化をどう翻訳するか、といった問題への苦慮なども書かれていたりして、興味深い。