仏教的心理学と西洋的心理学: 心理学の自己明確化に向けて

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784422117775

作品紹介・あらすじ

 本書は、著者W・ギーゲリッヒの「仏教的心理学と西洋的心理学」という論考と、ユング派分家ロブ・ヘンダーソンがギーゲリッヒに対して行ったインタビュー記録(「問いそれ自体を愛する」)の二つから成っている。

 「仏教的心理学と西洋的心理学」は、二つの心理学を単に比較検討しているものでも、また、他方を比較対象としてもう一方の心理学を論じているものでもない。二つの異なる心の動きが衝突することを通じて、そこから新たな魂の学としての心理学が立ち上がってくることを目指して書かれたものである。

 著者は、本書の「日本語版への序文」の中で、真の自己認識というものは「相手」(=他者)との徹底的な対決なしには不可能であり、知性や心理学の知識だけでは不十分であると述べている。なぜ、「自己」を知るために「他者」が必要なのだろうか? なぜ心的現実は、個人という観点からだけでは満足に理解できないのだろうか?

 「自分は何であり、何ではないのか」という感覚を研ぎ澄ますためには、互いの存在を深く認め合いながらも、他者と徹底的に対決することが必要であり、その関係性の中でしか明確化は得られないと著者は考える。ユングは、分析家と患者の関係や、治療という仕事は、本質的に弁証法的プロセスであると考えていた。つまり治療というのは、相談室にいる二人の心の対話や相互作用そのものにあり、二つの異なる心が出会い、真摯に向き合い、互いの存在によって自身のありようを深く揺り動かされるとき、初めて両者の間に魂と呼ばれるものが感じられ、そこに「治療」と呼ばれるものが成立するのだという。本論が、単に二つの心理学や文化論の比較検討ではないことの所以でもあろう。

 本書の後半、「問いそれ自体を愛する」では、ユングとの出会いからユング派分析家になった経緯、彼の臨床実践、また「無意識」「魂」「影」について、さらには「神について?」「インターネット」「ユング派の分析の未来」など現代の心の本質について著者がどう考えているのかが率直な言葉で語られて興味深い。著作が難解で知られるギーゲリッヒ理解のための貴重な資料でもある。

感想・レビュー・書評

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  • 『仏教的心理学と西洋的心理学』
      序論
      地理学の誘惑
      非同時的なものの同時性の原理、あるいは歴史的差異
      否定や亀裂の入った連続と、途切れることのない連続との対立
      決定的否定 対 一括的否定
       1.仏教における否定、つまり現象世界からの離脱
       2.「美学的転回」、あるいは美的感情という論理的否定の緩衝材
       3.ヨーロッパにおける魂の自傷
       4.補遺:意識水準を下降させることと、固定した自我同一性を溶解すること
      魂の現象と、研究分野としての心理学との、共約不可能性
      豊かな所有としての無〔空〕 対 貧困としての無〔空〕
      自己と「確信」との未壊の結合 対 この融合の分離
      実際に存在する「〔目的格の〕私」における具現化
      鏡の迷路
      弁証法
      *
      付録
       「心のレンマ科学」?

    『問いそれ自体を愛する』
      ユングとの出会い
      無意識
      夢はどこから来るのか
      魂
      未知のユング?
      影
      テクノロジー
      神について?
      今日の世界における魂
      ユング派の分析
      夢と共に作業する
      ユング派の分析の未来
      インターネット
      癒し
      ギーゲリッヒvsユング

     〈資料〉
       ハーバート・リード宛書簡

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著者プロフィール

(Wolfgang Giëgerich)
一九四二年生まれ。ドイツ連邦共和国ベルリン市在住。米国ニュージャージー州立大学ドイツ文学の教授職を辞して心理学へ転じ、一九七六年よりユング派分析家。二十世紀の東西思想の結節点となったエラノス会議にてくり返し演者を務めるところから始まり、現在までユング思想を牽引し続けている。既刊邦訳に『魂と歴史性』『神話と意識』(いずれも日本評論社)、『魂の論理的生命 心理学の厳密な概念に向けて』『ユングの神経症概念』『仏教的心理学と西洋的心理学』(いずれも創元社)、「抑圧された忘却 アウシュヴィッツといわゆる〈記憶の文化〉」(『ホロコーストから届く声』所収、左右社)などがある。また夢分析論の決定版とも言える『夢と共に作業する』(日本評論社)が近刊予定。

「2023年 『家族のおわり、心のはじまり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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