本の歴史 (知の再発見双書 80)

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  • Amazon.co.jp ・本 (182ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784422211404

感想・レビュー・書評

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  • 「イギリスでは本を読むのに図書館を利用するが、フランス人はかならず趣味に合った革装の美本を買いこむ。イギリスでは、本といえば一週間か二週間楽しみ合うためのゲストでしかないが、フランスでは生涯の友となる。」
        (イギリス人書誌学者アンドル・ラングの言葉)

    ようやく入手した本だというのに、あまりの面白さにあっという間に読んでしまった。
    豊富なカラー図版で語る、本という媒体の歴史。
    西欧の、それもグーテンベルグ以前の手書き本時代からのスタートになっている。
    主にフランスが舞台になっているのは、最初に挙げた言葉のように、書物との付き合い方が非常に情熱的な国であるかららしい。
    大変なビブリオマニアであったというナポレオンの話はあまりに有名だし、工芸品・美術品としての書物にこだわりを見せたのもこの国ならではのこと。
    本の装丁が絶頂期を迎えた18世紀の、フランス王室の本が見開きで掲載されているページもある。紋章入りのモザイク装丁は、驚くほど豪華で美しい。

    美しいと言えば羊皮紙に書かれた文字もそうだ。
    だが一冊の本を作るには約15頭分もの羊の皮が必要で、かかる費用は決してばかにならない。
    節約のために文章を削ぎ落したり文字をぎっしりと書き込み、注釈は余白部分に記したという。
    荒俣さんの(蘊蓄という名の)後書きによれば、グーテンベルグによって「文字を上手に写す労働から解放」され、「記憶する労働からも解放」されたとするのは、非常に納得がいく説だ。

    そのグーテンベルグについてはほとんど資料がなく、確かなことは分からないという。
    しかしこの新技術がなかったら宗教改革など起こらなかっただろう。
    絶対王政時代には本の世界に細かな規制が入ったが、今とは違いネットもTVもない頃の話だ。
    言葉が人に与える影響を知っていた為政者が、権力でコントロールしようとしたのは分からないでもない。その危機を乗り越え、やがて啓蒙思想の時代へと移行していく。

    日がな一日書写に勤しんだ写学生たちはじめ、先人たちの努力には感謝しかない。
    こんなにも昔からひとは文字を書き、伝え、残そうとしてきたなんてね。
    残念なことに本書はフランス革命あたりで終わり、その後の本の歴史には触れていない。
    それでも読んでいて非常に楽しいのは、心弾むトピックがあちこちに見つかるからだ。

    写学生が本の余白に愚痴を描いたり、書き終わった後に喜びの詩を書いたり、顧客が趣味に応じて製本・装丁を施していた16世紀の頃の話や、行商人が瓦版を売っていた時代にノストラダムスの予言書がよく売れたとか、18世紀にサロンで生まれた読書会の様子などなど。
    幼少期の読書に否定的なルソーが、唯一推奨したのが「ロビンソン・クルーソー」だったとか。
    初期の印刷業の活気にあふれた様子などは、見ていてこちらの胸も熱くなってくる。
    装幀の進化をこの目で見られるのもとても嬉しい。

    小さめの版で手に取りやすく、読んでいてとにかく楽しい。購入して手元に置きたい本だ。
    すべての本好きさんに、心からお薦め。

  • 本は著者の意思、思想、空想が著者自身が滅んだ後も残る再生機であると同時に外見や挿絵などの芸術面も楽しめる道具です。
    このように色々な可能性を秘めた本は元々量産できないもので、大変高価でした。
    それが画期的な印刷法により徐々に読書層が拡大していきます。
    装丁はシンプルなものにはなりましたが、庶民でも本を楽しめる時代になっていきました。
    ヨーロッパを中心に綴られる本の歴史。
    図版も多く盛り込まれ、視覚的にも楽しめる一冊です。
    しかし…欲さえあれば本をいくらでも読める今の時代は、大変恵まれているんですねぇ。

  • 図版が多く、説明も端的で、さくさく読める。

  • コメントではなくて、授業用情報。
    この授業は聖書の翻訳を軸としているが、聖書の翻訳を巡る歴史は本の歴史とも大きく関わっている。本の歴史の概説書は様々あるが、これはフランス系の入門書。よみやすく、ビジュアルに訴え手に入れやすいので一度見てみるのをおススメする。

  • NDC(9版) 020.23 : 図書.書誌学

  • 本の歴史は、文字の、芸術の、思考の、権利の、印刷技術の歴史でもあった。人はいつから本を作り、娯楽として本を楽しむようになったのか。挿し絵というか、画像多めで順を追いつつ説明してくれる。
    画像と文章と画像の説明が入り交じり視覚的にはとても読みにくいが慣れればそうでもなく、画像たちに感動しながら読み進められる。
    愛書家は一読の価値ありじゃないかなと。

    本の扱いについては、どちらかといえば自分はフランス式だなぁと。

  • そのままの内容。本と呼べるものがどういう風だったのか教えてくれる。どこでどういう風に作られていたのか流通していたのかなど。図録も沢山載っていてとても面白い本だった。

  • テーマ史

  • とてつもなく素晴らしい本の世界入門。
    活版印刷以前について触れられているのが良い。

  • 写本時代の解説が特にお気に入り

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