- Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784422701165
作品紹介・あらすじ
時に服を着るのも忘れ読書に没頭し、時に文字を追うために目を細める。本を片手に物思いに耽る姿もあれば、ついうたた寝してしまう姿もある。あなたはきっと、気づくはずだ。どの表情、どの仕草も、現代の私たちと変わらないと。まさに時代も文化も国も超えた、本と人の普遍的な姿が捉えられている。本書では、ポンペイの壁画、浮世絵、セザンヌ、ゴッホ、マグリット、そのほか無名の作家や現代のアーティストにいたるまで、古今東西の本のある風景を捉えた300点を超える芸術作品を収録。時系列順ではなく、異なる時代、異なる文化のもとに生み出された作品が隣り合うことで、私たちに人類共通の姿を見出させてくれる。かつて権力者の独占物であった本が徐々に大衆化し、万人のものとなっていくその変遷や、戦争によって多くの書物が焼かれた過去、また、膨大な本があふれ、使い捨てにさえなってしまった現代まで、「本」というテーマを通して芸術が見せる様々な表情から、あなたは何を感じとるだろうか。一つ一つの作品が静かにあなたに語り出す、「本と人」の時間旅行へ誘う一冊。
感想・レビュー・書評
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A5版のずしりとした重量感のあるART BOOK。
原題は「READING ART」で、本を題材にした芸術作品300点をオールカラーで掲載。
造り手・描き手は古今東西、有名無名を問わない。
入手してから一週間、わずかな時間の隙間に眺め続けた。
閉じてはすぐ開いて眺めるの繰り返しで、豊穣な喜びをもたらす本書の、まさに「虜」だ。
解説付きの作品もあればないものもある。
見開き2ページにそれぞれ関連性のある作品を載せてあり、時系列順ではない。
誰もが知っている画家では、ゴッホ、マネ、セザンヌ、ベラスケス、国芳、歌麿、エル・グレコ、クールベ、ルノワール、デューラー、ピカソ、ダリ、レンブラント、ボッティチェリ・・
画材(素材)も油彩のみならず、アクリル、ペン、フレスコ、木版、象牙、ガッシュ、パステル、彩色絵本、地図、カラー写真、水彩、エッチング、レーザープリント・・
ひとは、こんなにも昔から本を読んできた、そしてそれを様々な方法で表現したのだと驚嘆の思いで眺めることになる。
読む本と読む人と、読むスタイルと衣装と小道具と背景と、それらが雄弁に歴史を語っていて、最も興味深いのはその点だ。
ちょうど初めて読む絵本のように、テキスト部分を手で覆い絵だけをじっくり見ていく。
古典派の絵は特に、必要な情報を画面に描き込んであるため、いくつも発見がある。
「絵を見る技術」に忠実に従っていくと、やがてストーリーが湧いてくる。
それから手で覆った部分をあらためて読んで、ちょっとした答え合わせをしてみたり。
時代を超え描き手を変え3度も描かれている聖職者ヒエロニムス。
マタイ、ルカ、モーセ、カルヴァン、ルターは聖書を読むが、宗教改革以降は聖職者以外のひとが聖書を読む絵に変わっていく。
「主はわたしの羊飼い」という、1863年アメリカの南北戦争のさなかに描かれた絵があり、黒人の男性がひとりスツールに座って聖書を読んでいる。
ルイス・ミショーの本を思い出す絵だ。
奴隷解放とは、読み書きを習い自分の言葉を獲得し、心身ともに自由の身となること。
画家のひたすらな願いが絵から伝わってくるようだ。
レーピンの描いたトルストイの肖像画、ゴッホの手による「聖書のある静物」、「モンテレッジォ」を彷彿とさせる「本を売り歩く」行商人の絵。
沈思黙考するグーテンベルグの絵。それらが特に印象深い。
作品の合間には「本にまつわる言葉」も登場する。
「天国とは、きっと図書館のような場所だろう」 ボルヘス
「焚書よりも重い罰がある。それは本を読まないということだ」ブロツキー
「小金があれば、わたしは書物を買う。金が残れば、食料と衣類を買う」エラスムス
・・上記の「主はわたしの羊飼い」の絵の隣にはこの言葉↓がある。
「いかに多くの者が、本を読むことで、人生の新たな段階へ進めたことか」ソロー
最後に、本書を読みながら過ごす私の気持ちを表した言葉を。
「長い一日の終わりに良い本が待っている、とわかっているだけで、その一日を幸せに過ごすことができる」キャスリーン・ノリス
本好きな皆さんの、座右の書としてお薦め。若干(かなり)値は張るが贈り物にも最適。
書物は、人間の魂と同じく生き残る。
デジタル技術は発展の一途をたどるが、紙の本はなくならないだろうと、そう確信させる。 -
とにかく古今の、書物が出てくる絵画・美術作品を300点近くも集めて本にしたというのが面白い。巻物の時代から今日に至るまで、人類の進歩は書物とともにあったのだ。著者は、キリスト教はイスラム教などと同じく文書の宗教だと言っているが、そのこともよく分かる。書物をモチーフにした現代アートをたくさん取り上げていて、特に解説がついているのが多い。意外と作品のインパクトは強くないように思う。本好きには読書はとにかく喜びであり、批判の対象にはなり得ない。他の問題とすべきことは世界に溢れているのだから。表紙のエドーワード・ホッパーの「車両293、個室C」は、一見読書の愉しみを描いているようでいて、白漠とした孤独を感じるが、どうなんだろう。
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goya626さん。
お読みになられたようで嬉しいです!
本にまつわる本のなかで、この本が一番好きなんですよね。
何しろ購入してしまい...goya626さん。
お読みになられたようで嬉しいです!
本にまつわる本のなかで、この本が一番好きなんですよね。
何しろ購入してしまいましたから・(笑)
表紙の絵は空間が大きくとってあるせいでしょうか。
女性の脳内の旅のように広がっています。
私は好きですけどね。2020/10/27 -
2020/10/27
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よほど気に入られて、高くて重たい本を買われたのですね。誰かがレヴューで、凶器の鈍器になると書いていて、むべなるかなと思いました。いや、ホッパ...よほど気に入られて、高くて重たい本を買われたのですね。誰かがレヴューで、凶器の鈍器になると書いていて、むべなるかなと思いました。いや、ホッパーは好きなんですが、現代人の孤独を描いているような気がします。平塗のような感じと色彩の淡さがそう感じさせるのでしょうか。「本の虫」ありましたよ!2020/10/27
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書物をめぐる絵画、オブジェ、写真などが収められている。そしてたまに、書物をめぐるいろんな書物からの引用が挿入される。
古代ローマの「蝋板と尖筆を持つポンペイの女」に始まり、カンディダ・ヘーファーの「アムステルダム国立美術館Ⅱ」という写真に終わる。
本を見ると人間は本能的に積み上げたくなるのだろうか、積ん読は本能なのか、本書に収録されているだけでも、本を積み上げて何らかの形や意味を表した作品の何と多いことか。
さておき、中でも印象に残ったのはまず、ルネ・マグリットの「従順な読者」。読んでいる本の内容によほど驚いたのか、女性が目を丸くし、口を開けてページを見下ろしている。こちらはこちらで「理想的な読者」というタイトルが浮かんだ。めちゃくちゃいい反応じゃん。笑った。
もうひとつ笑ったのはバルテュスの「居間」。少女が罰ゲームかというくらいにものすごくつらそうな姿勢で読書している横に、なぜか激怒したような表情の猫が座っている絵。その奥で少女がソファで爆睡している。なんだこれは(笑)
大好きなアンドレアス・グルスキーの写真もあった。タイトルは「Amazon」。膨大な商品が保管されている密林ではないほうのアマゾンの倉庫を写したもの。一瞬絨毯かと思ったけど、本をはじめいろんな商品が犇いている様子を遠目から撮ったものだった。
思考ボタンを押された引用は以下の2つ(引用は概して、書物を褒めすぎの傾向があってあまり面白くなかった)。
「読んだ者がひとりも気分を害さないからといって、その本が無害とは限らない。」(T.S.エリオット)
「天国とは、きっと図書館のような場所だろう。」(ホルヘ・ルイス・ボルヘス) -
「長い一日の終わりに良い本が待っている、とわかっているだけで、その一日を幸せに過ごすことができる。(キャスリーン・ノリス)」[p.174]
「小金があれば、わたしは書物を買う。金が残れば、食料と衣類を買う・(ロッテルダムのエラスムス)」[p.258]
「紙は燃えるが、言葉は自由に羽ばたく。(アキバ・ベン・ヨセフ)」[p.284] -
古今東西、書物を題材に取り入れた芸術を紹介する一冊。
文章は少なく、ゆっくりと眺め楽しめると思います。
本は高価・廉価、読書のため蒐集のため、状況によって大きく違った立場をとります。
絵や写真から、書物の持つ力とその限界や変遷を感じ取れました。 -
書物の描かれた美術作品を集めた画集。写真、彫刻やインスタレーションなどの立体も含まれている。目次はないのだが、おおよその主題ごとに緩やかにまとめられている。焚書の流れには目を覆いたくなるし、本を枕にうたた寝する人々の幸せな表情には共感せずにはおれない。
すべての作品に解題があるわけではないのだけれど、時々差し込まれるそれを通じて、書物の担ってきた文化の重みが語られる。もちろん否定的な象徴として用いられることもあり、その性悪ぶりも含めて、いつの時代にも、どの地域にあっても、書物は愛おしいものとされてきたのだった。
アンドレ・ケルテスの写真集「ON READING」と合わせて読みたい。 -
鈍器としても使えそうな重量級の本。
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美術作品に描かれた本や本を読む人々。焚書についての作品は、どれも辛い。
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Dort,wo man Bücher verbrennt,verbrennt man am Ende auch Menschen.
Heinrich Heine „Almansor“
本の歴史を芸術を通してみることが出来る本。
焚書のところはどきりとした。
本がある人生っていいな。
繋がっていく本、いいですね!読書の喜びここにありです。
そちらでリセット...
繋がっていく本、いいですね!読書の喜びここにありです。
そちらでリセットされても私の方では残っていますのでご安心を。
「本を読む本」以上の読書法の本はないのではと思います。
あんなに懇切丁寧に解説してくれているのに、ちゃんと受け止めないのは人生の損失です。
7冊の中に「世界の書店を旅する(白水社)」を入れるかどうか悩みました。でもレビューを挙げてないので諦めたのですよね。
「書物のある風景」の中に「昔も今も、良い書き手はたくさんいる。問題は、良い読み手が少ないことだ」という
ソローの言葉があります。なかなか耳が痛いです。
夜型さんの言われること、アナクロだなんて全然思いませんよ。口に出さないだけで、同じ思いを抱いています。
本も、読み手も、もうちょっと頑張らないとね。
今夜はまたこの本を読みます・笑
はい、それでOKです!
名作と傑作が違うように、良書と好きな本は違いますね。
ただもう理屈抜きで好きな本です。
「本の愉...
はい、それでOKです!
名作と傑作が違うように、良書と好きな本は違いますね。
ただもう理屈抜きで好きな本です。
「本の愉しみ書棚の悩み」の著者の言葉を借りれば「著者とは寝ないが本とは何度も寝た」となります(笑)
少し前に訊かれた「引用」の件でも、本書の引用が一番心に残っています。どれも全部です。
この本について聞かれると嬉しくて、お返事が長くなります(*´▽`*)
夜型さんはこの本をお持ちですか?
お好きでしたら嬉しいです!