- Amazon.co.jp ・本 (64ページ)
- / ISBN・EAN: 9784422701325
作品紹介・あらすじ
大好評シリーズ「アルケミスト双書」から
『闇の西洋絵画史』篇が登場!
西洋美術の「闇」の側面を浮かび上がらせる、
妖しくも美しい西洋絵画史シリーズ(フルカラー)。
著者は編集者で評論家の〈山田五郎〉。
■著者・山田五郎より
西洋絵画には、
教科書には載せられない「影の名画」もあれば、
逆によく見る名画に「影の意味」が
隠されていることもあります。けれども、
今日の感覚では不健全と思える表現や寓意も、
描かれた背景を知れば納得でき、
見え方が変わってくるはずです。
西洋絵画の本質は、
その最大の特徴である陰影法と同様に、
光のあたる表面だけではなく
闇の側面も見ることで、はじめて立体的に
浮かび上がってくるのではないでしょうか。
■本シリーズの特徴
・1冊1テーマを詳説
・類をみないユニークな切り口
・1冊あたり約70作品を掲載
・コンパクトで瀟洒な造本
・本物の美術の教養に
・ゲームや漫画他、創作のための資料としても
■シリーズ
*第1期:【黒の闇】篇
〈1〉悪魔
〈2〉魔性
〈3〉怪物
〈4〉髑髏
〈5〉横死
*第2期:【白の闇】篇
〈6〉天使
〈7〉美童
〈8〉聖獣
〈9〉楼閣
〈10〉殉教
■まえがき(〈2〉魔性)
ファム・ファタルはフランス語で、
直訳すれば「運命の女」。
赤い糸で結ばれた良縁が原義ですが、
もっぱら逆の意味で使われます。
すなわち男の運命を狂わせて破滅に導く
「魔性の女」という意味で。
ギリシャ神話のメディアや聖書のサロメから、
クレオパトラや楊貴妃まで、古今東西、
虚実ない混ぜ様々な魔性の女が知られています。
いずれも男を美貌と色香で惑わせ、
不実と我儘で狂わせますが、
それ以上に重要なポイントは、
彼女たちの多くが無自覚なこと。
つまり、男の方が勝手に惑わされたり
狂わされたりしているだけなのです。
魔性の女の正体は、
男の他力本願な破滅願望といえるかもしれません。
退廃的な厭世観が蔓延した
19世紀末の西洋で特に好んで描かれたのも、
決して偶然ではないでしょう。
感想・レビュー・書評
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魔性の女(とされた女性)のシリーズです。
史実や伝説を否定する解説もあり、新たな発見です。
どの絵も美しく妖艶に描かれています。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
闇の西洋絵画史シリーズ2作目のテーマは魔性の女。
面白かったのは、キリスト教では基本NGな女性の裸体の絵画でも、女性がヴィーナスであれば「古典古代の復興」という建前で許されたらしく、当時の作家はここぞとばかりにエロく描いているという事。当時の作家の人間っぽさが垣間見られて微笑ましい。
この本の中では神話画の名手ウォーターハウスの「ヒュラスとニンフたち」という絵が美しさと怖さが共存して印象的であった。
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西洋絵画で描かれた「魔性」の姿をその成り立ちを含めて紹介。
I 聖書の魔性の女 II 神話の魔性の女
III 実在の魔性の女
Column ヘロディア、不釣り合いなカップル、ヴィーナス
小さいサイズながらオールカラー画像で、
制作年、絵の大きさや画材等、データもきちんと掲載。
何故、彼女たちは魔性の女として描かれるようになったのか?
聖書では、サロメ、ユディト、デリラ、バテシバ、イヴ、リリス。
神話では、スフィンクス、セイレーン、キルケー、ニンフ、
メディア、オンファレ。
実在の人物では、クレオパトラ、メッサリーナ、
エリザベス・シダル、ジェーン・モリス。
運命の女=ファム・ファタルは、魔性の女。
無垢な少女も、英雄も、悲劇の女性も、
描いた人の解釈&描きたい願望で、魔性の女となってしまう。
だから、同じテーマでの描き方の対比が分かるのは、良かった。
モロー、クリムトの退廃的な厭世観。
ラファエル前派の画家たちの「運命の女」妄想。
“おわりに”まで登場するクラーナハ(父)&工房の魔性の女量産。
要は単にヌードを描きたいだけじゃんと、思う絵も・・・。
ブーグローの「オレイアデス」は流石に多過ぎ。
あと、ブロンツィーノ「愛の寓意」の解釈が楽しかったです。 -
魔性の女ってテーマで作品を絞り込む。視点が面白いです。
山田五郎さんがYouTubeで語っている内容と被る部分も多いですが、紙媒体の方が著作権的に有利なのか掲載されている作家数、作品数も多くて充実した内容です。
ただ図版としてはサイズが小さいので、その点は不満が残ります。
クラーナハが大々的に取り上げられてるので星4つ。昔はクラナッハって言ってた気がするんですが、、 -
最高すぎる。山田五郎さんの書籍は初めて手に取ったが、画家への忖度のないコメントが最高に面白すぎる。どうしても美化されがちな画家たちを、神格化せずフラットに「この人変態だよ」的なノリで教えてくれるのが、この人の本が他の絵画書籍と異なり、そして面白さを助長させてくれている点だろう。笑 描きたいように画家が描くためにテーマとする内容の史実改ざんがあることなども言及されており、ただ美しいだけでない背景が知れたり、画家のヘキみたいなものが見えるのもなかなかに興味深い。
最後のクラーナハ(父)の作品で埋め尽くされたページは、五郎さんの「このおじさんほんとにやばいと思わない?」というメッセージが伝わってきて思わず笑った。笑
全10巻からなるこのシリーズ、この「魔性」が読みたくて1冊だけ買おうかと思ったものの、せっかくならセットで欲しい……と珍しく全部購入。コレクター癖はないのに、この揃えたくなるパッケージと売り方……抜群である、、そして期待以上の内容で感動、、 -
このシリーズは良い本が多いが、その中でも秀逸。絵画の解説をしている本なのだが、普通の絵画解説の範囲を超えて、伝説の改ざんとか、背景事情が書いてあるのが良い。絵描きのことを神格化しないのが良い。
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図書館でも人気だったようでようやく借りれました。
読むのは5冊目(/5冊中)。
私的には魔性は横死と並んで1,2位のテーマでした。
悪魔と怪物はちょっとジャンルとしては広すぎるかなと思ったので。
『おわりに』がとてもよかったです。 -
闇の西洋絵画史・黒の闇シリーズ第2巻。西洋絵画の解説だけにとどまらない興味深い蘊蓄というか背景というか深堀りした情報の数々。サロメやユディトなど音楽との関連もあって、いろいろ普通の本とは異なる仕様なので高価格なのは仕方ないが座右としたいコンパクトな一冊。
《おわりに》より
「西洋絵画で女性の魔性ばかりが描かれてきたのは、単に男性社会における需要の問題。本書で紹介した様様なタイプの魔性は、全て男性にも当てはまります。女性の皆様も他人事と思わず逆のケースで考えて、日頃の魔性対策にお役立てください。」そして、ここに並んだクラーナハの魔性量産工房作品集がとても良い。
文字は少ないので読むだけならすぐに終わってしまうが鑑賞のためにはフォント、判型共に嵩張らない範囲でもう少し大きいと嬉しいなぁ。★五つとしたが、この点で4.5