バイオロギング-「ペンギン目線」の動物行動学- (極地研ライブラリー)
- 成山堂書店 (2012年4月4日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
- / ISBN・EAN: 9784425570416
作品紹介・あらすじ
「動物たちは水の中で何をしているのだろう?」そんな素朴な疑問からはじまった「バイオロギング」。動物たちに超小型の装置を取り付けて、その行動を調べる。画像や動物の体の動きをとらえることで、動物達の日常が見えてくる。
感想・レビュー・書評
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おえ
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なにこれ
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つまんな
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つまんな
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★最前線の研究者のワクワク★とにかく、一線の研究者の面白がり方が素直に出ていて楽しい。研究のワクワク感がまっすぐに伝わってくる。
鳥と同じようにペンギンもグライディング(羽ばたかずに滑空)して水面に近づくことは知られておらず、加速度計から翼を広げていると仮説を立てたところ、後の静止画像で確認して「ガッツポーズがでた」。記録計が小さくなり鳥にもつけられるようになる。疑問や目的を持たずに装置をつけるのは本来の科学ではないと言われても、「いろいろと面白いことがわかった以上、もうやめられない」というのも笑った。 -
極地研ライブラリーの1冊である。極地研とは国立極地研究所の略であり、日本の南極観測研究の中核となる施設である。このシリーズは、極地の研究に関して、第一線の研究者が解説・紹介しているそうである。
本書は研究者4人の共著であり、『サボり上手な動物たち』の著者も含まれている。
さて、まずはバイオロギングとは何か。
「ログ」はコンピュータ用語としてよく使われ、履歴、情報を記録に残すこと、またその記録自体を指す(元々は船舶の航海日誌を指す言葉であったようだ。その語源は船の速度を丸太(=log)で測定したことから来ている)。
これに生物を意味するバイオを付けて、生物の行動記録といった意味になろうか。
アザラシやペンギンなど、水中で長時間を過ごす動物が研究対象である場合、水中で彼らが何をしているのか、実はよくわかっていないことが多い。
こうした動物に装置を取り付け、水中の行動を探ろうというのが原点である。一番わかりやすいのはカメラによる映像記録だが、その他、速度・深度・加速度などを記録して、動物の動きをより詳しく分析できるようになってきた。
テクノロジーの進歩から、装置は小型化され、感度が上がり、さまざまな種類のデータを取ることが可能になってきている。
こうしたことから、バイオロギングの手法は、水生動物だけでなく、飛翔鳥類にも応用されてきている。
アザラシやペンギンといえば潜水である。彼らは驚くほど長時間を潜水したまま過ごし、そして減圧症(いわゆる潜水病)に苦しむこともない。血中・気嚢中の酸素濃度や深度データから、彼らは体内に貯めた酸素を上手に利用するなどして、減圧症を防いでいることがわかってきた。
また、採餌行動を調べるため、胃の中の温度を測る方法が開発された。食べ物が入ってくれば胃内の温度が下がる。また、この温度が元に戻るまでの時間を測れば、おおまかに食べた量もわかる。
これと並行して、上下の顎の開閉運動を記録する方法も編み出された。マグネットとマグネットセンサーをペンギンの上下の嘴に取り付けて開閉を記録するというのだが、心なしか挿絵のペンギンの顔が恨みがましく見えて、笑ってしまった。
飛翔性鳥類への応用の例として、羽ばたき周波数が挙げられている。周波数とは単位時間あたりにどのくらいの反復運動がなされたかであるが、周波数が低ければゆっくりした羽ばたき、高ければバサバサと細かく翼を動かす羽ばたきと思えばよい。大型の鳥ほどゆっくりとはばたく傾向が見られ、観察される印象と一致する。
滑空しているように見える鳥もときどきは高周波数の羽ばたきをまぜている。揚力や重力を考慮し、鳥の形が相似形であるとすると、理論的には「無風条件下で滑空する鳥が飛行速度を加速するために時々行う羽ばたきの必要最低限の周波数は、体重のマイナス1/6乗に比例する」と予測される。加速度のデータロガーから周波数を測定した実測値からは、ほぼこれに近い結果(-0.18乗)が得られているのだそうである。
このあたりは、航空工学などにも通じる印象を受ける。
こうした装置の利点は、画像では漠然と印象を捕えるのに対して、より深く、詳しく、行動を分析できる点である。
但し、データから即、行動をイメージするには訓練が必要で、研究者の中には自分に装置を取り付けて、どういう動きをするとどういったデータとなって現れるか身をもって体験してみた人もいるというから、研究者魂、恐るべし、である。
なるべく自然な行動を記録するためには装置の小型化が欠かせない。
ツール開発と科学研究は二人三脚。バイオロギングの進歩は近年のマイクロエレクトロニクスの発展に支えられている。
この分野、まだまださまざまな種を対象により多くの行動に適用可能であるように思う。楽しみに見守っていきたい。
*『ペンギン・ペディア』のデータの中にもこうした装置から得られたものが多くありそうだ。 -
なぜか僕を魅了してやまない極地動物(とくにペンギン)。この本は、ペンギンなどのログをとって、その行動を知ろう、という極地研究所の活動をくだいて紹介する本。
その歩みや成果は「ペンギンもクジラも秒速2メートルで泳ぐ」や「巨大翼竜は飛べたのか」で紹介されていて、読み物としてはこの二冊(を順番に読む)ほうが面白いけど、こういう活動があるんです、という点でこの本もよい。
「観察できない」というフラストレーションが装置を生み出し、それによって明らかになることから、さらなる装置の開発が進むのだと。
極地ではエネルギーを抑えることが他の地域より重要で、この研究はきっと役に立つ、と思う。でも、役立つかどうかより、ペンギン好き、でやっているようにも見える。それでもいい。 -
動物に小型の計測機器を取り付けて、行動生態を探る分野の入門解説。計測機器開発の黎明期から現代までの簡単な歴史を学ぶことができる。バイオロギングによってはじめて明らかになったアザラシやペンギンの潜水採食行動、海鳥の飛翔など。どうやらエネルギー効率が最小になるように行動している様子がうかがえるとのこと。科学のフロンティア研究の面白さが伝わってくる本でした。