ビジネススクールで教える メンタルヘルスマネジメント入門―適応アプローチで個人と組織の活力を引き出す

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  • ダイヤモンド社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478003374

作品紹介・あらすじ

企業内のメンタルヘルスの問題を正しく理解するためには、ストレスに対する理解を深めるとともに、メンタルヘルスを「疾病とその治療」という狭い枠のなかで考えるのではなく、職場の対応も含めて改善を図る「適応アプローチ」という、より包括的な考え方で理解することが重要です。経営学とメンタルヘルスを融合させ、その両面からメンタル不調の予防策、対応策を考える本書のスタンスも、この適応アプローチの考え方に基づいています。

感想・レビュー・書評

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  • 日々の働きかけでメンタル不調を予防

    対応手順の誤りが損害賠償責任のリスクへ
     心の病であろうが無かろうと安全配慮義務を意識し、リスクマネジメントを最優先しなければならない。
     メンタル不調のシグナルを見逃し、緊急時の対応がうまくいかなければ、電通事件やおたふくソース事件のように、安全配慮義務違反となり、多額の損害賠償を負うことになります。

    復職プログラム
    「無理をせず休みながらゆっくりと復帰してくれ」飲みのコミュニケーション。一見、本人に対する配慮のように見えるが、多くの職場復帰社は、[多忙な職場の中で、自分だけ仕事を与えられず机についているほど辛いことはなかった_と述べている。
    →復職者にとってのその先の見通しを明確にすること。どれくらいの負荷の仕事をいつまで行うのか。どのタイミングで本格稼働するかの見極めを行うのか、等の計画を本人とともに立てておくこと。「跡どれくらいやれば次のステップに進めるのか」が本人にとって明確になり、目標が立てやすくなる。

    リーダーシップによるアプローチだけでなく、人事による人事施策も必要。「イベント型」のメンタルヘルス対策では、効果が持続せず、前者に広がらない。企業としては場当たり的ではなくより長期的な視点で、しかもリーダー任せだけではなく「仕組み」(=人的資源管理の枠組み)で検討する必要がある。

  • ”<一言>

    <読書メモ>

    <きっかけ>”

  • 432号室に一冊あり

  • 訴訟リスクがあるので家族のいる人を採用してはならない。

  • ビジネス的な観点から考えるメンタルヘルスへの対処方法をまとめた本。

    会社でストレスチェックやメンタルヘルスの研修などが
    実施されるようになってきた背景を知ることができた気がしました。

    また本書はマネジメント観点が中心なので、
    過去の実績から機械的にメンタルヘルス問題に対しての
    経営層の対処方法を語っていると思います。

    しかしながら結局、個々の人の考えと会社の方針を100%
    合わせ続けるのは難しいので、コツコツとメンタルヘルスに関する教育とストレスチェックでバックボーンは啓蒙し、

    職場全体で個々が競争しつつも、助け合えるような空気感を作っていくしかないのかな、と思いました。
    まあこれがすごく難しいわけですが。

  • 上司向けのメンタルヘルス入門書としてはよくまとまっていると感じた。

  • メンタルヘルスを「疾病とその治療」という狭い枠のなかで考えるのではなく、職場の対応も含めて改善を図る、「適応アプローチ」という、より包括的な考え方で理解することです。


    メンタルヘルスの低下がもたらす経済的損失を測定するメジャーとしては、

    ①労働損失日数

    ②医療費

    ③訴訟費用

    ④職場における対策費用

    などがある。


    うつ病の診断は、80年にアメリカ精神医学会で開発されたDSM(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders:精神疾患の分析と診断の手引き。現在はDSM-Ⅳ-TRが使用されている)が現在の主流となっている。


    統合失調症の主な症状は、妄想と幻覚。
    原因は不明。


    人間は原始の時代から、生き抜くためにストレスと戦うか回避するかを選ぶことを繰り返してきた

    適度なストレスがあるからこそ人間の目標や努力が生じ、やる気が養われる。

    ストレスのない生活は、心身の退化を招く。

    適正なストレスが健康と生産性を向上させる。

    セリエは「ストレスは人生のスパイスである」ということばを残している。

    p40 図1-1-6
    「NIOSHの職業性ストレスモデル」

    p47 簡易版THQストレス診断

    p48-49
    表2-1-1①簡易版THQストレス診断 精神健康度(M得点)
    表2-1-1②簡易版THQストレス診断 精神適応度(A得点)

    p50 
    表2-1-2簡易版THQストレス診断の判定表
    表2-1-3簡易版THQストレス診断 判定

    p85
    表3-1-1 6つの性格傾向と効果的なコーピングの例


    7種類のコーピング
    ・リラクセーション
     腹式呼吸、森林浴、散歩、アロマ、マッサージ、軽い運動、体操、ストレッチ、深呼吸。

    カリフォルニア大学ブレスロー博士、7つの健康習慣

    ①7~8時間の睡眠
    ②朝食を摂る
    ③間食しない
    ④理想体重5%内外維持
    ⑤適度なアルコール
    ⑥禁煙
    ⑦適度な運動

    ・コミュニケーションの改善

    コーピング
    「人の話を上手に聴くための技法」
    「相手の心を傷つけずに自分の意思を相手に伝えるための主張の技法」

    ・人生の座標軸の設定

    ・認知行動療法

    ストレスの歪みや思考や感情の歪みによる偏った考え方や行動を、思考や行動に置き換えること。

    セルフモニタリングで自分の思考の癖を理解する。


    ①短絡思考・・・リストラと言う話が出ると、すぐに会社を辞めるかどうか考えてしまう。
    ②レッテル貼り・・・部下がちょっと失敗したら「あの人はダメな人。こっちではできる」など考える。
    ③マイナス思考・・・上司にしかられるともうだめだと悲観的に考えてしまう
    ④その他・・・拡大解釈(破滅化)、過小評価、過大評価など

    ・食事の改善

    脳内神経伝達物質が重要
    (セロトニン、ドーパミン、GABA、メラトニン等)

    例:セロトニン→バナナ
    GABA→納豆、オクラ、山芋に多い

    不眠→「トリプトファン」を豊富に含む牛乳

    精神安定に効果的な必須アミノ酸
    「トリプトファン」(豆腐、豚肉)

    活力アップにつながる必須アミノ酸
    「フェニルアラニン」

    イライラを減少させる
    「βカロチン

    脳を活き活きさせる「グルテン」


    カナダ・ストレス研究所では
    「朝は王様の食事、昼は普通の食事、夜は質素な食事」を推奨。

  • メンタルヘルスのテキストだが、人的資源管理のテキストでもあり、とてもいい。

    1.適応アプローチとは
    ・ストレス状態を、性格上の問題という観点ではなく、原因は当人と環境との関係性(相互作用)の中にあると考える
    ・適応アプローチにおけるストレスとは、ストレッサーに対する不適切な対処の結果である
    ・ストレッサーと当人との関係を見極め、ストレッサーを除去したり、対処能力を改善したりする
    ・健康者に積極的な常日頃の適切な働きかけにより、メンタル不調を予防することも重要な目的

    2.ドミノうつ
    ・セルフケアだけでは改善できない。業務量の増加に応じた適切な人員配置などの対策をとる
    ・当人に対する対処は当然として「なぜメンタル不調者がでてしまったか」という本質的な問題に目を向けるべき

    3.ストレスとは
    (ラザルス理論)
    ・生理学的な心身の「歪み」を生じた状態
    ・受け手の認知によってストレスが異なる
    ・一次評価:有害かどうか→有害でない→ストレスなし
    ・二次評価:対処能力の有無→「効果的な方法を知っているか」「その方法を実行できるか」→対処できる時はストレスが緩和され、できない時はストレスが高じる
    ・ストレス反応を決めるものは認知的評価と対処の結果
    ・認知→評価→対処→結果

    4.カウンセリング・マインド
    ・リーダーシップによるソリューション
    ・カウンセリング・マインドとは、その人との人間関係を第一に優先するという心がけ。
    ・「信頼関係をつくる」「共感的理解を示す」「受容する」
    ・指示したり強制したりするのではなく、相手を認め、一緒に考える
    ・重要なのは相手に関心を持つ「心」。相手に関心がないままにスキルやテクニックだけを真似しても逆効果。
    ・リーダーが「本当に部下のことを知ろうと思っているのか。力を信じているのか」を自問することが最重要。
    ・命じたり語ったりすることよりも聴くことが、リーダー自身のメンタルヘルスには良い効果がある

    5.NIOSHのストレスモデル
    仕事上のストレス要因→→→→→ストレス反応→疾病
              ↑
              個人的要因・仕事外の要因・緩衝要因
    上司はこれらの媒介要因を知っておく必要がある
    何かあればいってくるような日ごろからの関係作りが重要

    6.早期発見
    上司は部下の以下に気をつける
    1)部下の「正常」を把握する
    2)いつもと違う状態が継続的に続いているかに着目する
    3)イベント(プラスマイナス両方)に気をつける

    7.仕事上のストレス要因を解消する
    メンタル不調の真因に対する施策を考えることが重要
    1)仕事の量的負荷とコントロールのバランスを欠くこと
    仕事の負荷にあわせて従業員の最良で仕事をする余地を与えるような制度や仕組み
    2)仕事の目的意識や意味合いの喪失
    採用→配置→育成→評価
    プロセスごとに仕事の目的意識や意味合いを徹底させる
    ①育成
    ・会社の存在意義や個々の従業員が担当している仕事の意味、社会に具体的にどのような価値を提供しているのか、そしてそれが自らの価値観に適合しているのかを見つめなおす機会を与える。
    ・こういったことを定期的に考えさせることにより、従業員は目先の業務のプレッシャーだけに目をとらわれることなく、仕事の意味を理解した上でより広い視野で業務を捉えられることになる。
    ・結果として、多少のストレッサーに対しても自分の中で消化できるようになり、ストレス耐性が高まる。
    ②配置
    やりたい仕事につけるチャンスを与える仕組みの整備
    ③評価
    ・定期的にフィードバックする
    ・業績評価だけでなく、企業の価値観に基づくプロセス評価も評価軸に組み込む
    ④採用
    ・企業の価値観とその人の価値観が一致しているか

  • 会社でメンタルヘルス/ラインケア資格取得のための
    対策研修を受講しました。立場上、この分野をもう少し
    学びたいと思い、購入したのがこの本。

    メンタルヘルスに関する知識だけでなく、ストレス診断や、
    人的資源管理との関係などにも、言及されています。
    はじめてこの分野に触れる方にも、わかりやすい内容だと
    思います。
    変化が激しく先行きが予測しにくい時代、個人と組織が
    変化に対する適応力を高めていくことが求められます。
    そのためには、対症療法だけでなく、予防のための経営や
    リーダーシップが必要なんですね。

    この本で紹介されているTHQストレス診断の本格版を受診
    してみたところ、私の性格傾向は「消極傾向」だそうです。
    確かに、疲れてくると一人でいたいタイプかも。
    リラクセーションが有効らしいです。
    座禅やヨガにチャレンジしてみようかしらん。

  • 「人事をやっているのなら…」と紹介されて読みました。

    正直、前半はよく知っている内容、もしくは著者自身の手法の宣伝(?)と思って微妙でしたが、後半は人事としては考えなければならいことばかり。

    一番印象的だったのは、メンタルヘルス障害はベンチャーには少ないということ。
    もちろんそれぞれで差はあると思うけど、所帯が小さい+会社の立ち上げで、自分の仕事がなぜ必要かイメージしやすいのだそう。
    大きくなりすぎて、その仕事を何のためにやっているのか分からなくなる大企業こそ危険で、上司はしっかりとビジョンを示すことが大事とか。

    そりゃそうだよね~。

    ちなみにサクっと読み終わります。

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著者プロフィール

医療法人偕行会 偕行会セントラルクリニック院長/偕行会バスキュラーアクセス 治療センターセンター長

「2022年 『透析室で飛び交う用語 らくわかりイラスト事典280』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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