ファイナンスの本。さすがグロービス。
〈メモ〉
・リストラを実施すると売上が減り、会計上の利益も減る。しかしキャッシュフローは増加する。赤字によって、損金となり税金を減らすことができる。節税効果。税金はキャッシュの支払いなので税金は減る。利益を考えるとリストラはマイナスだが、キャッシュフローからはプラスになる。
・NPVに対して、節税効果の分価値を付加した概念がAPV
事業の経済的価値=FCFの価値+節税効果の価値 で表現される。
・WACCが有効なケース。会社の本業のプロジェクト→会社のWACCを使う。会社の本業とは異なる事業領域の新規プロジェクト→プロジェクトの属する業界のWACCを使う・APV法が有効なケース。会社の資本構成が大きく変化する場合→企業買収、リストラ、会社の本業だが、社運をかけるような巨大プロジェクト。ゼロから独立したプロジェクトを始める場合→起業。
・EVAの現在価値の総和がNPV。EVAを上げるためには、1売掛金の回収サイトの短縮2在庫の削減3余剰資金の有効活用 4EVAマイナス事業からの撤退 5EVAプラス事業のM&A
・EVAを活用しにくい局面。固定資産のウエイトが高い事業は 流動資産のウエイトが小さくなり、投下資本にかかる資本コストを大きく削減することは難しくなる。流動資産のウエイトの高い事業では流動資産のコントロールがEVAの結果に強く反映されることになるのでEVAを使いやすい。
・企業価値は資産の市場価値であり、負債と株主資本の市場価値に等しい。
・経営の多角化について。投資家は自らポートフォリオを変更できるため、事業を多角化して収益が安定しても資本コストが下がり、企業価値が向上することはない。
・負債が増加した時のコスト
1倒産コスト 売上から得られる営業キャッシュフローは変動するが、負債の金利と元本返済は必須であるため
2エージェンシーコスト 債権者と株主の利害が衝突することによって発生するコスト。負債が増えると債権者が回収の安全性を優先して、起業価値を増やす投資機会に難色を示すことがある。
3財務的柔軟性の喪失 借り入れ余力と手持ち資金で予測できない事態に対応できるが、絶好の事業機会が突然おとづれても資金に余裕がないと投資できなくなってしまう。
一程度までは節税効果により企業価値は上昇するが、ある段階からコストが上昇して企業価値が減少するようになる。
・価値の源泉が取引しやすいものは隔日制が高いので借り入れを活用しやすい。貸しビル事業の源泉はビルという有形資産、石油金属なども同様。食品事業はブランドという無形資産。価値の源泉の取引がしやすい事業は負債を積極的に活用することが可能で資本構成に於ける負債比率を高くすることができる。これとは逆に開発力、ノウハウ、アイデアなど価値の源泉が目に見えないものは取引が難しい。ハイテク事業、製薬事業、ソフトウェア事業などがこれに該当する。不確実性が高く株主資本が活用されることになる。
・株主に報いるにはNPVがプラスのプロジェクトを行うこと、借入を行うこと、節税効果で企業価値が増加し、株主の経済価値が向上することになる。
・利益還元策は利益の分、企業価値を下げるため価値中立的である。企業が成熟期に至ると営業キャッシュフローが潤沢になる一方魅力的な投資機会は減ってくる。そのため配当や自社株買いを行うことが適切となる。
・リアルオプション 事業への投資プロジェクトはオプションとして捉えることができる。事業の経済的価値の評価にオプションの考え方を適用することをリアルオプションと呼んでいる。走りながら市場の状況を見極め、オプション(戦略的な打ち手)を駆使する。ある時点においてダメと判断したら撤退し、行けると判断したら追加投資を払って勝負に出る。リターンの経済的価値が投資金額よりも大きければ投資する。
・市場が魅力的で、競合の脅威はコントロールでき、自社がKSFをモノにしていることがわかればGOできる。
市場規模の見通しはどうか、ターゲットセグメントは明確か、顧客は具体的に決まっているか、リーディング企業が自社顧客になるか、競合各社の戦い方はどうなっているか、KSFは何か、モノにできているか、競争優位の相対的ポジションと目標シェアに整合性があるか。
・競合他社よりも戦略のオプションを用意できているか、
リアルオプションが示唆するオプションとしては次のようなものがあげられる
延期のオプション
拡張のオプション
切り替えのオプション
撤退のオプション
選択のオプション