理念経営2.0 ── 会社の「理想と戦略」をつなぐ7つのステップ

著者 :
  • ダイヤモンド社
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  • Amazon.co.jp ・本 (330ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478114506

作品紹介・あらすじ

あなたの会社に「意味」はあるか──。ミッション、ビジョン、バリュー、パーパス……企業理念のつくり方・活かし方。

感想・レビュー・書評

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  • 佐宗さんの本はほとんど読んでいるはずで、
    どの本からもそれなりの影響を受けているのですが、
    この本は特に良かったです。

    ※21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由
    https://booklog.jp/users/noguri/archives/1/4844374214#comment

    ※世界のトップデザインスクールが教える デザイン思考の授業
    https://booklog.jp/users/noguri/archives/1/4532199948#comment

    ※直感と論理をつなぐ思考法
    https://booklog.jp/users/noguri/archives/1/4478102856#comment

    ※ひとりの妄想で未来は変わる
    https://booklog.jp/users/noguri/archives/1/4296103849#comment

    ※模倣と創造
    https://booklog.jp/users/noguri/archives/1/4569851177#comment

    ちょうどビジョン系の本を探し求めていた自分には、
    「まさに今、求めている本!」という感じで、
    自分自身の頭の整理になりました。
    ミッション・ビジョン・バリューなど
    似たような言葉も言葉も使われる中、
    ようやく自分の歯中で腹落ちして
    使い分けれるようになってきました。

    ビジョンやミッション、パーパス系に興味のある方は、
    これらの本も是非ご参考に。
    とは言え、個人的には理念経営2.0が今のところの
    マイベストです。

    ※2030 経営ビジョンのつくりかた
    https://booklog.jp/users/noguri/archives/1/4532322898#comment

    ※THE VISION
    https://booklog.jp/users/noguri/archives/1/4023317519#comment

    ※ザ・ビジョン
    https://booklog.jp/users/noguri/archives/1/4478109834#comment

    ※パーパスモデル
    https://booklog.jp/users/noguri/archives/1/4761528257#comment

  • 理念経営に関する佐宗氏の本

    メモ
    ・理念経営を進めたいという四文脈
      従業員からの要請 リモートと自律的働き方
      株主要請 ESG投資、人的資本開示
      パートナー企業要請 社会課題解決共創
      ユーザー要請 応援消費

    ・理念は経営資源の核

    ・鳥の群れの三原則
     方向感覚 これからの行き先
     距離感覚 周りとの距離感
     中心感覚 群れの中心に向かう感覚

    これがミッションビジョンバリューに対応する
     方向感覚→ビジョン どこを目指すか
     距離感覚→バリュー 協働基準は何か
      蓄積されると組織文化に
     中心感覚→ミッション 中心的活動は何か

    ビジョンで人を集め、群れとしてまとまるためにバリューを設定する。自分たちだからこそできる中核役割がミッションとなっていく

    ・夢を語れば無形資産が集まる。無形資産が集まれば有形資産が動く

    ・ビジョンを具体化する三要素
     解像度 具体的に例示するイメージできるものを
     広がり 取り組み領域に広がりを持たせる
     時間軸 10年後より先の未来を考える

    ・不確実な環境で幸せに生きられる人
      希望
      自己効力感
      レジリエンス
      楽観性

    ・バリューとは多様性を価値に転換する土台
     バリューはビジョンのように新しく描き出すものではない。
      組織における最高の体験は何か
      どのような行動をしたか
     どんなことを大事にしているからか
     を答えてみる

    ・ミッションは短期的な経済的利益が期待できない長期的プロジェクトへの投資を正当化し、チャレンジを促す効果がある。

    ・ミッションをつくるために
      will can nee dで活動を棚卸しする
      あなたの会社がなくなったら誰が困るか
      whyを繰り返す 
      ミッションステートメントに落とし込む
     
      To be型 パーパス型 世界を○したい
      Doing型 アイデンティティ型 ○し続ける
      Being型 フィロソフィー型 ○であり続ける

    ・理念が伝わる三段階
      理解、共鳴、体現

    ・いかにして組織の物語を自分ごと化させるか

    ・会社の歴史は重要な経営資源である

    ・組織文化が生まれる四要素
      価値観 大事にしている価値観
      強み 価値創造の根拠となる強み
      行動 協働していくための行動
      環境 市場環境 慣行

    ・らしさを物語に  
      ナラティブにして語る
      仕組み化する
      価値創造モデルに埋め込む

    ・仕組み化によるクセのデザイン
      日常習慣 会話行動思考
      制度 表彰、人事評価
      環境 オフィス、デジタルツール

    ・企業理念実装に向けた6フェーズ
      理念策定
      インナーブランディング
      人事施策反映
      イノベーションによる体現
      アウターブランディング
      株主向けの開示

    ・ものを生む組織から
     ちえを創る組織へ

  • こちら(↓)で書評を書きました。

    https://www.rinen-mg.co.jp/web-rinentokeiei/entry-5525.html

    日本では松下幸之助の「水道哲学」あたりに嚆矢を見いだすことができる「理念経営」は、近年、その重要性をいっそう増している。

    それは、「企業は儲かればそれでOK!」という時代、物質的豊かさが最優先される時代がすでに終わり、企業経営にも社会的価値の探求が求められる時代になったからである。

    だが、一口に「理念経営」といっても、高度成長期までのビジネスモデルの中で育まれたそれと、現在のそれでは大きく異なっている。

    では、いまの時代にふさわしい理念経営とはどのようなものか? それを考察してまとめたのが本書である。

    そして、理念経営をどのように推進したらよいか、その具体的手順を記した実用書でもある。

    たとえば、ミッション・ビジョン・バリュー・パーパスという理念経営の重要概念があるが、それらの違いを明快に説明できる経営者は少ないと思う。
    本書はそれらを、これ以上ないほど明快に腑分けして解説してみせる。

    そして、自社のミッション・ビジョン・バリュー・パーパスをどのように策定し、どう定着させ、生かしていけばよいかも、微に入り細を穿って説明されている。

    じつに有益で奥深い経営書だ。

  • MVVの再定義は「実存への渇望」の発露。
    死の匂いを察した瞬間に現れる。

    何がステークホルダーにとっていいことなのかの再定義
    =パーパス

    ザッカーバーグ
    新しい仕事を創造するだけでなく、
    新しい目的意識を創造すること。


    理念経営1.0=社長の誓いとしての企業理念の植え付け
    理念経営2.0=みんなの価値創造の物語を生むためのソース

    企業の思想版R&D

    MVVは渡り鳥でたとえる
    ビジョン=目的地への方向感覚
    バリュー=仲間同士の距離感覚
    ミッション=飛んでるのがズレてないかの中心感覚
    パーパス=ビジョンの先にあるもの


    夢を語れば、無形資産が集まる。
    無形資産が集まれば、有形資産が動く。
    岡田武史

    たとえば米テスラ社にはビジョンステートメントと呼べるものはない。その代わりに、ビジョンをシナリオとして提示している。①スポーツカーをつくる②その売上で手頃な価格のクルマをつくる③さらにその売上でもっと手頃な価格のクルマをつくる④これら①〜③を進めながら、ゼロエミッションの発電オプションを提供する(⑤その結果、世界を電気ベースの持続可能なエネルギーシステムに移行する

    =物語、シナリオとしてのステートメントを


    ex)
    ALEが人口流れ星をつくるのは、
    宇宙という場所自体に興味を持ってもらうため。


    ムラ社会では、大事な原則は言語化しない。
    その場を仕切っている権威者の裁量が減るから。

    ティールの限界
    =自律型を思考して多様性が高くなると共通の価値基準がなくなり忖度が起きる


    ミッションが存在することで、意思決定の基準が明確になる。その典型的な例が、「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む。」という目的を定めたパタゴニアだ。


    why we exist=パーパス
    what we do=ミッション

    クックパッド、
    「料理で人を幸せにする」(パーパス)ために、
    「毎日の料理を楽しみにする」(ミッション)
    →会社の解散条件を企業の定款の中に入れている

    ミッションステートメントの類型
    パーパス型、アイデンティティ型、フィロソフィー型

    松下電器が水道哲学のミッションを掲げたのは、創業から14年後

    過去、未来、現在をつなぐ語り=ナラティブ

    命令ではなく、組織のナラティブを。

    レゴの価値はブロックの品質ではなく、組み立てる体験にあるという再定義

    アメリカのイノベーションはテクノロジーで新しいシステムを作る
    欧州のイノベーションは文脈によって新しい意味を作る

    組織文化はモノマネから生まれる
    →リモートワークではモノマネできない

    理念だけではなく、それをどう使うか

    ネトフリのカルチャーデック

    whyよりwhatが効くのは
    産業革命型の組織
    それしか商品がないとき

    会社の意味
    集合地のインフラを使って、
    個人の生きる意義を生み出すこと

  • よかった。この本は保存版。
    前半のミッション(パーパス)、バリュー、ビジョンについては社歴や規模に関わらず活用できそう。まずは自分自身の事業のそれらを定めてみようと思う。
    後半のナラティブ、ヒストリー、カルチャー、エコシステムの章については、ある程度組織が大きくなったり育ってきた頃にぶつかる悩みに答えてくれる。支援側として活用できそう。メンバー同士で実践できるワークの紹介も各章に含まれている。
    あとがきの「理念は社長の誓いではなくみんなの物語である」という言葉が印象的。

  • ▪️マークザッカーバーグのハーバード大卒業式スピーチ
    「目的意識」を持つというのは、自分より偉大な何かに貢献していると感じられることです。自分は必要な存在だと感じること。何かをよりよくするためにがんばれること。目的意識こそが、真の幸せにつながるのです。
     いまはこれまで以上に目的意識を持つことが重要になっています。僕たちの両親の世代が大学を卒業したときは、「目的意識」は、仕事や教会、地域社会がもたらしてくれました。けれども今日、テクノロジーや自動化が多くの仕事を奪っています。コミュニティに帰属しようという人が減っています。また、多くの人がつながりを失い、意気消沈し、なんとか人生の虚無感を埋めようとしています。
     いろんな場所を訪れるなかで、少年院の子どもたちやモルヒネ中毒者と話す機会があったのですが、彼らはこんなことを言っていました。もし何かやるべきことがあったなら、人生は違っていたかもしれない、と。また、かつて工場で働いていたけれど、仕事がなくなり、これから進むべき道を見つけようとしている人にも会ったことがあります。
     社会が前進していけるよう、僕たちの世代が取り組むべきことがあります。それは、新しい「仕事」を創造するだけではなく、新しい「目的意識」を創造することです。
    (クーリエ・ジャポン「ハーバードの卒業生たちにマーク・ザッカーバーグが語ったこと」2017年5月25日)


    ▪️企業理念をとりまく「6つの課題」
    悩み①組織の推進力がない
    悩み②組織の一体感がない
    悩み③組織のなかで合意形成が難しい
    悩み④現場の社員が企業理念を自分ごととしてとらえていない
    悩み⑤会社が持っていた強みが薄れてきている
    悩み⑥企業理念が社員の現場の行動に落ちていない


    ▪️会社の存在意義を「つい語りたくなる」問いかけ
     これ以降の6つの章構成は、いまあげた6つの悩みに対応している。さらにこれらを1つの体系のもとに統合し、「人材」「②イノベーション」「③ブランディング」「④資金調達」のサ イクルへとつなげていく「エコシステム(生態系)」の考え方が、第7章として続く。
     本論に入る前に、もう1つだけ大切にしてほしいポイントがある。
     それは問いだ。各章の冒頭には、あなたの会社の企業理念をつくり、それを生きたものにす るための問いを用意しておいた。
     理念経営2.0の本質は「みんなで対話してつくること」だ。経営者や一部のメンバーだけでつくったステートメントを一方的に社員に押しつけ、何度も復唱させたりして教え込んでい くようなものではない。もちろん一定のステートメントはあっていいが、それをもとに各人が自分なりの意義を語りだすような仕掛けがなくてはならない。
     そうした仕掛けの最たるものが「問い」だ。これからの時代の理念経営を実践するうえで、本当に大切なのは、いかにして「憲法」と言えるような理念をつくるかではない。むしろ、魅 力的な問いかけを次々とメンバーたちに投げかけて、どんどん理念が更新されていくようなサ イクルをつくることが求められている。理念経営2.0における経営者の役割は、理念そのも のをつくるイニシアティブをとり、理念を生み、育てるような問いとそれについて語り合う場をつくることなのだ。
     各章冒頭に掲げたのは、あくまでも僕なりに考えてきた問いだ。さまざまな会社の企業理念づくりを支援するなかで得た知見、そのために収集した歴史学・宗教学・心理学・文化人類学 などの人文知、さらには一人の経営者として自分の会社経営で悩んだり考えたりしてきたことなどを、次のとおり、できるかぎりコンパクトなかたちに結晶化させたつもりだ。

    第1章 ビジョン――私たちは将来、どんな景色をつくり出したいか?
    第2章 バリュー―私たちがこだわりたいことはなにか? おさめこだわりたいことはなにか?
    第3章 ミッション/バーバス―――私たちはなんのために存在しているのか?
    第4章 ナラティブ――私たちの会社はどこから来て、どこに向かうのか? 私たちは、なぜここにいるのか?
    第5章 ヒストリー―――私たちのいまをつくった原点は、どこにあったのか?
    第6章 カルチャー――私たちの会社の「らしさ」とはなんだろうか?
    第7章 エコシステム――私たちの理念を育てるためには、どんな仕組みが必要か?


    ▪️ビジョンを具体化するうえで効果的な3つの要素
    ・解像度:未来を細部まで描けているか?抽象的なイメージで満足していないか?
    ・広がり:社会にとってもワクワクする未来か?自分たちの視点にとらわれていないか?
    ・時間軸:十分に遠い未来を描けているか?未来像のスパンが短すぎないか?


     ミッションの効用は、ミッションがないときになにが起こるかを考えてみればおのずと明らかになる。ミッション設定のポジティブ面はいくつもあるが、いちばん大きいのが、経営者自身も社員も、意思決定の優先順位で迷ったときに立ち戻る原点になるということだろう。BIOTOPEの場合は、ミッションが決まっていない時期は、チームで議論をした末に、最終的に経営者である僕自身が意思決定をしていた。
     逆に言うと、どんなに細かいことであっても、自分が意思決定をしないと物事が進まなかった。デザインファームなので、必ずしも経済的な利益は優先ではないが、最低限稼いでいくラインは超えないといけない。すると、利益が出るプロジェクトと、利益がさほど出なくても自分たちが意義を感じるプロジェクトをどの程度のバランスでやるかを考えて、各プロジェクトのやる/やらないを判断することになる。それは毎度、経営者である僕の意思決定事項になっていた。しかし、ミッションを定めることで、僕がいちいち意思決定をしなくてもメンバーが勝手にそのバランスを判断して提案してくれるようになったのだ。
     ミッションが存在することで、意思決定の基準が明確になる。その典型的な例が、「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む。」という目的を定めたパタゴニアだ。
     2021年、パタゴニアの創業者であるイヴォン・シュイナードはオーナーシップに関するレターを発行した。そこには、「株式公開に進む(Going public)のではなく、目的に進む(Going purpose)ために、自社の株式の98% (無決議権株式)を環境NPOの Holdfast Collectiveに、残りの2%(すべての議決権付株式)をPatagonia Purpose Trustに譲渡する」とある。
     現在の資本主義の仕組みのなかでは、株式公開が環境問題の解決にはならず、それどころか自然から収奪して富を生み出すスピードを加速してしまう。それよりは自分たちの事業を通じて生まれた利益を、そのまま環境問題の解決に向かわせるガバナンスの仕組みをつくったほうがいい――これがシュイナードの結論だ。これは、意思決定基準としてのミッションを会社のガバナンスシステムに取り込んでしまう究極的な例ではないかと思う。
     ミッションが明確であることのメリットは、会社としての意思決定基準を明確にするだけではない。僕のソニー時代の同僚で、その後アマゾンに転職した友人に話を聞いたときに、ソニーとアマゾンの違いについて、こんなことを言っていたのが印象に残っている。
    「アマゾンはミッションがはっきりしているから、ミッションに合うものであれば、短期的に儲かるかどうかわからないものでも投資しようという意思決定がされやすいんだよね。僕がいた時点のソニーではミッションがはっきりしていなかったから、儲かると証明できない新規事業や新商品は即「できない」と判断されていた」
     このように、ミッションは、短期的な経済的利益が期待できない長期的なプロジェクトへの投資を正当化し、社員にチャレンジを促す効果がある。
     ミッションは、その会社の「真ん中」を規定することで、経営者の意思決定だけでなく、社員やパートナーにとっての判断の基準にもなる。ソニーは、前述の友人が退職したあと、「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす。」というパーパスを定めた。
     このおかげで社内では、世界を感動で満たす事業を提案する「感動祭り」とも言うべき動きが起こっていると聞く。ミッションは社員の日々の業務の優先順位を変えるのだ。
     また現場レベルだと、経済的利益と社会的意義のどちらを優先するかと悩むことが多いが、理念経営を長いあいだ実践している会社の経営者は、次のような言葉で社員にその判断基準を伝えているという。
    「経済的利益と社会的意義、もし迷ったら社会的意義を優先しよう」
     ミッション至上主義になってしまうと、自分たちのやることに制限がかかりすぎてしまうし、経済性を過度に低く見てしまうことにもなりやすい。「経済性も社会的意義も両方大事だ。ただ、もし迷ったら社会的意義を優先しようぜ」くらいのゆるさを持って運用することが効果的だと思う。


     さらに成長が止まったとき、もしくは成長が実感できなくなったらどうだろう。等比級数的な成長をする企業が注目を浴びる時代に、自分たちの成長が実感できないことは多い。そんな状況だと、「自分たちはなんのために仕事をしているのか?」と人は悩み始める。いま、ミッションやパーパスがより切実に求められているのは、自分たちの仕事の大義を日々感じていたいという社員が増えているからだ。
     こう書くと、なぜミッションとパーパスが一緒に語られるのかと違和感を抱く人もいるかもしれない。しかし、つくり方の点でも意味合いの点でも、ミッションとパーパスはかなり似通っている。どちらも会社が社会でどんな役割を担うか、どんな価値をもたらすか、自分の会社社会的な存在目的(Why we exist)として表せばパーパスになり、現実的に自分たちが果たし続の中心軸としてなにを置くかをひと言で言い切るものだ。どちらも、社会に対して自分たちがコミットする意思を示している。社会的意思を表すことに変わりはない。それを未来におけるける社会的役割(What we do)として表せばミッションになる。渡り鳥が目指す最終目的地(バーパス)と、群れの中心が進む方向(ミッション)が一致しているのは自然なことだ。

    ・MISSION:私たちは、社会に対しどんな役割を果たしていきたいか?
     >組織の意思を方向づける中心軸
     >組織の求心力を高めて、安定させる矢印のようなもの
    ・PURPOSE:私たちの組織の存在する目的はなにか?なにがなくなったら自分たちではなくなるか?
     >組織の「中年の危機」を抜け出すための北極星
     >その成長がなぜ必要なのか、本当に自分たちが手がけるべき事業なのかを見つめ直す指針になる


    ▪️ミッションとの出会い方――意味の片づけをしよう
    ①自分たちの活動や価値の棚卸し
    ②外部視点から見た自分たちの役割の明確化
    ③「WHY」を繰り返し、究極的な目的を見つける
    ④適度に広く、適度に具体的な中目的を設定する
    ⑤ステートメントづくり
    ⑥ステートメントと人格が合うかを考えて見直す


     一般的にパーパスは、存在意義や志などの訳で語られることが多いが、僕は社会的存在目的という訳がいちばんしっくりくると思っている。つまり、「あなたの組織はいったいなぜ、この社会に存在するのか?」という問いに対する答えだ。これだけだと少し抽象的なので、具体的な問いで考えてみよう。
    ・なにが達成できたら、自分たちは社会からいなくなってもいいのだろうか?
    ・逆に、自分たちがいなくなったら、社会はなにを失うだろうか?
     こうした問いに対する答えが、パーパスだ。成熟期を迎えた大人が自分の残りの人生の時間軸を意識し、自分の実存がどこにあるかを自問するのに似ている。
     たとえば、「地球を救うためにビジネスを営む。」というパーパスを掲げているパタゴニアは、アウトドア用品を販売するという事業を通じて、地球を救うためのビジネスの仕組みを発明することを、自社の存在意義だとしている。
     一方でテスラは、ミッションという言葉を使って「世界の持続可能エネルギーへのシフトを加速させる」ことを提唱している。電気自動車の普及と充電ステーションの拡充を通じて、より持続可能なモビリティシステムに移行していくアクセルになるというのが同社の社会的存在目的だ。


    ▪️伝わらない理念と伝わる理念の差
    「ミッションもビジョンも時間をかけてつくりました。しかし、つくるプロセスに関わっていない現場の社員に自分ごととして感じてもらうことは難しい。どうやったら、理念を自分ごととして考えてもらえるのでしょうか?」
     経営者のみならず、マネジメント的な仕事をしたことがある人なら、一度は抱える悩みだろう。ミッション、ビジョン、バリューといった理念にせよ、もっと具体的な戦略にせよ、策定するだけでもひと苦労なのだが、それが社員に伝わらないと意味がない。そして大胆な変更をするときほど、伝えるハードルは高くなる。
     僕自身、会社員として働いていたときに、理念が機能するかしないかで大きな差が生まれると実感したエピソードがある。ソニーに勤めていた頃の話だ。僕がソニーに中途入社したのはリーマンショック直後で、その頃は「make.believe」というグループのブランドメッセージが掲げられていた。「make」は思いや着想を実際の商品や体験として形にする同社の行動を、「believe」はアイデアや理想像など同社の精神を表し、「.」が精神と行動をつなぎ、想像を現実へと結びつける同社の役割を象徴するといった意味だったはずだ。しかし、ブランドメッセージのCMと、商品CMの最後のタグラインで耳にする程度では、社員の僕にはまったくピンとこなかった。
     その後、ソニーは連結最終損益が4年連続で赤字となり、危機に瀕することになる。そのなかで、新しく就任した平井一夫社長(当時)がコーポレートブランディングのプロジェクトで打ち出したのが「KANDO」という言葉だった。方向性を失ったかのように見えた会社に対して、「「KANDO」を提供する会社。それこそがソニーが目指すべき姿だ」と宣言されたとき、一社員として「おっ!?」と心が動いた。
     それまでのmake.believeというメッセージでは、最終的にこの会社がどんな体験を世の中に届けたいのかよくわからなかったし、なにより自分がそこに入っていく余地がないように思えた。おそらく、メッセージがクリエイティブに寄りすぎてしまったこともその原因なのだろう。
     つくり込まれすぎている言葉・映像は、社員が自由に解釈する余地をなくす。しかし平井社長が「KANDO」についての話をしたときには、ソニーはこれから一人ひとりにとっての「KANDO」をつくる会社に変わっていくんだと実感できた。すると、自分自身が企画するそれぞれのサービスに、どうすれば「KANDO」を取り入れられるのだろうと自然と考えるようになった。
     KANDOという言葉は、エレクトロニクス事業が主だった頃のソニーの歴史も継承しているし、エンターテイメントとエレクトロニクスの融合で成し遂げられることも指し示している。
     またKANDOはプロダクトだけではなくコンテンツに関しても使える言葉でもあるため、エンタメとエレキを融合する未来の戦略の方向性も見えてくる。それまで上層部から言われていた、小手先の儲けや勝つための手段とは違う、経営者の意思がこもっていて非常にソニーらしい言葉だと僕には感じられた。だからこそ、響いたのだと思う。
     おそらく多くの社員がKANDOを自分なりに受け止めたのだろう。その結果、社内に活気が生まれ、ソニーは再生へと向かっていった。僕がソニーグループ全体で社員発の新規事業を創出する取り組み「SONY Seed Acceleration Program (SAP)」を立ち上げたときにも、その言葉に後押ししてもらったと感じている。理念は伝わらなければ意味がないが、社員に響けば組織経営において、大きな力を生むものなのだ(なお、このKANDOは、平井さんの後を受け継いだ吉田社長によって、「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす。」というパーパスに進化し、いまでは%の社員からポジティブに受けとめられているという)。


    ▪️過去と未来についてのナラティブによって、現在の「意味づけ」が進む
    ナラティブ①私たちはどこから来たのか?
    ナラティブ②私たちはどこに向かうのか?
    ナラティブ③だから私たちはなにをはじめるのか?


    パーパスナラティブキャンバスは次の9つの質問で構成されている。
    ①事業価値――あなたの会社(事業)は、現在だれのために、どのような価値を生み出しているでしょうか?
    ②動機――あなたの会社(事業)はどのような動機から始まりましたか?
    ③価値観――あなたの組織でこだわってやってきたことはなんでしょうか?逆に、絶対にやらないとされてきたことはなんでしょうか?
    ④強み――あなたの組織が、(競合と比べて)持っている資源や強みはなんでしょうか?
    ⑤組織文化――あなたの組織で賞賛される『らしい”行動とは、どのようなものでしょうか?
    ⑥時代――あなたが生きる時代は、どのような時代からどのような時代に変わってきていると思いますか?
    ⑦未来の景色――あなたたちが将来、見ていたいワクワクする景色はなんでしょうか?いつ、どのようなことが起こっている世界でしょうか?
    ⑧未来の利害関係者――近い将来、もしあなたの組織がなくなるとしたら、だれがどのように困るでしょうか?
    ⑨存在意義――あなたの組織はなんのために存在しているのでしょうか?社会のなかでどんな役割を果たしたいですか?


    ・バーバスナラティブキャンバスをもとに、以下のようなかたちで語ってみてください。
    ①事業価値:現在、私たちは__に対して__を行うことで、__という価値を生み出しています。
    ②動機:私のたちの原点は__という課題意識であり、
    ③価値観: __や__にこだわって事業を営んできました。
    ④強み:__という強みや__という資源を活用することに加え、
    ⑤組織文化:__や__という組織文化が、事業の価値を生み出すことにつながっています。
    ⑥時代:しかし、これからの時代は__から__へと変わっていきます。
    ⑦景色:そんな未来に私たちがつくり出したいのは__という世界です。
    ⑧利害関係者:現在は__が私たちの顧客ですが、将来には__にとって不可欠な存在となっていたいです。
    ⑨存在意義:その世界で私たちが果たす役割は__です。それが私たちの存在意義です。

  • ビジョン
    バリュー
    ミッション・パーパス
    ナラティブ
    ヒストリー
    カルチャー
    エコシステム



    MVVなんて略語があるとか。ミッションビジョンバリュー。。

    どれが何の意味やら

    この本はこれらを7つのステップとして、図解し、ことばにもしている

    6つの新たな経営資源とその生態系(エコシステム)の7つのステップとして



    ビジョン──私たちは将来、どんな景色をつくり出したいか?
    バリュー──私たちがこだわりたいことはなにか?
    ミッション/パーパス──私たちはなんのために存在しているのか?
    ナラティブ──私たちの会社はどこから来て、どこに向かうのか? 

           私たちは、なぜここにいるのか?
    ヒストリー──私たちのいまをつくった原点は、どこにあったのか?
    カルチャー──私たちの会社の「らしさ」とはなんだろうか?
    エコシステム──私たちの理念を育てるためには、どんな仕組みが必要か?







    この絵が似たようなカタカナ言葉の関係を表しているように思う。

    こうしてみるとそれぞれ違う。



    そういえば、、、

    私は十年ほど前、前職で企業理念を作った。

    社長にヒアリングを何度もして、少しずつ理念を形作っていった。

    この本の理念2.0のようにみんなの思いを物語にしてつくるものではなく、

    あくまで社長の思い、社長の誓いを形にした理念1.0だった。

    でもこの企業は社長の思いの通りに成長を遂げ、ついに一兆円企業になった。



    翻って今の会社は、、、

    まさに理念1.0、それもコンサルに作らせたようなもの。

    これでは社員に響かない。2.0が必要だ。

    その思いがあってこの本を読んだ。

    ますますその意を強くした。



    そうしないと社員が離れちゃうよ。

  • 手詰まり感。

  • MVVPをナラティブに。
    組織の向かう先。星。ワクワク。中心線。どの形かをわかりやすく説明。
    具体的な話も出てくる。山本山はお茶の会社という認識は確かになかった。
    ティールの話も出てきて、生きがいの話にもなっている。
    ここまで自分という個人と組織と対話しなければいけないのかが突きつけられる。
    人はど行きたいのかが問われてるからこそ、誰とやるのかにもなってきた感じる。
    要は最後の話を借りるとエコシステム。なんで?じゃなくて組織に入った時点で当然そうだよねとなる仕組みが大事。
    結局、何も考えず疑問に思わず集中することが大事なので、その気づきの連鎖と時間軸はかなり難しいのが伝わる。

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著者プロフィール

株式会社BIOTOPE代表/チーフ・ストラテジック・デザイナー/多摩美術大学 特任准教授
東京大学法学部卒業、イリノイ工科大学デザイン研究科修了。P&Gマーケティング部で「ファブリーズ」「レノア」などのヒット商品を担当後、「ジレット」のブランドマネージャーを務める。その後、ソニーに入社。同クリエイティブセンターにて全社の新規事業創出プログラム立ち上げなどに携わる。 ソニー退社後、戦略デザインファーム「BIOTOPE」を起業。BtoC消費財のブランドデザインやハイテクR&Dのコンセプトデザイン、サービスデザインが得意領域。山本山、ぺんてる、NHKエデュケーショナル、クックパッド、NTTドコモ、東急電鉄、日本サッカー協会、ALEなど、バラエティ豊かな企業・組織のイノベーション支援を行うほか、MVV策定・実装プロジェクトについても実績多数。2021年に生活の拠点を軽井沢に移し、東京オフィスとの二拠点を往復する働き方を実践する。教育分野、地域創生分野など活動の幅を広げる。著書に『理念経営2.0 』『直感と論理をつなぐ思考法』ほか。

「2023年 『じぶん時間を生きる TRANSITION』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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