究極理論への夢: 自然界の最終法則を求めて

  • ダイヤモンド社
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  • Amazon.co.jp ・本 (370ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478830079

作品紹介・あらすじ

物理学理論は美しい。自然界を統一的に、完全に、そして美しく表現する究極の理論はあり得るのか。著者はこの物理学者の夢をわかりやすく読者に伝えようと試みる。

感想・レビュー・書評

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  • 科学の諸原理のうち、ある原理が別の原理で説明されるとき、後者から前者に向かう矢印を引くことにすると、2つの原理を結びつけるこのような矢印はたくさん存在する。これらの矢印は全部つながっていて、それらを逆向きにたどっていくと、全部の矢印が一つの共通の出発点から流れ出しているように見える。この出発点のことを、著者は究極理論と呼んでいる。著者らが完成した電弱統一理論は、その究極理論の低エネルギー領域における近似理論ということになるのだろう。仮に究極理論が発見されたとしても、その内容を理解できるとは思えないが、この本を読み終えて、いつか発見されるといいなと思った。この本を読もうと思ったのは、物理学の本なのに、生物学者のリチャード・ドーキンスが「祖先の物語」と「虹の解体」で参考文献として挙げていたから。読んでみると、「自称科学」や宗教に対する著者の態度に、ドーキンスに似たところがある。曰く、説明の矢印が一つの点に収束する以上、他の科学(特に物理学)で説明されない独自の基本法則を有する自立的な科学は存在しない(第2章「一本のチョークについて」、54~56ページ)し、究極理論の中に、人間に関心をもつ神の働きを示すものが見つかることはないだろう(第11章「神は?」、274ページ)。まったくそのとおりだと思う。第3章「還元主義への控えめな讃歌」に、「彼は、凝縮体物理学の研究への米国科学基金(NSF)の資金供給は不足していると感じた(私も同意見である)。彼は、多くの大学院生は、凝縮体物理学やそれに関連する分野に来る方が科学の上でもっと満足できる経歴をもつことができるのに、素粒子物理学の魅力に誘惑されていると感じた(私も同意見である)。」という一節がある(64ページ)。「彼」というのは、凝縮体物理学の理論家、フィリップ・アンダーソンのこと。アンダーソンが1987年に議会の委員会の公聴会で、後に超伝導超大型衝突器(SSC)プロジェクトと呼ばれることになる計画に反対したときの証言だそうだ。著者(私)がいちいち同意しているのも可笑しいが、物性理論が専門の知り合いの大学教授が、アンダーソンの証言と同じようなことをウェブサイトに書いていたことを思い出して、つい笑ってしまった。物性物理学の研究者の嘆きは、万国共通なのか。まあ確かに日本では、ノーベル物理学賞の受賞者(南部陽一郎を含めて)7名のうち、江崎玲於奈を除く6名が素粒子物理学の研究者だから、物性物理学より素粒子物理学に憧れる人が多くても不思議はないかも。

  • アメリカでの超大型衝突器の建設を契機として、社会と科学をめぐって幅広い論考が繰り広げられている。

    絶版なのは惜しいが、入り口である衝突器の話題が終わってしまっている今、出版ビジネスとしては仕方ないか。

    衝突器のことはさておいても、内容は大変に興味深い。
    究極理論そのものに関する言及は数式を用いず、言葉だけで意を尽くして、迫真に迫っている。

    量子力学に対するゆるぎない信頼や実験をめぐる泥臭いトピックも印象的だ。

    物理学者の秘めたる能力である原理、法則に対する妥当性を見極める力=審美眼について書かれた第6章 美しい理論は本書の白眉だろう。宇宙が有効な教育機械として働いていること、科学者は美しい解答を持ちそうな問題を選ぶ傾向があること、基本的な問題を研究していることの三つを挙げている。

    哲学が物理の発展のために妨げにさえなっていることを論証した部分もおもしろい。同じ根源を探求する異なる営みでありながら、哲学が人間という装置を介在させている限界ではないだろうか。

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