- Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
- / ISBN・EAN: 9784479771791
感想・レビュー・書評
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説法なのに過激ってなんだろう?と思ったら、著者は「おネエすぎるお坊さん」として知られる人だとのこと。
おネエのお坊さん!?そんな人がいるんですか。
読んでみると、たしかに口調がオネエ。
口調だけでなく、メンタルも本当に女性のようです。
「法衣を着ていない時は、そこら辺を歩いているおねえちゃんと変わらない格好をしている」そうな。
おにいちゃんではなくおねえちゃん、ですか!
それでも彼を排斥せず、僧侶として受け入れている仏教って、奥深いですね。
同性愛を排斥しているキリスト教では、オネエは牧師や司祭にはなれないでしょう。
個人の嗜好はともあれ、修行を経て阿闍梨になっただけあって、考えはしっかりとしています。
さらに女性目線から物事を捉え判断しているので、かなり身近に感じられ、説得力があります。
仏教の教えを、難しく厳しいまま伝えるのではなく、著者の口を通して語られることで、一気に柔らかく親しみやすい雰囲気を持つようになるため、彼の元に相談に訪れる人は後を絶たないのでしょう。
ひとりきりで悩みを抱えて彼の元を訪れる人は多そう。
「いくら頑張っても、自分の努力だけじゃどうにもならず、他人の力が必要だ」と言います。
人生には刺激よりも感動を求めるべきだとか。
キリスト教は、欲を持つことを「悪」と見なす、なかなか厳しい宗教ですが、仏教は、欲は人間に本来備わっているものとして、否定はしていません。
そのうえで、修行による欲からの解放を「善」としているそうです。
なんだか助かりますね。
弘法大師は間違いを犯した弟子よりも、動かなかった弟子を叱ったというエピソードや、彼の「いい薬だって飲まなければ効かない」「寒い冬があってこそ、蜜柑はさらに色づく」という言葉などが箇所箇所で紹介され、空海好きにも嬉しい内容となっています。
実際のおネエのような親身な人生相談内容かと思いきや、それに輪をかけた包容力で、美輪明宏氏の人生相談本に似ているように思えます。
(そして美輪氏よりも厳しくありません)
おそらくは、自分の性癖で、人一倍嫌な思いや苦労を重ねてきただろう著者。
それでもしっかり気持ちを整理し、消化した上で、人の悩みに答えているのは、やはり宗教に属して心を鍛えた人の精神面での強さなのでしょう。
「挫折の経験が多いほど、人間って強く慣れるのよ」という言葉に重みを感じます。
キャラクターを別にしても、きちんと仏教的思想から悩みに答えてくれており、深刻な相談に影響されることなく、軽妙な励ましを送っている文章に好感が持てました。