帝国軍人の弁明: エリート軍人の自伝・回想録を読む (筑摩選書 146)
- 筑摩書房 (2017年7月13日発売)
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感想 : 6件
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- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480016546
感想・レビュー・書評
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驚くような新事実はほとんどないが、歴史の襞に分け入るような調査と考察は読んで心地良い。
「歴史は繰り返す」とのことわざ通り、所詮は人間の行いであるから何かあった時には同じようなことを繰り返すことを考えると、昭和戦前期は「知識の宝庫」だと思う。
日本人の組織のあり方は、旧日本軍も現在の官僚組織・会社組織も全く変わっていないと思える書である。
2017年10月読了。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
高級軍人たちの回想録レビュー。参謀職とはいえ一部の暴走は日本の運命にも大きな影響を与えており、そんな彼らが何を考えていたかを検証する意義は大きく、また戦争を「生き延びた」からこそ遺せた手記である以上、なさねばならない作業でもあると思う。ただ本書で取り上げた人物は10人のみでしかも陸軍に偏っており、頁数も少ないなど、ダイジェスト版に近い印象。もっと掘り下げて欲しかった。最も印象的だったのは戦前に刑死している二・二六事件の将校の獄中手記。天皇への「諫言」や政府要人への呪詛などは、若さや死刑を前にした精神的不安を考慮したとしても、幼稚のそしりを免れない内容で、広い視野と教養を求められない純粋培養的エリート教育の欠陥部分が表れているように感じた一方、何かを糊塗するわけでもない肉声が聞こえてくる点、戦後の回想録にはない体温が伝わってくるようでもあった。