美と破壊の女優 京マチ子 (筑摩選書)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480016775

作品紹介・あらすじ

日本映画の黄金期に国民的な人気を集めた京マチ子。強烈な肉体で旧弊な道徳を破壊したかと思えば古典的で淑やかな女性を演じてみせた。魅力の全てを語り尽くす!

感想・レビュー・書評

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  • 名優・京マチ子さん逝去……95歳
    名優・京マチ子さんが心不全で逝去。
    ご冥福をお祈りします。2月に関連書が刊行されています。

  • この本の出版を待つようにして天に召された京マチ子。どんな弔辞よりも京マチ子愛に満ち満ちた本です。研究書というよりラブレターかな?でも、京マチ子が、映画史、文化史、いや戦後史で果たした役割を懇切丁寧に次の時代に残すべく論理的な構成になっています。実際、自分でも「羅生門」の女優というイメージしかありませんでした。それも顔のイメージがアイコンになる女優ではなく、メイクによってどんな役柄も演じることが出来るという彼女の顔の特徴?いや女優としての才能の現れなのだと知りました。「羅生門」でもどれが本当かわからない女の存在を演じ分けていたから、印象が定まらなかったのかも。処女と娼婦と少女に淑女、まさにリアルHow many いい顔!そして、その顔を乗せる肉体のボリューム感。って書きましたが、本書を読むまで、ボリューム感が女優を賛美するキーワードなんて知りませんでした。ボリューム、ボリューム、本書の使い方で現在、女性を評したら吹っ飛ばされそうです。ただ敗戦のコンプレックスや戦前の精神主義を払拭するには彼女の身体が必要だったのでしょう。本書の記述に導かれてYoutubeで溝口健二の「赤線地帯」を検索したら、まさに「ウチ、ビーナスや」のシーンが出て来て、その躍動感に打ち抜かれました。「ヴァンプ女優」として「グランプリ女優」として、常に顔と身体で、敗戦日本に生命力を与え、プライドを与え、そして外貨も稼ぐ、そんな女優だったのです。彼女も巡るアメリカ映画と日本映画の関係性はジョン・ダワー「敗北を抱きしめて」を思い起こさせました。そして「コメディエンヌ」へ。まさに大女優としての一生でした。

  • ようやく京マチ子さんの本格的な研究書が出たと思ったら、そのあと間もなく訃報が報道された。ともあれ、時代の経過と共に変化、進化する映画女優京マチ子の魅力とその秘密をきちんと分析した本で、楽しく興味深く読んだ。

  • 京マチ子愛が感じられた。 2年前の「スター女優の文化社会学」で原節子と京マチ子が論じられた時、京マチ子贔屓のような印象だったが(間違ってたらごめんなさい)やっぱりなと思った。
    京マチ子さんがお亡くなりになり、ご本人がこの本を手に取られたのか気になったが、確か間に合った、届けられたと知ったような気がする(間違ってたらごめんなさい)。
    お読みになるお元気はあったのだろうか。死の直前にこのような愛あふれる論考を手にすることができたら、どれほど嬉しかっただろうと思う。自分の出演作、演技をここまで丹念に論じてくれた、それもうんと若い学者さんが。私が京マチ子なら(なんじゃそりゃ)死ぬほど嬉しいと思う。晩年は第一線を退かれていたが、どのような心持ちでお過ごしになっていたのか。スター女優である(あった)ご自分をどう思っておられたのか。わからないが、この著作の完成で、女優一筋で生きた甲斐が最期にも強く感じられたと思う。

    8月の京マチ子映画祭には是非行きたい。ものすごく京マチ子さんの映画が見たくなる本であった。
    このように1冊の本がまとめられたおかげで、お亡くなりになった後何年も、私のように「もっと京マチ子の映画が見たい」と思う人が続くだろう。

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著者プロフィール

映画研究者/批評家。東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授。単著に『椎名林檎論——乱調の音楽』(文藝春秋、2022年)、『アクター・ジェンダー・イメージズ——転覆の身振り』(青土社、2021年)、『24フレームの映画学——映像表現を解体する』(晃洋書房、2021年)、『美と破壊の女優 京マチ子』(筑摩書房、2019年)、『スター女優の文化社会学——戦後日本が欲望した聖女と魔女』(作品社、2017年)、共編著に『川島雄三は二度生まれる』(水声社、2018年)、『リメイク映画の創造力』(水声社、2017年)、翻訳書にポール・アンドラ『黒澤明の羅生門——フィルムに籠めた告白と鎮魂』(新潮社、2019年)などがある。

「2023年 『彼女たちのまなざし 日本映画の女性作家』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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