徳川の幕末 (筑摩選書)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480016928

作品紹介・あらすじ

幕末維新の政局中、徳川幕府は常に大きな存在であった。それぞれの幕臣たちが、歴史のどの場面で、どのような役割を果たしたのか。綿密な考証に基づいて描く。

感想・レビュー・書評

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  • すでに幕末史については、多くの方が本を出されていますが、本書は幕末の「人材と政局」を中心に書かれた本です。
    内容がまるで毎日の日記のように詳しい。
    ここまで詳細だと、読者がよほど時代の大枠を知っていないと面白くないのではないかと心配するが、それでも飽きずに最後まで読ませるのは筆者の力量と言えると思いました。
    勝海舟の専門家が、「勝海舟が徹底して徳川家茂をほめる」と指摘するのも面白いし、海舟を「記録の細部が怪しいのも困るが、家茂をほめるための前後憧憬は見苦しい」と切り捨てるように書いているのは、もっと面白いと思いました。
    豊富な歴史資料を生かして、登場人物の内面にまで踏み込んでいるので、人物のキャラが頭に浮かびますし、本書は、研究書ではなくあくまでも一般書として面白いです。
    「政局」という言葉自体、なかなか一般的ではなく、わかりにくい。
    そもそも国家指導者の政治的常識は、一般の常識とはかけ離れているので、そのために数多くの政治書があるのだと思いますが、その理解しにくい政局を中心にこの本は人間を描いています。
    そう考えつつ読んでもなお、大政奉還以後の、徳川慶喜の行動については、やはり決断力がなかったのかと考えざるを得ないと思いました。
    そして部下に人がいない、権力機構が崩壊するときはこんなものかと嘆息しました。
    鳥羽伏見の戦闘も指揮官がいればやりようがあったのではないかとも思えました。
    今までにも数多くの幕末を題材とした本を読んできましたが、その目にも本書は魅力的に感じました。
    本書は面白いです。

  • 難解

  • 東2法経図・6F開架:210.58A/Ma89t//K

  •  ペリー来航から江戸開城まで幕末の政局史を徳川幕府側から通時的に「人材」に注目して考察している。1931年生まれの著者は、幕末維新史の研究者としては、戦前戦中にキャリアを出発した「第1世代」(遠山茂樹、井上清、小西四郎、石井孝ら)に続く、戦後歴史学全盛期に活動を始めた「第2世代」だが、すでに「第3世代」(戦後歴史学の自明性が揺らぐ1970年代以降に世に出る)までが亡くなったり引退している中で、依然健筆を奮っているのに驚かされる。「攘夷」と「開国」、「尊攘」から「討幕」という古典的図式はいかにも長老らしいが、史料の読み込みの深さはさすがで、まるでその場で見たような臨場感は若い研究者には真似できないものがある。名指しはわずかだが、至るところで後進の研究者のミスや誤読をわかる人にはわかる形でちくりと指摘しているのも興味深い。

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