妖精族のむすめ: 短篇集 (ちくま文庫 た 4-1)

  • 筑摩書房
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (370ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480021519

感想・レビュー・書評

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  •  古本屋で一目惚れして購入。大満足の読書体験となった。短めながらも内容の濃い小説集で、二、三本読むだけでも夢心地であった。同作者の他の作品もぜひ読んでみたい。

    あまりにも色々ある作品なので逆に長い感想が書きにくい…。

  • 『海を臨む峰ポルターニイズ』を読んで思ったこと―「死んだ者が戻ってこないのはそこが最後の楽園だから」


     この短編集に収録された一編『海を臨む峰ポルターニイズ』こそ、決して忘れられない作品! ページをめくる端から、アテルヴォクにならうかのごとく、のみこまれていきました。何というか、本を読むのではなく読まれていくような感覚だったな。

     ポルターニイズの峰を超えて海に向かった者は、帰ってこない。このジンクスを破ろうとした若者・アテルヴォクの挑戦を描いたもので、とても短い物語です。けれども、峰を超えていった者は彼一人にあらず。彼の冒険譚の背後から匂ってくるのは、うず高く積もった幾多の物語の気配……★

     ただし、アテルヴォクにとってのヒルナリックに匹敵する宝を持った若者は、いなかったことでしょう。美姫ヒルナリックの様子、これがまた比類なき美の描写の氾濫で、味わいどころです。

     海の誘惑に打ち勝って、再びこちら側に帰ってこられるか。幾人もの挑戦者たち、幾つものエピソードを平然とのみこんで。海は、荒々しくも優しくも歌い続けます。
     どうやら「そこには死んだ者だけが知覚できる何かがあった。」の一文に、秘密がありそうです。

     ヒルナリックの美貌は、この世に生きる者の美しさが極限まで高まったもの。これ以上の生命の輝きはきっと見られないでしょう。

     一方、海が人を幻惑する美はもっと暗くて、心をわしづかみにする巨大な力でした。嵐や水底に沈む船、ねむる財宝、人の骨とか……、ああいったものには、恐ろしくも人に夢を見させる魔法があるわけです。
     死んだ者が戻ってこないのは、そこが最後の楽園だから。生命の輝きは尊いものですが、死はもっと容赦せず魂を連れ去っていくのです★

     ヒルナリックの美が海に敗北したとは思っていません。比べようのないことだから。ただ、青年は、もっと恐ろしい相手に魅入られてしまったようなのです……。

     それにしても、読むたび、Coccoの『強く儚いものたち』を思い出す……。

  • ラブクラフトも影響。

  • トールキンやラブクラフトにも影響を与えた戯曲家ロード・ダンセイニの珠玉の短編集。
    お勧めは「五十一話集」と「サクノスを除いて破るあたわぬ堅砦」。

  • 美しい絵と退廃的な作品に惹かれました。
    今でも大好きで、考え方に影響を受けたと思います。
    アール・ヌーヴォーの傑作と言えると思います。

  • ダンセイニ入門。ケルティックな黄昏と薄命の幻想世界。現実の人間関係は耐え難いほど頑固で猥雑だが、ダンセイニの世界は目覚めが苦しくなるほど儚く脆い。
    その時間空間の感覚は神がかり的である。自らの感覚と想像力のみを糧とし、現代の似非ファンタジー小説を蹴散らす、真の幻想作家。

  • これもファンタジー傾倒時代に読みました。
    『バブルクンドの崩壊』という1篇が好きです。

  •  復刊しているよー!!(そしてもう一冊購入しました(笑)

    「ヴェレランの剣」「カルカッソンヌ」「かれはいかにして予言の告げたごとく有り得べからざる都市に至ったか」……などなど、タイトルを見ただけで想像力をかきたてられるダンセイニ珠玉の短編集。ファンタジー小説が好きだという人、書きたいという人は必携の一冊だと思っています。

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著者プロフィール

本名はエドワード・ジョン・モートン・ドラックス・プランケット(1878‐1957)で、第十八代ダンセイニ城主であることを表すダンセイニ卿の名で幻想小説、戯曲、詩、評論など多くの著作を発表した。軍人、旅行家、狩猟家、チェスの名手という多才なアイルランド貴族だった。『ペガーナの神々』をはじめとする数々の著作により、その後のファンタジイ作家たちに多大な影響を与えた。

「2015年 『ウィスキー&ジョーキンズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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