夢野久作全集 1 (ちくま文庫 ゆ 2-1)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (525ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480026712

作品紹介・あらすじ

戯れせむとや生れけむ…。奇想横溢する久作流"お伽ばなし"「白髪小僧」他初期童話作品群。

感想・レビュー・書評

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  • ちくま文庫全集第1巻は童話十九編。カッコ内は発表した署名。
    <収録作品>
    白髪小僧(杉山萠圓)
    正夢(萠圓)
    猿小僧(萠圓山人)
    三つの眼鏡(※無署名)
    青水仙、赤水仙(海若藍平)
    白椿(海若藍平)
    黒い頭(海若藍平)
    若返り薬(海若藍平)
    クチマネ(海若藍平)
    虫の生命(海若藍平)
    雪の塔(海若藍平)
    キキリツツリ(海若藍平)
    お菓子の大舞踏会(海若藍平)
    先生の眼玉に(香俱土三鳥)
    雨ふり坊主(香倶土三鳥)
    奇妙な遠眼鏡(香倶土三鳥)
    オシャベリ姫(かぐつちみどり)
    豚吉とヒョロ子(三鳥山人)
    ルルとミミ(とだけんさくぐわ)

  • 夢野久作と言えば「ドグラ・マグラ」。
    エロ・グロ・ナンセンスのイメージが強く、どの様な童話を書いたのか興味があったので読んでみた。
    必要以上に怖がらせる作品は少なかったので好印象だった。
    未完の「白髪小僧」は多重構造で難解なせいもあるが、白髪小僧が入れ替わった状態で途切れている点が気掛かりだ。
    身分を落とされた本物の白髪小僧の顛末を楽しみに読み進めていただけに残念至極としか言い様がない。
    作者本人も完結させる筈だったとしか思えない書き方をしている為、全体的な作品の評価が低い。
    最も意外だった「豚吉とヒョロ子」は、無茶先生の奇矯な性格が強烈な印象を残している。
    全集を読んでいく中で作家・夢野久作へとどう変化するのか楽しみである。

  • 夢野久作といえば怪奇小説ですが、こんな明るいのも書いてるのかと新しい発見でした。子供向けな感じの『こんな悪いことをするとこんな悪いコトになるよ』的なお話が多くて意外な印象を受けました。

  • 夢野久作が夢野久作として作家デビューする前、九州日報記者時代の童話集。童話書いていたと知らなかった…。「白髪小僧」は未完とな。どこまで長く難解に入れ子状になってもいいので完成を見たい気持ちがある。「白髪小僧」「青水仙、赤水仙」「雪の塔」「奇妙な遠眼鏡」「ルルとミミ」が好み。…と挙げてみたら兄弟姉妹の話ばっかりだ。好きなのか(いきなり自覚)。童話でも、何が嘘で誰の夢でどれが現実なのかわからないのはやはり基本だった。大変良かった。

  • 頭を必死に回転させてどうにか置いていかれないように読んでいった白髪小僧が未完だと知ったときの衝撃ときたら…。
    どれもかわいらしいお話で、特にルルとミミの幻想的な雰囲気が好きだった。

  •  いーんですわ。夢野久作さん。

     別の本で数冊読んだことがあるけど、この全集は図書館にて初めて出会ったので読みました。

     白髪小僧から。まだ「夢野久作以前」の作品。


     こんなグロテスクで奇怪な童話、子ども泣くでしょうよ。

     大人のための本ですわな。



     こういう本を読んでると、最近のノーベル賞に関して考えてしまう。


     昔の話だし、これは英訳できるかとか考えてもおそらく無理であろうと思う。

     「ノーベル賞の価値」って、現在生きる読者に満遍なく訴えかけるものなんだろうかなぁ、とかね。


     最近実家に帰り、母に「村上春樹って読んだことある?」と聞いてみた。父母はまさに村上春樹と同年代なので。


     母はよく本を読むけれど、「あえて読まずにきた。」と、私のスタンスとまったく同じことを言っていたので、私の価値観はこの人から色濃く受け継いできたのだなぁ、と思う。


     兄も、その時々話題になる本は一通り読む人だけれど、「俺はあんまり好きじゃないな。」と言っていた。

     父は経済書、弟は歴史に関するものを読むのでたぶん村上作品は門外漢。


     何の参考にもならないw



     村上春樹論をいくつか読み、アルベール・カミュに通じる「父性からの解放」的な見方をすると、それなりに意味も見え、共感もし、「ノーベル賞」へのつながりも感じる。


     でもやっぱり「多くの大衆を引き付ける」ことへの違和感は消えない。


     ダ・ヴィンチに特集が組まれ、それをパラパラっと見たのだけど、


     まったく上記内容に関係ないけれど、
     今私が、彼に質問することができるのなら、2つ聞きたいことが浮かんだ。


     「性欲と愛欲の違いって、何?」っていうのと、


     「父親にならないことと、作品の創作には、何か関係があるのか。」

     ということ。

     まぁ、これにまつわる答えなど、一生得ることはできないだろうけど。


     夢野久作は良い、ということで強引に終わり。

  • 夢野久作童話集。まあ別名義(かぐづち・みどりとか)で書かれたものだけど夢野久作らしさは出てるかと。よく言われてるように、白髪小僧の入れ子構造はドグラ・マグラに通じるものがあると思う。未完だから惜しいのか、未完だからこそいいのか。
    とりあえず夢野久作の手になる挿絵(版画)も好きです。

  • 今まで読んだものをなかったことにして、今一度全集で読み返してみる。
    頭を使わなくてもするすると入り込めて、覗いている気分になれる、児童用文学。
    一番好きな作家で、この方の文章は幻想的な色が本当に好き。
    そんな色がよく見える作品がたくさん詰まってる。

    前日に『双生児』(DVD)を観ていたので、最初の『白髪小僧』を読んで、「アイデンティティの崩壊」について書かれた本をもっと読みたくなった。

    アイデンティティが構築されず浮かんでる私は、いつ何を確信できるのかボンヤリ不安になった。

  • 夢野久作で『ドグラ・マグラ』と同じくらい印象に残っているのがこのなかの『白髪小僧』だったり。

  • 夢野久作の土台は、この頃から出来ていたんだなぁ。
    夢、ホラー趣味、厭世主義、正気と狂気、少女趣味、探偵物、入れ子形式、書簡形式、独白形式、ぽわっとした優しさ…

    文章はまだまだ稚拙。
    けど、まるでドグラ・マグラを書き上げるまでの無数の習作を、隣で見守っている気分になれる。そんな小説群。

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著者プロフィール

1889年福岡県に生まれ。1926年、雑誌『新青年』の懸賞小説に入選。九州を根拠に作品を発表する。「押絵の奇跡」が江戸川乱歩に激賞される。代表作「ドグラ・マグラ」「溢死体」「少女地獄」

「2018年 『あの極限の文学作品を美麗漫画で読む。―谷崎潤一郎『刺青』、夢野久作『溢死体』、太宰治『人間失格』』 で使われていた紹介文から引用しています。」

夢野久作の作品

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