失われた時を求めて 4 (ちくま文庫 ふ 13-4)

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (574ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480027245

感想・レビュー・書評

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  • 気づくと会話文が増え、ドレフュス事件を筆頭に社会的な色彩も増して情景や感情の描写が多かった前二篇とは少し雰囲気が変わった印象。ヴィルパリジ夫人の会合はドストエフスキー的でもあるごちゃごちゃ感がありそこから物語のうねりが出てくるのもこれまでとは違う感覚。

    新しい家での牧歌的な家庭的な始まり方とゲルマント家への物理的接近。しかしゲルマント侯爵夫人は近くて遠い。ラ・ベルマの出演する劇場でも気になるのは既にラ・ベルマではなく侯爵夫人。サンルーに会うためにドンシエールへ。サンルーを通じてのゲルマント侯爵夫人への接近の試みとドレフュス事件で二分される社会への関与。電話を通じて感じる祖母の衰えはそれと告げずに帰った家でみた年老いた祖母の姿に認められる。
    サンルーとラシェル。ヴィルパリジ夫人の家での会合。ノルポワ氏の裏表。ゲルマント夫人との距離。皆のサンルーへの失望。ユダヤ人であるブロックはドレフュスを擁護し不興を買う。スワン夫人の訪問。それによって思い出されるシャルル・モレルの訪問と幼い頃に偶然立ち入ったアドルフ叔父とオデットの関係の認識。
    サンルーの母親マルサント夫人への憐憫からラシェルとサンルーを別れさせた方がよいと考え始める。
    シャルリュス氏の謎の結社についての申出。
    祖母の体調悪化。無理やり連れ出したシャンゼリゼでの祖母の発作。

  • だんだんと「私」の天然ぶりが可笑しく思えてきた。まさかこんどはゲルマント公爵夫人に愛を感じ始めるとは。そして彼女と知己になるために友人であるサン=ルーを利用しようとは。「私」と彼との友情もまた、一方で情熱的であるがゆえにどこか不気味。

    終盤、シャルリュスが意味深な発言を始め、祖母が体調を崩し、にわかにミステリ性を増してきた。おびただしい登場人物が把握できてくるにつれ、がぜん面白くなってきた。

  • 主人公がゲルマント公爵夫人に対する恋心がどことなく妄想混じりな感じが面白い。社交界での人間関係を読むのにかなりしんどかった。
    さらに、この部ではドレフュス事件に関する考察が多く、事件の詳細を調べたりするのでかなり読み終えるのに時間がかかった。
    読むのは大変だけど、続きは気になる。

  • 天の火に焼き滅ぼされたソドムの住民の末裔である変性男子たちの最初の出現

    「女はゴモラをもち、男はソドムをもつだろう」というアルフレッド・ド・ヴェニィの詩句を巻頭にかかげ、第四編ははじまる。

    ソドムとゴモラは、旧約聖書の創世記において、アブラハムの甥であるロトの家族を除いて硫黄の火を降らせ神が滅ぼしたとされる都市。(ロトの妻は神の言葉を守らず後を振り向き塩の柱になった)
    倒錯した性の乱れが神の怒りをかったとされ、同性愛のメタファーともされる。

    プルースト自身、同性愛者であったが、第三篇までに登場したシャルリュス氏やアルベルチーヌをはじめとする登場人物たちが第四篇では、違った性的側面を見せはじめる。

    第三篇の続きから第四篇の物語は幕を開ける。

    ゲルマント大公夫人の夜会が開かれることになっていた日、留守にしていたゲルマント公爵夫妻を待ち伏せていたところ、語り手は、シャルリュス氏が元チョッキ職人のジュピアンと男色に耽ったであろう場面を目撃する。
    思ってもいなかったことに、語り手は驚愕するのだが、同性愛についてプルーストはこのように書いている。

    ---ソクラテスが倒錯者の一人であったことに注意を喚起して快楽を味わうのである。それというのも、同性愛は、一種独特の先天的な素質のために、どんな説教にも、どんな罰にもさからって生きる人間だけを存続させてきたからであって、そのような素質は、それとちがった、たとえば盗みとか、残忍性とか、不誠実とかいったほかの悪徳よりも以上に、他の人々に嫌悪される。---

    ともあれ、ソドムとゴモラ一は、この衝撃的な目撃談と、同性愛を聖書や植物などと絡めながら綴られてゆく。

    いよいよ、語り手は、社交界最高に位置するひとつのゲルマント大公のサロンデビューを果たす。

    錚々たる社交界の面々が来ており、語り手の株というか社交界的地位も、のちのちあがっていくので、やはり、当時、どのサロンに出入りしているかということは重要なことなのだろうと時代背景的に感じた。

    さて、そのサロンにも同性愛の人物を登場させたりするが、同性愛者が普遍的に存在し得るのだということに急に開眼したかのように、というか、プルーストの性的本質が堰を切ったように流れ出した気配もある。

    この第四篇の「ソドムとゴモラ」の発表は、シャルリュス氏のモデルといわれるロベール・ド・モンテスキューは、非常に傷つき、詰問するためにプルーストを訪ねたという。
    レスビアンのバーニイやコレットにも好印象は与えなかったようだ。

    ゲルマント大公夫人の夜会の後、語り手はアルベルチーヌと逢うが、アルベルチーヌを前にして、他の女性(スワンの娘ジルベルト)に手紙を書いているところを見せてみたり、相変わらず性格的に語り手のことが好きになれず個人的にひそかに困ってしまう(この語り手こそマルセル・プルーストの陰影が濃い)のだが(笑)「気持ちのいい接吻をしたいんだけどね、アルベルチーヌ」という語り手の欲望にアルベルチーヌは応える。

    前に、祖母と訪れたバルベックに語り手はまた行くのだが、その動機たるや、狙っている男爵夫人の侍女に会えるかもという理由。
    しかし、その侍女とは会えず、ついでといってはなんだが、なぜだが、アルベルチーヌの友達13人と変な関係になる。

    バルベックでは、以前と同じグランド・ホテルに滞在し、同じ部屋を使ったが、ホテル側の待遇がよくなっていて、それは、彼が社交界での地位を確立しつつあることと因果関係がありそうです。

    アルベルチーヌもバルベックにやってきて、第一篇、「スワンの恋」でスワンとオデットが出会った、ヴェルデュラン夫妻の開いているサロンに出かける。
    ヴェルデュラン夫妻はカンブルメール氏の城館のひとつであるラ・ラスプリエール荘をシーズン中借り受けているのだ。

    アルベルチーヌは、女友達のアンドレなどと同性愛ではないかという疑念に語り手は振り回されるが、証拠が得られずだらだらと過ぎていく。

    ある日、アルベルチーヌとサン・ルーを訪ねた後、汽車を待っていたら、モレルという以前叔父の遺品を持ってきた、叔父の部屋付き従僕の息子に出会う。
    このモレルという男、狡猾なタイプのようで、シェルリュス氏の若い恋人の地位におさまり、社交界にもデビューする。自分の出生のことをばらさないでほしいと語り手に媚びて頼むあたり卑しさが感じられる。

    ヴェルデュラン夫妻のサロンに第一篇で登場した面々が再登場してくるが、ヴァントゥイユのソナタを弾いていたヴェルデュラン夫人お気に入りのピアニストが亡くなった様子。

    アルベルチーヌとの交際を母にも反対されていたし、感情的にも彼女に飽きていた語り手は、決定的な絶交の機会を待つ状態に入り、母にも彼女との別れを宣告したのに、第一篇に登場するヴァントゥイユの同性愛者の娘とアルベルチーヌがとても親しく、船旅に出かける計画があることを知り、嫉妬心に震え結婚を決意する。

    プルーストは、この第四篇の完成したところで、死去。
    弟らによって、プルーストが書き残した遺稿をまとめ、残りの三篇を死後刊行した。

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