マリアの気紛れ書き (ちくま文庫 も 9-3)

著者 :
  • 筑摩書房
3.65
  • (8)
  • (8)
  • (21)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 113
感想 : 6
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (418ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480031396

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 雑誌『新潮』に連載された著者のエッセイをまとめた本です。テーマにとりあげられているのは、著者の父である森鴎外をはじめとする身近な人びととの交流や、文学者たちについての所感、政治からテレビ・タレントにいたるまで多岐にわたっています。著者の筆のおもむくままに、ひとつの話題がべつの話題を呼び起こすようなしかたで、文章がつづられています。

    みずからを「自惚れと怒りとで出来上っているようだ」と語る著者は、父の鴎外のひざのうえで守られるようにしてそだった少女時代のことや、文学的な父である室生犀星(母呂生犀川)に期待をかけられて文学の道へと進んでいったこと、あるいは吉行淳之介(葭雪俊之介)に作品をほめられたことなどを、臆面もなく語って無邪気によろこぶといったふるまいを、無邪気とはほど遠いうねうねとした文体で書き記しています。この文体でなければ読めたものではないといいたくなるような内容ですらも、読者を引き込んでいくのはさすがというしかありません。

    他方で、方々へ向けての「怒り」も率直に表明されていますが、たとえば女優の岩下志麻(伊和下志麻)の鼻であったり、美輪明宏(三輪顕宏)の演出だったりといった、著者の個人的な怒りの対象に、ことさらに絡んでみせるといったしかたでの批判になっていて、読者にユーモアを感じさせる文章になっているように感じました。

  • 『新潮』に連載された長編エッセイが元になっているが、解説によると、『ドッキリチャンネル』と重複するもの、余りにプライベートな内容の終章を割愛して文庫化されている。文庫にしては分厚くなるのがその理由だそうだが、うーん……半端に文庫化するぐらいなら、全集とは別に単行本で1冊に纏めるとか、上下巻に分けるとか、違う方法を採用しても良かったのではなかろうか。

    内容は文学から政治、著者が得意とするテレビ、芝居まで幅広いテーマが扱われている。『思いつくままに語る』というコンセプト上、話題はコロコロと変わり、時には最初の話からまったく別のところに着地していることも少なくない。が、それがまた面白い。

  • ずいぶん昔に読んだ本。悪口冴えていて、どこか浮世離れしていて不思議な一冊。扱い難そうなおばあさんだなあ…。森鴎外の娘が晩年貧しくも心豊かなお一人様ライフを送ったことはもっと知られてもいいのでは。正直、あこがれます。

  • 本文中に(中略)、(後略)とあり、また、最後もやけに尻切れトンボだな、と、思って解説を読んだら、抜粋版で全文が掲載されているわけではない事がわかりガッカリ。全文は全集に収録されているそう。勝手に抜粋をしないで欲しいと、思った。森茉莉は可愛い、愛すべき「困ったちゃん」である。

  • 気紛れっていい言葉だなぁ。

全6件中 1 - 6件を表示

著者プロフィール

1903~87年、東京生まれ。森鴎外の長女。1957年、父への憧憬を繊細な文体で描いた『父の帽子』で日本エッセイストクラブ賞受賞。著書に『恋人たちの森』(田村俊子賞)、『甘い蜜の部屋』(泉鏡花賞)等。

「2018年 『ほろ酔い天国 ごきげん文藝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

森茉莉の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×