泉鏡花集成 9 (ちくま文庫 い 34-9)

著者 :
制作 : 種村 季弘 
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 35
感想 : 2
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  • Amazon.co.jp ・本 (575ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480031792

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  • 『三枚続』『式部小路』

    「あれ緋の袴が動くんだよ」
    ヒロインがお雛様をみて叫ぶ、この場面を探して探して、(タイトルは忘れてしまい)あれはどの物語だつたかと実家に置きっぱなしだった鏡花集成を引っばり出しひっくり返し、やっと見つけたときのカンドー。
    余白に2002/2/9読了の日付が書きこんである。なんと20数年ぶりの再読で、そしてまたもや取り憑かれている。
    没落の令嬢と火の玉ヤンキーの恋模様がいじらしい。元婚約者がからみ物語は三角関係の様相を呈するけど、このお嬢様&ヤンキーの組み合わせは鏡花作品には珍しく、筆ものって二人の無邪気なやりとりが生き生きと描写されている。ヒロインの名前はお夏。大店の娘がかなわぬ恋に身をやつすところなど「お夏狂乱」のイメージが投影されているのかもしれない。

  • 「燈明之巻」、「神鷺之巻」の連作から、「開扉一妖帖」が現れて「三枚続」と「式部小路」の連作に続き、「雪柳」ときて最後を「縷紅新草」が締める。震災後の作品が多いのか、人間の生々しさが、鏡花のかねてからの『おばけ』をやや上回って感じられるけれど、どれも筆の冴えがある。絶筆となった「縷紅新草」においては人と妖(奇異のこと、おばけ)とが違和感なく調和し、むしろ読み手がきよめられる趣がある。種村季弘の解説はーーわたしはつい途中で助けにしようと読んで却って後悔したーーまた一つの捉え方であるが読んでも読まなくても差し支えないだろう。

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著者プロフィール

1873(明治6)年〜1939(昭和14)年)、小説家。石川県金沢市下新町出身。
15歳のとき、尾崎紅葉『二人比丘尼色懺悔』に衝撃を受け、17歳で師事。
1893年、京都日出新聞にてデビュー作『冠弥左衛門』を連載。
1894年、父が逝去したことで経済的援助がなくなり、文筆一本で生計を立てる決意をし、『予備兵』『義血侠血』などを執筆。1895年に『夜行巡査』と『外科室』を発表。
脚気を患いながらも精力的に執筆を続け、小説『高野聖』(1900年)、『草迷宮』(1908年)、『由縁の女』(1919年)や戯曲『夜叉ヶ池』(1913年)、『天守物語』(1917年)など、数々の名作を残す。1939年9月、癌性肺腫瘍のため逝去。

「2023年 『処方秘箋  泉 鏡花 幻妖美譚傑作集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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