無節操な日本人 (ちくま新書 250)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480058508

作品紹介・あらすじ

政策や理念の異なる政党どうしの連立・離散や、女子高性の「援助交際」と称した売春…、日本人のこの無節操ぶりはどこからくるのか?振り返れば、「あの憎き鬼畜米英」を呼号した国民が敗戦後すぐにはもう「マッカーサーの子どもを産みたい」とまでの豹変ぶりを示した。本書では、日本人は他国民のように行動原理を持つ必要なく今までやってこられた「情緒原理主義者」であると分析。その上で、今後の日本にとって重要な国家戦略のあり方を提示する。

感想・レビュー・書評

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  • 中山治2冊目。さっさと速読して終わらせるつもり。
    フォトリーディング。前書にてすでに辟易。
    起床後の高速リーディングで読了とする。

  •  日本人の無節操さについて、「情緒原理主義」という言葉を用いて論じた本。

     「情緒原理主義」というのは情緒的に納得しさえすれば何でもありという日本人に特徴的なメンタリティ。キリスト教やイスラーム教といった明確な行動原理を奉ずる海外(主に欧米)の「行動原理主義」と対立する概念である。

     情緒原理主義的な行動の例としては、戦時中、日本人は「一億総火の玉」、「鬼畜米英」と勇猛果敢な言葉を掲げたが、戦後には「一億総懺悔」、「マッカーサーの子供を産みたい」という何ともしおらしい言葉に取って代わったといったものがある。

     他にも情緒原理主義には、以下のような特徴もある。
    ・都合の悪いことや矛盾(戦前の天皇は人間であるという言説や、戦後のアメリカへの隷属)は「我が心の内なる村八分」として「見ざる言わざる聞かざる」
    ・葛藤を回避する(日本では癌患者にはっきり宣告することが少ない)
    ・縁故主義(コネ重視)、閉鎖主義、即物的思考(眼に見えないものを軽視。その代わり眼に見えるものは重視するため、「物作り」は得意分野)

     十五年戦争(日中戦争・大東亜戦争)の要因として、「海外勢力に日はないか」という情緒的恐怖があったことが指摘されている。情緒的に行われた戦争なので、「玉砕」が美化され、「弾薬や食糧の不足は大和魂で補え」といった空疎な精神論が罷り通った。「大東亜共栄圏の建設」という戦争の大義はそうした情緒原理主義と欧米の植民地拡大の理論=帝国主義のキマイラだった。

     そして戦後は「あの戦争は悲惨だった」として日本中で喪失感や侘しさという情緒に基づいた「平和への祈り」という風潮が支配的になる。ここで日本人は「呪術」に囚われやすいことが指摘され、その中には「血液型と性格の関係性」という似非科学やオウム真理教といった新興宗教といったものもある。

     今後日本人が取るべき方針として「自他への懐疑精神を持った行動原理主義者」を目指すことが挙げられている。これは、今までで最善とされる考え方に依拠するものの、それを絶対無謬とするのではなく、欠点を自覚しつつ適応戦略を立てていくというもの。キリスト教とイスラーム教の対立といったような文明と宗教の衝突に日本も加わる必要はない。

     結構面白くてタメになった内容である。

  • [ 内容 ]
    政策や理念の異なる政党どうしの連立・離散や、女子高性の「援助交際」と称した売春…、日本人のこの無節操ぶりはどこからくるのか?
    振り返れば、「あの憎き鬼畜米英」を呼号した国民が敗戦後すぐにはもう「マッカーサーの子どもを産みたい」とまでの豹変ぶりを示した。
    本書では、日本人は他国民のように行動原理を持つ必要なく今までやってこられた「情緒原理主義者」であると分析。
    その上で、今後の日本にとって重要な国家戦略のあり方を提示する。

    [ 目次 ]
    第1章 日本人は情緒原理主義者である―原理論
    第2章 あいまい思考と「わが心の内なる村八分」―認知論
    第3章 「和」と葛藤回避社会の深層―社会論
    第4章 「未熟な甘え」がジコチュー人間を生んだ―「甘え」論
    第5章 情緒原理主義はフィードバック機能が欠如している―比較文明論
    第6章 「自他への懐疑精神を伴った行動原理主義者」への道―戦略論

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    [ 参考となる書評 ]

  • なんか極端な気もしますけど、ワリと感覚に近いです。

  • 情緒原理主義と行動原理主義の対比という構図を主軸に日本の特異性を伝える本。

    これは血統などの先天的な相違による民族ごとの対比を排し「行動原理主義を持たない文明社会」のみに日本の特異性を集約した点で、「文化相対主義」が誤って適用されることなく、共通点と相違点を浮き彫りにしてくれている。
     


    日本人は、情緒に支配されているが故に絶対的な行動指針はなく、情緒がその時々の状況に応じて都合のよいとみなした行動原理を恣意的に選択する「無節操さ」を根本に
    第一章では原理論として史観を
    聖徳太子の「和」の情緒から始まり、江戸時代の「安泰」という情緒を守るための「忠義」という行動の原理の統治体制、欧米列強への恐怖という情緒からの明治維新の推進、その後の戦時下の天皇の神格化と一億総玉砕、戦後の大敗北を経てのマッカーサー、アメリカの盲目的な依存までが全て情緒に支配されている、と説く。

    これに関しては、こじ付けのような気もするし、【(特に)明治以降の日本の方針は世界情勢的に全て不可避であった】という考えにある自分にとっては、【その不可避という考えすら「情緒」に支配されているのであり行動原理主義であれば不可避であろうと理念に基づいた第3の戦略があったであろう】という考えは後付けな気がしてならないが、そう考えることすら情緒に支配されているとしたら、日本人的視点の払拭には相当な視野の構築が必要であり、自身の視野を客観視することの大切さを思い知らされた。

    次に第二章では認知論として
    現代日本にも情緒は呪術への盲目的な依存という一形態をとりその力を強めているとし、
    血液型占いや守護霊、自己啓発、オウムに代表される新興宗教ノストラダムスの予言に一喜一憂する日本は特異な呪術社会であり、過去においては大東亜戦争の「大和魂」や「マッカーサー大明神」を盲目的な呪術とし、現代では広島や長崎に原爆被害の悲惨さを伝えることで核兵器廃絶を願う「平和への祈り」を形骸化した効用のない呪術であるとしている。
    そして、その呪術が特に先鋭化しているのが自由という呪術であり、日本では自由主義の自由とは異なる、情緒の赴くまま行動しそれを妨げるものに対して「俺の自由だ」と叫ぶ“無規範の自由”が跋扈している、と 説く。
    さらに、認知的不協和に直面するにあたり受動的な解消を目論む結果、矛盾の合理化を果たすことが相適わず問題を先送りしあいまい化するのを日本人のもう1つの特性とし、自衛隊と平和憲法のダブルスタンダードなどを例示している。

    自分が感じてはいたが形式化できずに概念的であった日本人の特性を見事に言い当てていると感じた。特にタテマエとホンネの生じる社会における弁証論の未発達は当然であろうと思えた。情緒が全ての行動指針となりがちな日本人の特性はグローバル化していく世界の中で孤立していくのではないか。

    つづく3章では和と葛藤回避社会の深層を社会論として、
    4章ではジコチュー人間のメンタリティを「甘え」論を題し、まとめた上で
    5章で日対他の比較文明論を再構築し、最終章で日本の目指すべき方向性の指示という形で戦略論へとつながるのだが、割と重複が多いので中身には触れないでおこうとおもう。






    -

    ある定義の前提に
    立証されていない個人の追体験を基にした主観を用いたり
    他人の意見を否定するときにしっかりとした反証を行わず
    『〜から自明である』と論理の飛躍がみられ説明責任を果たしていないところが多々あり、やや説明責任にかけていた気がする。
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    日本人の定義
    1血統(ハードウエア)
    2言語体系や認知行動様式、文化プログラムにアイデンティティを抱く人(ソフト)

    情緒・・感情やそれに影響された思考や判断
    原理主義・・いかなる立場であれ徹底性というエートスに支配された立場
    行動原理主義・・・原理(理念)が全ての中心にありそれが情緒や行動を大きく支配する。 
    社会契約
    神の啓示
    自由 
    法の支配

    行動の原理は超越者の啓示が起源であるが故に常に正邪善悪が問われる、

    明確な行動の原理がなければ多民族を統治できない
    ・・・・インドネシアでの明確な行動の原理は「イスラム」?

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