科学技術と現代政治 (ちくま新書 252)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480058522

作品紹介・あらすじ

近代西欧科学技術で武装し、資源を求めてアジアへの侵出を謀った戦前の日本、そして民意を無視し、巨大なリスクを顧みずに推進される戦後日本の原子力政策。そこには世界の「孤児」と化してゆく、共通した無責任の政治構造が浮かび上がる。二十一世紀を迎えるにあたり、科学史的観点から、その歴史的根源を撃ち、科学技術の「環境資源論的転回」の必要性を訴え、人心を荒廃させずにはおかない競争至上の新自由主義政治経済から、生活の質を重視する社会構築への転換を迫る。

感想・レビュー・書評

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  • もともと政治にうとい私も、最近は年相応に政治について語れなければならない、社会のことをもっと真剣に考えなければいけない、とちょっとは考えるようになってきました。それで、以前なら全く見向きもしなかった政治関係の本も少しは読むようになっています。著者は私が学生時代にあこがれた「東大科哲(科学史・科学哲学)」の教授の1人です。数学史が専門で、著書も何冊か読んできましたが、難しい表現も多く少し読むのに疲れるという印象がありました。けれど、今回は興味あるテーマ「環境社会主義」について書かれているということで、すぐに買って読み始めました。本書は4つの章からなっており、それぞれどこかで講演したものがもとになっています。1つ目は女子高校で話されたもので、これは非常に読みやすく書かれています。ぜひこの章だけでもみなさんに読んでもらいたいと思います。そこで語られるメッセージは、私が常々言っていることと同じで、理科嫌いで科学技術についてはすべて人任せにしてしまうというのではなく、ある程度の知識を身につけ、自分の頭で考えて行動するということです。たとえば、遺伝子組換え食品や脳死臓器移植の問題などです。さて、2章は中国の科学史や政治についてでかなり難解です。が、3、4章は一般市民(労働者)を対象としたもので、21世紀に向けて社会がどうあるべきかについて語られます。かなり読み応えがあります。原発や環境問題については、ドイツ、デンマークなどでの取り組みを例に話が進みます。ところで、ある調査では住み良い国のベスト1はデンマークで日本は14位だということです。さらに著者は原発や環境問題についての取り組みを見ると、いわゆる先進諸国の中で日本がもっとも遅れていると言っています。特に原発については死者を出す事故を起こしていながら、なぜ路線変更ができないのかと嘆いています。経済についても自由競争でうまくいっていたのはバブルの前まで、その後の様子を見ると今のままではいけないことは分かり切っています。マクドナルドはお店に社員をおかずアルバイトのみで営業をしたりしているようです。ちょうど今の若い世代がフリーターと称して定職につかず、スキルアップしようとしないこととうまくあったようです。マニュアルはしっかり作っていても、その通りできているはずはなく、食中毒などに対する危機管理はいったいどうなっているのでしょう。それでも、価格破壊で1人勝ちの状態と言われています。さあ、われわれは21世紀どのような社会を目指せばよいのでしょう。その一つの目安になる良い見本がデンマークという国のようです。そのあたりを私も学んでいきたいと思っています。キーワードは「環境社会主義」。著者がこんなラディカル(何というか結構過激な表現が多いんです)な人だということは本書を読んで初めて知りました。

  • (2001.09.21読了)(2000.07.12購入)
    (「BOOK」データベースより)amazon
    近代西欧科学技術で武装し、資源を求めてアジアへの侵出を謀った戦前の日本、そして民意を無視し、巨大なリスクを顧みずに推進される戦後日本の原子力政策。そこには世界の「孤児」と化してゆく、共通した無責任の政治構造が浮かび上がる。二十一世紀を迎えるにあたり、科学史的観点から、その歴史的根源を撃ち、科学技術の「環境資源論的転回」の必要性を訴え、人心を荒廃させずにはおかない競争至上の新自由主義政治経済から、生活の質を重視する社会構築への転換を迫る。

    ☆関連図書(既読)
    「数学史対話」中村幸四郎・佐々木力著、弘文堂、1987.12.15
    「医学史と数学史の対話」川喜田愛郎・佐々木力著、中公新書、1992.11.25
    「生きているトロツキイ」佐々木力著、東京大学出版会、1996.02.05
    「科学論入門」佐々木力著、岩波新書、1996.08.21

  •  図書館で見つけ、気になったので読んでみた。

     正直言うと、これを読む暇があったら別の本を読んだ方が良いと思う。「環境社会主義」というのがいいたみたいだが、今更マルクス主義を持ち込んでくるのが良く分からない。
    また原発に対する批判があるが、明確な代替案がないのにリスクのみを見て否定するのはいかがなものかと…。

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著者プロフィール

1947年生まれ
東北大学理学部および同大学院で数学を学んだあと、プリンストン大学大学院でトーマス・S・クーン、マイケル・S・マホーニィらに科学史・科学哲学を学び、Ph.D.(歴史学)。
数学史家。
著作に『二十世紀数学思想 新装版』(みすず書房)などがある。

「2020年 『数学的真理の迷宮 懐疑主義との格闘』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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