子どもをナメるな: 賢い消費者をつくる教育 (ちくま新書 697)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (213ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480063977

作品紹介・あらすじ

義務教育の目的は、賢い消費者を作ること。賢い消費者とは、テストでいい点をとる人でもなく、頭の回転が早い人でもない。自分の人生を自分でデザインできる人間のことなのだ。また、社会をよくするのも、まずは各々の消費者としての教養にかかっている。「道徳よりも損得を教えよ」から各教科の効果的な教え方まで。日本の教育問題の本質を鮮やかに示し、あわせて処方箋を提示する。

感想・レビュー・書評

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  • 経済学的な視点からの消費者教育の提唱。
    一見愚かに見える行動、事態、選択、意思決定があったとしても、当事者にはそう行動するためのインセンティブがあったはずだという視点を身につけてもらうことの重要性を随所で指摘している。

    ただし、第3章の議論は、同じ「消費」に焦点を合わせているということになってはいるが、その他の章とは、さしあたり議論の焦点が異なっている。もちろん、連続してはいるが。
    まぁ、この章はとにかく内容的に分けて読むのが良いと思う。


    小中高生向けの道徳論的なアプローチを唱える議論の具体例なども注で言及しており、その点も参考になる。
    (科目化された道徳教育に、筆者は懐疑的であり、それに対する論理的かつ実際的な批判や、実効的な対案も同書では提示されている)

    全体的に2017年現在も通用しそうな話や視点、提言に満ちており、読むにたるし、なにより読みやすい。
    あと、書かれた当時と同じく安部政権なのもなんか、ある意味で時代的懸隔を感じさせない一つの要因なのかもしれない。笑

    消費者教育といっても、小中高生が基本的に念頭に置かれて本書は書かれている。しかし、大学生の教育にもほとんどそのまま通用する議論が大半だと思う。
    教育に関わる人は、教師であれ塾講師であれ大学職員であれ、ぜひ読んでみるといいと思う。

  • 自分用キーワード
    賢人(福沢諭吉は、「自分の頭で考え、自分の意思で行動できる人」と説いた) ゆとり教育(筆者は失敗した理由を「教育に関する消費者の明確なニーズが受験以外に存在しないため」と述べている。この時、仮に国が正しい食事を義務付けた場合の例を挙げている) あるある大事典問題(この事件から、消費者は購買に関する主体性が欠如しており、論理的に考えればおかしい報道を鵜呑みにした事も問題だと述べている。つまり、そのような情報を受け入れたがためにこの事件は起きた) 消費者の四つの権利(ケネディ大統領が言及) ボニス/バニスター『賢い消費者』 北欧閣僚評議会『北欧の消費者教育』 逆選択 “事件が起きたときに当事者が怒りの感情を持つことは当然だ。しかし、第三者である一般の国民は感情に支配されてはならない。なぜなら、多くの国民にとって有益なことは、「悪人」を憎み「善人」に同情することではなく、同じような事件の再発を防ぐことだからである”(善悪二分法で物事を捉えようとするマスコミに踊らされてはならない) 合法化(仮定の話として、ある種の違法行為を合法化することにより、市場ルールが適用された競争が行われ、良質な業者のみが生き残る) モラルは行き届いている(皆、ポイ捨てなどが迷惑行為と分かってやるのは、その方が得だからであり、そのインセンティブを無くせば減るのではないか) 赤ちゃんポスト(育児放棄を助長すると考えるか、子供を欲している方のサポートの一助と考えるか) サンクコスト 因果関係(貧しい国にお金を贈ることだけが援助ではなく、勉強を教えて良質な労働力を育てる必要がある。障害者を持つ母子家庭の生活が苦しいのは、母親の孤立とそれに続く離婚で身動きがとれなくなるため) 人生ゲーム(ミルトン氏が作成) 餓鬼(仏教用語)  

  • 教育とは何かを考えさせる本であった。子どもに勉強を強制させるのではなく、子供が楽しんで勉強するように仕向けることが良いことだという本はいろいろ読んだが、賢い消費者を作るという発想はこの本がはじめてであった。いくら楽しむようにしかけてもそれが、その子どもの役に立たないものなら意味はないし、頭がよくて稼げるようになり、物質的なものがどんどん手に入れられても再現なく欲望が膨らんで行く、仏教で言うところの餓鬼道に落ちていかなければならない。また宗教観についてもなるほどと思わせる考え方だった。

  • レビューした本。俺は割りと批判的。
    今になって思うが、内田樹が一番嫌うタイプではないだろうか。

  • [ 内容 ]
    義務教育の目的は、賢い消費者を作ること。
    賢い消費者とは、テストでいい点をとる人でもなく、頭の回転が早い人でもない。
    自分の人生を自分でデザインできる人間のことなのだ。
    また、社会をよくするのも、まずは各々の消費者としての教養にかかっている。
    「道徳よりも損得を教えよ」から各教科の効果的な教え方まで。
    日本の教育問題の本質を鮮やかに示し、あわせて処方箋を提示する。

    [ 目次 ]
    第1章 義務教育の役割(「教育のニーズ」…って何? 社会もよくする消費者教育)
    第2章 子どもをナメるな!(モラルより損得で 「コスト」のことを教えよう)
    第3章 すべての学科は「役に立つ」(数学で世の中がわかる 「伝達力」は国語から 社会科で平和の価値を知る 理科で自然とうまく付き合う 英語はまず聞くことから 芸術も体育も消費者教育 個人のための家庭科)
    第4章 これからの社会、これからの教育(今こそ個人尊重を 徳育より宗教教育 「恋愛」は立派な学科 「自立」とは何だろうか)

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • [読書メーター再録]功利主義によって教育再生を提案しているのかな、つまりは。考え方の一案だとは思うけど、「言うだけなら簡単」の典型かも。結構主張が強いので、脳内で反証を組み立てつつ再読するのはアリかもしれない。ちょっと理想主義的すぎるから。

  • 今必要な教育は賢い消費者をつくる教育である。なぜなら、商品の品質を高めるのは生産者ではなく消費者の厳しい目であるからだ。子どもは汚い社会など見せずに純粋に育てたい!そんな幻想など子どもには簡単に見透かされてしまう。社会を理解した上でどう生きていくか、ということこそ教育で教えなければいけないのだ。

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著者プロフィール

慶應義塾大学商学部教授
1960年生まれ。83年慶應義塾大学経済学部卒業、88年同大大学院経済学研究科博士課程単位取得退学、商学部助手に就任。91年慶應義塾大学商学部助教授、2001年同教授。同年、博士号(商学)取得。学位請求論文『日本経済の生産性分析』(日本経済新聞社)により、義塾賞受賞。06年『障害者の経済学』(東洋経済新報社)により、日経・経済図書文化賞受賞。07年9月~09年3月まで慶應義塾大学を休職、内閣府大臣官房統計委員会担当室長。09年復職、現在に至る。
この間、慶應義塾大学産業研究所長、日本相撲協会「ガバナンス整備に関する独立委員会」委員などを歴任。
主な業績
『テキストブック入門経済学』(共著)『テキストブック経済統計』(共著)『大相撲の経済学』『お寺の経済学』『障害者の経済学』『オバサンの経済学』(以上、東洋経済新報社)、『日本経済の生産性分析』(日本経済新聞社)、『こうして組織は腐敗する』(中公新書ラクレ)、『経済学ではこう考える』(慶應義塾大学出版会)ほか多数。

「2019年 『「笑い」の解剖』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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