迷走する民主主義 (ちくま新書 1176)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480068811

感想・レビュー・書評

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  • マニフェスト掲げ民主党への政権交代、この社会実験が大失敗に終わったことへの党の反省、メディアの検証もされないまま、やり過ごされようとしてる。都合の悪いものは見たくない民主党と、この社会実験を担いだメディアやオピニオンも頬かむり。各所で実害を被った国民の声の多くは、全国の有権者には未だ共有されてはいない。18歳まで選挙権が広がる訳だし、民主党の問題だけではなく、選挙の在り方、マニフェストの意義と…小泉のワンイシュー解散選挙も含め、今一度、ここの処の民主主義とその将来を熟考する機会にいい一冊だと思います。

  • 近年資本主義と民主主義に関する本が多数出ているのですが、著者によって視点やメッセージが随分違うので、はたしてみんなどういう意味で資本主義や民主主義という言葉を使っているのだろうといぶかっていました。たとえばヴォルフガング・シュトレークは「資本主義と民主主義の離婚」ということを言っています。またロバート・ライシュは資本主義の暴走、資本主義を救え、ということで資本主義の終焉論を述べていますが、他方シェアリングエコノミーの大家であるアラン・スンドララジャンは、シェアリングエコノミーの勃興は「大衆資本主義」の登場だということで、資本主義が滅ぶのではなく資本主義が高度な形に変質しつつあるという見方をしています。

    このように資本主義については識者によってどう見ているかがある程度見えてきたのに対して、民主主義についてはこれが終焉に向かっていると見るのか、変質しようとしているのか、はたまた民主主義の行き過ぎが資本主義を圧迫しているのか、など、世の中ではどう見られているのだろう、と疑問に思っているなかで本書を見つけ購入しました。

    私の疑問に答えてくれるという意味では非常に勉強になりました。本書では最初と最後に民主主義にまつわる議論の整理を俯瞰的にしてくれているので、自分の頭の整理が出来ました。また米国におけるリベラル、保守、リバタリアン、コミュニタリアンと呼ばれる人々の思想についても概要を理解することが出来ました。

    他方、本書のメインの中身になりますが、日本の戦後の民主主義がどう変化してきているのか、著者の言葉を借りれば迷走してきたかについて記載されています。特に21世紀初頭の民主党政権とその大迷走およびその後の自民党一強時代に関する記述がメインとなりますが、こちらのメインコンテンツについては正直そこまで印象には残りませんでした。具体的には、目から鱗の記述があったかというとそうではなく、ある程度想定内の記載内容だったかなという感じでした。ただ民主主義に関する論点全般については頭の整理ができましたので本書全体としては大変満足しています。

  • 民主党への政権交代失敗から、現在の民主主義が直面している危機を考える。民主主義の危機についてはいくつか理由が考えられるが、ともかく背景には生産者中心の社会から消費者中心の社会への移行がある。筆者は様々な側面から問題を捉えているが、最も強調しているのはグローバルスタンダードへの疑いだ。アメリカが標榜する無限の自由に基づく新自由主義が、果たして普遍的なものなのか、追随すべきものなのかは世界情勢をみると疑わしい。経済成長一辺倒ではなく、多様な価値観が共存する社会の方が危機に強い。リバタリアニズムの中から、他者の価値観に介入せず、それを尊重するような社会を目指す動きが出てくることを筆者は望んでいる。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/685742

  • 2度の政権交代を経て、自民党が政権に復帰しが、過去の自民党政治に戻ったとは必ずしもいえない。こうした政治の流れは、民主主義思想の視点からはどのように評価されるか。選挙で多数の支持を得たからといって、数に頼って自らの政策を強行するのは民主主義だと言えるのか、民主主義によっても奪えないような高次の規範は存在するのか。歴史的にみても、民主主義を選挙を通じた代表者の行動に限定するのは狭すぎる考え方である

    「政治の役割とはそもそも何なのかを考えると、政治家が何か目立つ振る舞いをすることではなく、主体は個人、企業、NPO、自治体などであって、これらの主体のさまざまな活動が可能になるような条件を整えることである」(P151)

  • 2016/07/18
    民主主義が、多くの試みをできるようにする枠組みを用意することができる点に意義をもつという主張に同感。
    きちんと批判的に読めたわけではないけれど、言っていることは偏りすぎず、中庸だったと思う。
    今は新自由主義が潮流として問題なのだと思った。確かに僕は新自由主義が要求してくる生き方をしたいとは思わないから、僕も当事者なのだなと思った。
    経済成長に重きをおく考え方ももう少しで終わりでいいんじゃないかな。

  • 311.7||Mo

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著者プロフィール

1959年三重県生まれ。東京大学法学部卒業、同大学院法学政治学研究科博士課程中退。筑波大学社会科学系講師などを経て東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻教授。専攻は政治・社会思想史。著書に『変貌する民主主義』『迷走する民主主義』(ともにちくま新書)、『〈政治的なもの〉の遍歴と帰結』(青土社)、『戦後「社会科学」の思想』(NHK出版)がある。

「2023年 『アナーキズム 政治思想史的考察』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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