欧州ポピュリズム (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房
3.25
  • (2)
  • (4)
  • (11)
  • (3)
  • (0)
本棚登録 : 109
感想 : 14
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480071422

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • EUの基本的な構造や、それによって引き起こされている問題点、さらにはその問題を利用して、市民を注目を引く「ポピュリズム」について説明した本。

    加盟国の多くは離脱といった極端な選択肢は支持しないものの、移民・難民の受け入れや欧州統合による格差などのEU市民の不満は近年積もりに積もり、極右政党の台頭を許す結果となった。

    マーストリヒト条約やシェンゲン協定以来、経済的な欧州統合は格段と進み、ヨーロッパ全体としての一体感を強めていったが、イギリスのEU離脱をはじめ、政治的な統合はおろか、経済的な結びつきも懸念され始め、超国家共同体の限界が感じられる。

  • EUは各国政治指導者により、代表制民主主義に伴う制約を回避して政策決定を行うことができる保護領域として構築されてきた政治システムbyピーターメア96

    当初のEECの目的地と現在のEUの目的を比べると、相当拡張している。「超国家性の妥協」の範囲から大きく逸脱している102

    EU自体が代表制民主主義の機能不全に対する「解決策」として存在?110

    難民、移民の自由はEUが扱ってるが、その規制やら取り扱いやらは各国に委ねられてる(「移動の自由と人権は大切。但し責任と権限が有るのはEUじゃなく各国」)。だからポピュリストは各国政府を攻撃する最適な材料にする。各国政府も責任の一部はEUだと押し付けられる。つまり都合良く責任の所在が曖昧122

    リベラルエリートたちは、自分たちの政策が「よい」だけでなく「必要」であり、「望ましい」だけでなく「合理的」であると示すことにより、(大衆が)抗議したり不満を表明したりすることが受け入れられる術を自分たちの社会に残さなかった。
    中欧諸国の国民はEUから「選択の余地のない民主政治」を押し付けられたと感じた125

    人権、民主主義、法の支配は、加入するときは各国を排除してEUが行うのに、加盟後は国内政治問題として扱われる(全会一致必要)126

  • 世界から遅れてる故ではなく、進んでいる故の「ガラパゴス化」。結局、進んでいようが遅れていようが、孤立している事に違いはない。
    ローマ帝国よりこのかた、統一とは程遠いヨーロッパ。常に争いを繰り返していた地域が、先の2度の大戦の末にようやくたどり着いた構想。それは拡大し続けた故の脆さを、今、露呈している。「船頭多くて、船山登る」

  •  欧州内ポピュリズムは多かれ少なかれ反EUとの前提に立ち、欧州ポピュリズム対EUという図式で描いている。
     筆者は「EUは欧州ポピュリズムの構造的な要因」と述べている。EUは大衆民主主義の欠点を補うもの、悪い言い方をすれば大衆と乖離したエリート的なものとの見方がその背景にあるようだ。その上で、EU統合を地理的にも機能的にも少し限定するとの処方箋を挙げている。
     本書の随所に、ポピュリズム対リベラル・デモクラシー(EU)との対比が出てくる。人権、法の支配や多元主義を重んじる後者が望ましいとは思う。一方で、このような価値観を共有すること自体がエリート主義の証ではないか、たとえば移民流入で被害を受けたと信じ「国民の意思=民主主義」を正面から掲げるポピュリストにこの価値観で対抗できるのか、との割りきれなさは残る。

  • ポピュリズムはEU内にある癌細胞みたいなもの。
    でも主義や思想の様なものは、外科手術をして取り除くような事は出来ないので、縮小させるしかない。

  • ■一橋大学所在情報(HERMES-catalogへのリンク)
    【書籍】
    https://opac.lib.hit-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/1001131305

  • 開発目標16:平和と公正をすべての人に
    摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB50102873

  • 本書は、ヨーロッパ地域におけるポピュリズムの興隆・現状とその矛先となっているEUの概要・問題点などを検討し、EUの構造的要因に基づく反リベラルデモクラシーにいかに対処すべきかを論じる本である。
    欧州統合の活動は国内政治から隔離されたエリート主導のものであり、一般国民は自分たちの知らない場所で勝手に取り決めされていると疎外感を感じてしまっている。ポピュリストに対処するためには、EUの権能を縮小し、それを国内政治に引渡すことで、エリートと民衆の隔たりをなくしていく努力をしていくことが肝要である。

  • 現在のヨーロッパ諸国が「単一国家」であるほうがいいのか「連合帯」であるほうがいいのか分からなかった。
    仮に「連合帯」を発展・維持していくのであれば、何か各諸国を超越した「中央政府」的な役割を担う存在が必要だとおもった。

  • 配置場所:2F新書書架
    請求記号:312.3||Sh 96
    資料ID:C0039729

全14件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

中央大学教授

「2023年 『はじめてのEU法〔第2版〕』 で使われていた紹介文から引用しています。」

庄司克宏の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×