「身体を売る彼女たち」の事情――自立と依存の性風俗 (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480071811

作品紹介・あらすじ

なぜ彼女たちはデリヘルやJKリフレで働くのか? そこまでお金が必要なのか? 一度入ると抜け出しにくいグレーな業界の生の声を集め、構造を解き明かす!

感想・レビュー・書評

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  • 日本の最下層の人たちに焦点をあてた話。
    体を売ってでしか生活できない女性達の生々しい実生活というか。
    一度貧困になると抜け出すのは容易ではないと思った。

  • ひとことでは片づけられんなー
    >福祉は「最後の砦」の機能を、性風俗に奪われている。
    世の中の政治や行政はあまりに現実の理解が浅いのではないか。

    母乳プレイ、とかあるのか、、

    P81  「ホームレス」は、特定の人間や集団を指す言葉ではなく、 「住まいのない状態」にある。同じように考えると、「風俗嬢」とは、特定の職種や集団内にいる女性を指す言葉では なく、「多重化した困難を一気に解決するために、自らの身体や感情を分単位で切り売りする(せざるをえない)状態」にあることを指す言葉だと言える。

    P85 母親がうつ病で実家に戻れない、父親が生活保護を受給しており経済的に頼ることがで きないなど、家族による助け合い(共助)が期待できないため、あるいは家族を助けるた めに、性風俗の仕事を選ぶ女性は少なくない。

    085 日本の社会福祉制度は、家族の負担を前提にして設計されていると言われている。生活保護や介護保険制度をはじめ、家族による共助だけではカバーしきれない部分を公助で補う、という発想が根底にある。
    そのため、家族のいない女性、及び何らかの事情で家族から弾かれた女性は、制度の恩 恵を受けることが難しくなる。たとえ家族があっても、家族内での助け合いがうまく機能 していない場合、経済的・精神的に苦しい状態に追い込まれがちである。

    P110 「性風俗で働く メンタルを病む」のではない
    彼女たちの抱えている障害は、必ずしも先天的なものばかりではない。
    昼の仕事における長時間労働によるストレス、上司からのパワハラやセクハラでメンタ ルを壊して精神疾患を抱えてしまい、結果として性風俗以外に働く場所がなくなってしまった、という女性もいる。
    一般的には、「性風俗で働くからメンタルを病む」と考えられているが、それは正確で はない。「メンタルを病んだ結果、性風俗で働かざるを なくなった」と る。

    P124 性風俗=労働という概念が欠落していた自分もみつけた。同時に、性風俗 のあり方について自身の考えが曖昧であることにも気づかされた。 性風俗の世界がど うあるべきかはいまだに分からない。 しかし、いつしか労働として捉えるのであれば、 労働条件が整えられてしかるべきではないか、という考えを巡らせるようになった。 労働者であれば当然に守られる権利がある。 彼女たちのそれは守られているのであろ うか。生活が立ちいかなくなっている人には、 本人が望めば生活保護受給の手続きを一緒 に進める。申請の窓口に同行することもある。 そこで、「性風俗をやめないと生活保 一護は受けられないよ」といって窓口で追い返すケースワーカーに何回か出会った。 自 立しようと性風俗で懸命に働き、それでも月数万円しか収入がない人が最後の砦とし て訪れたセーフティーネットであるべきはずの窓口で、職業を理由に追い返される。 果たしてこれに正当性はあるのであろうか。職業に貴賤はないのではないか。その前 に健康で文化的な最低限度の生活を営めていない人は、国が無差別平等に救済すると されているではないか。命をつなぐための、生活保護である。この制度はすべての 人々の最後の砦に成り得ているのであろうか。福祉は「最後の砦」の機能を、性風俗に奪われてしまっていないだろうか。


    P216 若さ、時間、人間関係、金銭感覚、風俗で働いていたという事実、ネット上で半永久的に残る画像や動画の数々。 いずれも容易に元に戻せないものばかりだ。
    女性にまつわるあらゆる行為や物質、イメージを現金化できる世界では、自らの未来す 現金化できてしまう。 人生における将来利益 「正常な金銭感覚を保ちながら、安定した社会生活を営む権利」を現在価値で換金できるわけだ。
    性風俗の仕事で得られる高収入は、クレジットカードのキャッシング枠を使い切った人 ショッピング枠の現金化に手を出すことと同様に、将来の「セカンドキャリア枠」を現金化した結果として得られるものなのかもしれない。
    限度を超えた現金化の果てに待っているのは、奈落しかない。


    P224
    社会的に丸裸にされ るよりも、仕事で裸になる方がマシ

    性風俗 には、「過去を問わない」という不文律がある。脛に傷を持つ人たちが多 (まる世界であるため、誰もが過去を問わない 問われないという作法が徹底されている。一方福祉は、利用にあたって徹底的に過去を問われる世界だ。 所得証明、扶養照会、医 師による診断書や初診日証明、家族関係や離婚歴まで、それまでの全ての視化することが要求される。
    生活保護を申請すると、資力調査や扶養照会が行われ、個人の収入や預貯金、資産、家 族関係 就労能力まで全てが丸裸にされる。
    「いびつな共助」の中で、世間から見えないように繭で守られ、過去を問われないことに慣れている彼女たちにとって、過去を徹底的に問われる世界との相性は極めて悪 社会的に丸裸にされるよりも、性風俗の仕事で物理的に裸になり続ける方がマシだと考

  • 社会課題の解決としては「正しい」とされる手法が、必ずしも正しくない。

  •  この類の調査と議論の提示もそろそろ行きついてきた感じがある中、本書では風俗産業の存在を社会が正面から受けとめることに意義を見出そうとしている。
     経済合理性から考えれば、その通り、ひとつの産業として正確に評価されて然るべきである。また、社会的にも必要性が認められるのであれば適正な評価が必要である。一方、感情的には受け入れる人もいるし受け入れない人もいる。
     外縁部にある道具のような、そんな存在におかれている風俗産業従事者。

  • 色んな事情があるんだなぁ。

  • 居場所は自分で作るもの。

  • ↓貸出状況確認はこちら↓
    https://opac2.lib.nara-wu.ac.jp/webopac/BB00260207

  • JKリフレ、デリヘルなど生産業が貧困女性の受け皿になってしまっている日本の社会問題を支援組織側から赤裸々にまとめた内容。重たいし、暗い話題。知っておくのは何かの役にたつかもしれない。この著者の本は見つけたら買ってしまう。

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著者プロフィール

坂爪真吾(さかつめ・しんご)
1981年新潟市生まれ。NPO法人風テラス理事長。東京大学文学部卒。脳性まひ・神経難病等の男性重度身体障害者に対する射精介助、風俗で働く女性のための無料の生活・法律相談窓口「風テラス」の運営など、社会的な切り口で現代の性問題の解決に取り組んでいる。著書『性風俗サバイバル』『情報生産者になってみた』(共にちくま新書)、『「許せない」がやめられない』(徳間書店)など多数。Twitter @whitehands_jp

「2022年 『ツイッターで学ぶ 「正義の教室」』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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