性風俗サバイバル ――夜の世界の緊急事態 (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480073877

作品紹介・あらすじ

デリヘル、ソープなど業態を問わず、危機に直面した性風俗。世間からは煙たがれ、客足は遠のき、公助も頼れない中、いかにしのぎ切ったのか、渾身のドキュメント。

感想・レビュー・書評

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  • 著者は、「新しい『性の公共』を作る」という理念を掲げた一般社団法人「ホワイトハンズ」の代表理事。

    本書は、著者たちの「風テラス」(風俗店で働く女性の無料生活・法律相談事業)がコロナ禍で苦境にある性風俗ワーカーから受けた相談や、対コロナのソーシャルアクションをまとめた記録だ。

    したがって、より内容に即したタイトルをつけるとしたら、『コロナ禍と性風俗――最前線からの現場報告』というところか。

    私は、著者がちくま新書で出してきた一連の〝性風俗リポート・シリーズ〟を、すべて読んでいる(本書のほかに、『性風俗のいびつな現場』『性風俗シングルマザー』『「身体を売る彼女たち」の事情』)。

    それらの著作は、優れたバランス感覚が好ましい。
    一部の風俗ライターが書いた類書にありがちな、性風俗で働く女性たちを見世物にするような煽情性がない。さりとて、一部の「性風俗にも理解がある」研究者にありがちなキレイゴトにも陥っていない。
    そうした美点は、本書にも共通している。

    コロナ禍で急増した相談事例が、具体的に紹介されていく。
    リーマンショック後の「年越し派遣村」のころ、困窮に陥っていたのはおもに男性であった。それに対し、コロナ禍では女性の窮状が目立つことが特徴だと言われる。
    本書がリポートする性風俗ワーカーの女性たちの状況も、その裏付けになっている。

    彼女たちの多くが、湯浅誠の言う〝「溜め」のない〟状況にあり、ほんの1~2ヶ月風俗で稼げないだけで、たちまち困窮に陥ってしまう。
    そのことを「自業自得だ」「計画性がないからだ」などと嗤う向きは、本書を読むとよい。女性たちがなぜ〝「溜め」のない〟状況に置かれているかがよくわかるだろう。多くのケースは、けっして自業自得ではない。

    風俗ワーカーからの相談が殺到し、野戦病院のような状況に陥った支援の現場を、本書は生々しく描き出す。

    著者は赤裸々に、冷徹に現状を見つめる。
    たとえば、著者が連帯を求めても、当の性風俗業者たちが「笛吹けど踊らず」であることが、包み隠さず書かれている。

    《性風俗事業者の文化は、端的に言えば「自己利益の最大化」である。(中略)「業界全体の利益」という視点や発想そのものがない。今回のコロナ禍においても、これだけ業界が追い詰められても、全国のソープランドやデリヘルの事業者が協力し合い、団結して署名キャンペーンやロビイングを行うようなことは、一切起こらなかった。全国に三万を超える事業者がいるにもかかわらず、だ。
     そして大半の事業者は、差別や人権の問題については、何の関心も持っていない。むしろ「自分たちの仕事は、差別されて当然」と考えている人も多い。》138~139ページ

    社会を変えようとするソーシャルアクションが、性風俗分野ではいかに難しく、一筋縄ではいかないかがよくわかる。
    そんな苦い読後感にこそ、むしろ本書の価値があるのだろう。

  • ただでさえ危うい働き方をしている人たちが、コロナによって更なる窮地に立たされてしまったことは想像に難くない。そのような人たちを支援する著者らの活動がまとまっていた。
    こうした活動に熱心な著者らには本当に頭が上がらないのだが、著者の本を何冊か読んだ身としては、今回の内容は著者の活動にフォーカスしており、風俗で働いている人の苦しさがあまり伝わって来なかった。著者らの努力は賞賛されるべきものであろうが、そこで終わってしまっていて少し物足りない印象であった。

  • あーホントのサバイバル事情の本か。

  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB50237630

  • コロナの性風俗で働く女性への影響について、興味があって購入した。
    著者の彼女たちへの支援内容というか、自慢話?がつらつらと書かれているだけで、活動に対して特に共感、賛同は出来るものではなかった。と言うのも、著者達の問題意識が、夜の女性を救いたい、と言う事であるが、彼女達の苦労や不幸は私含む一般市民とは殆ど関係ないからだ。
    彼女達を救う事が、社会全体、一般市民にどのように資するのか、どんな関係があるのか、そこを深掘りできれば、共感できてのかもしれない。
    良い暇つぶし、日本語の勉強にはなった。

  • 風俗業会が新型コロナで大きな打撃を受けた。
    業界の遵法意識など問題点はあろうが、少なくとも納税の義務や勤労の義務を果たしている市民が、職業によって差別を受けるのは是正されるべきだと思う。

  • どっちかというと野次馬的に手に取ったもの。でも、ちくま新書というからには、俗ぽさは僅少で、大方固い内容なんだろうな、とは思いつつ。実際読んでみて、やはりいたって真面目な論考。もちろん、そういうのを求めていたから問題なし。密だからこそ成り立つ部分が大きい業界だけに、コロナによるダメージは想像に難くない。確かに通常時においては、公助と相性の良くない世界かもしれないけど、非常時には四の五の言ってる場合じゃない。ニッチな部分に、能動的に目を向けられる視点を持ちたい。改めてそう思わされる一冊。

  • 国立女性教育会館 女性教育情報センターOPACへ→https://winet2.nwec.go.jp/bunken/opac_link/bibid/BB11494760

  • 風俗で働く人が、コロナ禍で虐げられている

  • 東2法経図・6F開架:B1/7/1562/K

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著者プロフィール

坂爪真吾(さかつめ・しんご)
1981年新潟市生まれ。NPO法人風テラス理事長。東京大学文学部卒。脳性まひ・神経難病等の男性重度身体障害者に対する射精介助、風俗で働く女性のための無料の生活・法律相談窓口「風テラス」の運営など、社会的な切り口で現代の性問題の解決に取り組んでいる。著書『性風俗サバイバル』『情報生産者になってみた』(共にちくま新書)、『「許せない」がやめられない』(徳間書店)など多数。Twitter @whitehands_jp

「2022年 『ツイッターで学ぶ 「正義の教室」』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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