夫婦別姓 ――家族と多様性の各国事情 (ちくま新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480074409

作品紹介・あらすじ

「選べない」唯一の国、日本。別姓が可能または原則の各国はどう定めている? 家族の絆は? 制度の必要性と課題を現実的・体系的に考えるための必読書。

感想・レビュー・書評

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  • 書評:『夫婦別姓-家族と多様性の各国事情』 – オルタナ(2021年12月14日)
    https://www.alterna.co.jp/44004/

    書評 ― 夫婦別姓―家族と多様性の各国事情 | 国際商業オンライン | 化粧品日用品業界の国内・海外ニュース(『国際商業』2022年01月号掲載)
    https://kokusaishogyo-online.jp/2021/12/68841

    栗田路子さんに聞いた:海外から見た日本の結婚と姓の問題 | マガジン9
    https://maga9.jp/220309-1/

    筑摩書房 夫婦別姓 ─家族と多様性の各国事情 / 栗田 路子 著, 冨久岡 ナヲ 著, プラド 夏樹 著, 田口 理穂 著, 片瀬ケイ 著, 斎藤 淳子 著, 伊東 順子 著
    https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480074409/

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      【特別寄稿】昨日までの「日常」を破壊された欧州(栗田路子) | マガジン9
      https://maga9.jp/220309-4/
      【特別寄稿】昨日までの「日常」を破壊された欧州(栗田路子) | マガジン9
      https://maga9.jp/220309-4/
      2022/03/09
  • 私は夫婦別姓賛成派だけど、日本は家族の絆が失われるという抽象的理由でなかなか別姓が進まない。
    海外で別姓を導入している国々の実情をこの本で学ぶ事で、夫婦別姓の問題点や必要性を理解する事ができ、大変勉強になった。
    まずやはり別姓を導入しても家族の絆は失われる事はないと実感。
    ただ問題点としては子供の姓をどうするか。
    父にするか母にするか。連結姓という制度を導入するのもありだとは思うけど、代が経る毎にどんどん連結していけば姓が長くなってしまう問題が生じてくる。
    また子供と姓が違う場合に、親子だと証明するのが難しい事があるので、そういう場合の対応をどうするかというところが問題かな。
    後は制度が導入されても、日本の様な同調圧力の強い国だと結局は親や周りからの圧力で同姓を選択するというパターンも出てきそう。
    実際キリスト教の影響の強い国々では、同姓を選択している夫婦が多いようだし。
    ただあくまでも選択制ではあるし、通称使用で現状困っている方にとっては制度があるのとないのでは大違いだとは思うので、現実的にもっと議論が進んでほしいと願う。

  • 2010年代に、夫婦別姓が選択できない国は日本だけになった。
    2015年最高裁で合憲判断が下された。
    その後もさまざまな論点で訴訟が提起されるが、家裁申し立ては棄却、地裁提訴も棄却となり、司法による解決はなされていない。

    与党自民党の中でも、緩やかな別姓を認容する意見が出ている。
    各新聞社等の調査によっても、やりたい人はやればいい、という意見があるにも関わらず、司法、立法の場では救われていないのが現状である。
    一部強権派が家族の繋がりだとか日本の伝統ということを前面に出し、反対している。

    本書はイギリス、フランス、ドイツ、ベルギー、アメリカ、中国、韓国の7カ国に居住しているジャーナリストたちが、外国から見た日本の制度や、(姓を変えることの多い)女性の立場から提言する。

    イギリスでは名前を変えることは簡単だという。
    それは好ましくないのでは、と思うが、その社会での「普通」は他者からは奇異に映るものなのかもしれない。
    イギリスの事例は、夫婦別姓反対の立場から見た「信じられない」「受け入れられない」といった気持ちを体験できた。
    中韓については、妻は別の家の人(つまり仲間ではない)というところから出発している。
    それは妻の立場が非常に弱いことを表していたのだろう。
    しかし、それが時代が変わることで女性の自立に役立つという面が出てきた。

    私は日本の制度というものは諸外国に比べ遜色ない部分、凌駕する部分もたくさんあると思っている。
    民法は2020年に大きく変わったし、家族法だって変わってきている。
    だから、どうしてこの部分だけ話が進まないのかわからない。
    誰かの家を破壊するつもりもない、私の家を壊したくもない。
    ただ単純に、「私」が「私」でいられるように、ただ、それだけなのだ。
    議論は何十年も重ねられてきた。
    今こそ、変わる時だ。

  • 2021年の衆議院選挙のときに争点のひとつとなった「選択的夫婦別姓」。結果としては、すぐに夫婦別姓を推進するほどの票差ではなく、まだまだ道のりは遠いなと感じました。

    私が20代のころは「あんたが結婚するころには夫婦別姓が選べるようになってる」と言われたのですが、結婚もしなかったけど、夫婦別姓も実現してないですね。

    当時の同級生たちは次々と結婚して名前が変わり、すでに結婚後の苗字のほうが長くなっている人も。彼女たちに葛藤があったのかなかったのかは知りませんが、年賀状とかくるたびに旧姓も書いてくれないと誰が誰だかすぐにはわかんないなと思っておりました。

    そんななかで一人、イギリス人と結婚した友人は私と同じ苗字だったんですが、チアキ・ヒラノ・カンバーバッチみたいな名前になっていて(適当なネーミングですみません)、旧姓を捨てることなく、新しい名前というのが新鮮でした。

    1980年代ごろから2000年代にかけて各国とも法律を変更しており、今では夫婦同姓を法律で規定しているのはなんと日本だけ。
    本書では、イギリス、アメリカ、フランス、ベルギー、ドイツ、中国、韓国とそれぞれの国で暮らすライターたちが各国の現状をレポートしています。

    結婚しようがしまいが名前が変わることのない中国、韓国、ベルギー。結婚と関係なく好きなように名前を変更できるイギリス。別姓、連結姓のほか、好きな苗字を作ってしまえるアメリカ。

    男尊女卑ゆえに母や娘は父系の姓を継ぐことがなく、結果的に別姓であった中国。宗教的な理由などで男性側の姓を名乗る率がまだまだ高い国など、歴史的な経緯もさまざま。
    そもそも父系側の姓を男子が継ぐのも、相続されるべき土地や財産があり、相続によって分散させないために名前ごと受け継がれた時代の話。

    離婚や再婚などで父親、母親、子供、全員の姓が違うなんていうのが当たり前の国もあったり。「同じ苗字=家族の絆」なんて考えがいかにばからしいか。

    最終章の座談会では、経済、法律、政治の分野から選択的夫婦別姓の実現について検証しているんですが、なかなか進まない現状が見えてきて、まだそんなことやってるのかという気分になります。


    以下、引用

    夫婦同姓が法律で今も強制されているのは日本のみ

    英国では姓も下の名も自由に変えることができる。

    重婚や偽装婚を防ぐ目的で結婚の意思を28日間、公示しなくてはならない。伝統的には新聞の告知欄や登記所の掲示板が使われる。公示期間に誰も異議を唱えなければ、資格を持つ聖職者か公証人の前で、二人の証人の立ち会いのもとに当事者が婚姻を宣言する。

    俳優のベネディクト・カンバーバッチが結婚した時には、まず古めかしい婚約の告知が新聞に掲載され冗談ではと騒がれた。

    ・併記姓または連結姓
    「ダブル・バレル」とも呼ばれ、妻と夫の姓を並べる。大概は二つの姓をハイフンでつなぐ。
    ・合成姓(メッシング)
    二つの姓を混ぜ合わせて新たな姓を作る。
    ・夫婦同姓にし、さらに旧姓をミドルネームに。
    ・創作姓
    旧姓とはまったく関係のない姓を選んだり、作ったりする。

    結婚するまでは父親に、結婚してからは夫に属するという家父長制が当然の慣習として続き、200年くらい前まで女性は男性に隷属する存在というのが常識だった。

    キリスト教に基づく教会の結婚式では、今も新婦が父親だけに伴われてバージンロード(英語ではwedding aisle )を歩き、娘を新郎に引き渡す(give away=与える)セレモニーが行われている。

    大切に育てた娘が父親の手を離れる感動の瞬間として続いているこのセレモニーも、実はもともと女性の「所有権の移管」を表す儀式だったことはあまり知られていない。

    カヴァチャーの登場で、妻は結婚すると同時に旧姓も下の名もろともすべて消されて「ミセス+夫のフルネーム」で呼ばれることになった。

    ジェーン・オースティンが1811年に出版した小説『分別と多感』に登場するダッシュウッド家の息子ジョンの妻の名はミセス・ジョン・ダッシュウッド。ジョンの妻のファーストネームはファニーなのだがそれは家庭内でしか使われず、結婚前の姓を知るのは身内だけなのだ。

    諸説あるが、家父長制の起源は先史時代、女性たちは、その出産能力ゆえに子孫の存続のために必要な貴重な「資源」としてモノ化され、囲いこまれたという推定がある。男性たちは、異なる親族間で自分の姉妹や娘を交換し、力を合わせて女性たちを監視することで、男性同士の強力な絆である家父長制を築いた。

    哲学者プラトンは家父長制を正当化するかのように、「完全な人間」である男性に対して、女性を「欠陥をもって生まれた未熟な存在」と定義づけた。

    オランプ・ド・グージュ
    「女性にもギロチン処刑を受ける義務があるならば、政治に参加する権利も与えられるべき」

    20世紀を代表する学者カップルであるジャン・ポール・サルトルとシモーヌ・ド・ボーヴォワールは、気が向いた時は同居し、互いに他のパートナーとの一時的恋愛も認め合い、「家事は時間の無駄」と公言して外食し、子どもを持たないことを選ぶという新しい関係を堂々とするようになる。

    日本の夫婦同姓の義務はもともとドイツから輸入されたものであるが、お膝元のドイツでは時代の変化を受けてとっくに撤廃している。

    社会学者の上野千鶴子氏の1989年の論考によると、夫婦同姓の条件の一つは「結婚が生涯でただ一回で、かつ不可逆的な地位の移行だと考えられていること」だという。結婚は人生に一度きりのできごとで、破綻や再婚を前提としていない。だから姓を変えるという大それたことを、女性に強いるのである。

    ベルギーでは、唯一の法的に認められた『姓』は、出生届けに記載されたものである。
    ベルギーの法の下では、『婚姻』は配偶者の『姓』になんら影響を与えるものではない。

    カトリックでは、「結婚(mariage =マリアージュ)」は教会が授ける七つの秘跡(サクラメント)の一つとされ、「神が結び合わせてくださったものを、人は離してはならない」として離婚は認められていない。

    イタリア、ポルトガル、スペイン、フランスなどが離婚を合法化したのも70年代以降のこと。
    過失なき離婚を可能にしたり、前提となる別格条件を緩和したりして離婚のハードルが低くなったのは、2000年代になってから。
    (ベルギー2007年、スペインとフランスが2005年、ポルトガル2008年、イタリア2014年)

    「空の半分は女性が支える」
    中国人なら誰でも知るキャッチフレーズ

    韓国人の姓は7世紀後半、中国の影響を受けて使用が始まったこともあり、漢字一文字の場合が多い。また歴史的な要因もあって姓の種類は他国に比べても少なく、例えば金(キム)、李(イ)、朴(パク)、崔(チエ)、鄭(チヨン)という上位五つの姓だけで人口の半数を突破する。

    本貫(ポングアン)
    韓国人を父系ルーツ(始祖の出身地)によって分類するもの
    同じキム(金)という姓の人でも、本貫が異なれば同じ一族(ファミリー)とはみなされない。韓国の本貫でもっとも多いのは、始祖を加羅国の首露王とする「金海金氏」の一族。全国で約700万人近く、人口の約17%にあたる。
    この集団内部では、長らく結婚が法的に禁止されてきた。
    韓国の人たちは初対面で姓が同じだと本貫まで尋ねる習慣があるが、男女にとってはこれはとても重要なことだった。それによって結婚できない関係かどうか知ることができるからだ。
    「同姓同本冠婚制」は1997年に違憲判決が出て、その後に廃棄。

    韓流スターのコン・ユも両親の姓を合体したものであり、映画『82年生まれ、キム・ジヨン』の夫役に抜擢された時には、「彼なら意識が高いから」とキャスティングを喜ぶ声があった。

  • 夫婦同性を強要する国は、今や日本だけとなってしまったが、世界各国は家族観や氏制度がどのように捉えらているのか?主要国ごとにまとめられている。

    別姓にも、(絶対に)別姓だったり、創作姓だったり、色んなタイプがあるのだなあと思った。また子どもの名字も考えなければならない点など、制度を変えるとなると考慮する必要があるポイントもたくさんある。

    伝統を継承するといったように曖昧な結論で終わらせるのではなく、時代が進んだ今、多様化する家族観に対して名字はどのように適応していくべきなのか考えていかなければならない。

  • “日本では若い女性、また「物申さない」 控えめな女性が好まれていると、里帰りするたびに実感する。科学番組でもドイツなら女性の科学者や司会者がばりばり発言しており、日本のように若い女性が年配男性の解説に「えー、そうなんですか」と相槌を打つだけという光景はほとんど見ない。そのような光景があちこちで繰り返されることで、それが当然という刷り込み が社会全体に広まる。”(p.121)


    “たしかに、「なんでも二択」のような設定は、今の社会には合わないだろう。「姓」にも「性」にも、もっと自由があっていい。現実が牽引する自由に、法制度が追いつけていない。”(p.264)

  • 結婚と姓―各国の事情:
    英国 すべての人に「生きたい名前で生きる自由」を
    フランス多様なカップルの在り方が少子化に終止符
    ドイツ 別姓が開く女性活躍の道
    ベルギー 家族の姓はバラバラが「普通」
    米国 慣習を破り姓を選ぶ自由を実現
    中国 姓は孤立から独立へ、モザイク模様の大国
    韓国 戸籍制度を破棄した、絶対的夫婦別姓の国)
    「選べる」社会の実現に向けて:
    日本 別姓がなぜ必要なのか、どうしたら実現できるか

  • 欧米と東アジアの計7カ国における、婚姻時の姓に関する多様な選択肢の事例を紹介する一冊です。

    一言で「夫婦別姓ができる」と言っても、そこに至るまでの歴史的経緯や実際の細かな制度設計は各国で少しずつ異なり、選択肢も実は同姓・別姓だけに限りません。

    また、制度を利用する市民側の名前や結婚に対する価値観も多様です。

    本書はそうした様々な、子供も含めた家族のあり方を著者たち自身の経験談も交えて論じ、夫婦同姓を法律で強制する最後の国となってしまった日本の社会に対してより良い選択的夫婦別姓の設計に向けた議論を促します。

    姓の実態について多面的に知る、最初の一歩にオススメの手軽な新書。

    なお巻末には、選択的夫婦別姓の日本への導入を支持する有識者による座談会が収録されています。

  • これは各国(イギリス、フランス、ドイツ、ベルギー、アメリカ、中国、韓国)の事情や理想や現実をわりと細かく説明していて良書だと思う。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/771253

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著者プロフィール

ベルギー在住ライター・ジャーナリスト。人権、医療、環境、EU事情などで発信。共著書『コロナ対策 各国リーダーたちの通信簿』(光文社新書)の筆頭著者。

「2021年 『夫婦別姓 家族と多様性の各国事情』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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