- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480074812
作品紹介・あらすじ
百の代表句を選りすぐり、著者一流の独特な視点と軽妙な文体による「超訳」で芭蕉の知られざる実像に迫り、虚実が分かちがたく絡み合う芭蕉の俳句の魅力を探る。
感想・レビュー・書評
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姫路大学附属図書館の蔵書を確認する→https://library.koutoku.ac.jp/opac/opac_link/bibid/BB00003652
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芭蕉と言えば、わび・さびに象徴される美意識の人物を想像してしまうが、この本で描かれているのは野心満々で男色家で幕府の隠密を務めるという意外な一面だ。その真否は分からないが、新しい目で芭蕉の俳句を見直すきっかけになった。「芭蕉野分けして盥に雨を聞夜哉」「道のべの木槿は馬にくはれけり」「海くれて鴨の聲ほのかに白し」「命二ツの中に活たるさくらかな」「旅人と我名よばれん初しぐれ」「冬の日や馬上に氷る影法師」「蓑虫の音を聞に来よ草の庵」「蛸壷やはかなき夢を夏の月」「田一枚植てたちさる柳かな」「波の間や小貝にまじる萩の塵」「うき我をさびしがらせよかんこ鳥」「年々や猿に着せたる猿の面」「此道や行人なしに秋の暮」
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芭蕉といえば旅をしながら俳句を詠んだ人、くらいの印象しかありませんでしたが、本書では隠密や衆道としての横顔も語られ、教科書に載ってる偉い人にすぎなかった薄っぺらな芭蕉像が大きく変わりました。
超有名な「古池や…」の解説では、中3の嵐山少年がこの句の蛙は何匹か?と、国語教師に質問したり、はたまた大人になってから、蛙が池に飛びこむ音を聞くためにこの句の句碑が立つ庭園で一日ねばってみたりと、そんな発想豊かで軽妙な文体で語られるエピソードたちの間に、スパッと切りこむ鋭い考察。絶妙なバランスです。
ずいぶん前に三島の『美しい星』を読んだとき、文庫の中に宇宙があああ!と、のけぞりましたが俳句はたったの17文字。間口は狭くてもその中には広大な宇宙を詠みこむことができ、それは芭蕉の内面の宇宙と呼応している…頭がくらくらする。きっと、その道を極めた人だけがたどりつける境地なのでしょう。
掲載された百句すべてを現場検証し、解説した労作、俳句ど素人の私でもとても興味深く楽しく読めました。
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東2法経図・6F開架:B1/7/1681/K