- Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480082473
作品紹介・あらすじ
プリズメン(さまざまなプリズム)とは、未来からの微弱な光を感じとる鋭敏な精神の探査器を暗示するのか。エッセイという形式を武器に、現実の核心に迫る独自の哲学的思索を展開したアドルノの最初の自撰論集。「アウシュヴィッツ以後、詩を書くことは野蛮である」という命題を含む「文化批判と社会」に始まり、シェーンベルク、ベンヤミン、カフカへと深まる12のエッセイは、文化的しつらえによる権力の大衆威嚇、それに対する知識人の石のような沈黙のもと、果てしなく進行する「絶対的物象化」の時代の文化現象を鋭く追求する。本邦初訳の「オルダス・ハックスリーとユートピア」「ゲオルゲとホーフマンスタール」を加え、完全新訳で贈る。
感想・レビュー・書評
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率直にいうとムズイ。
初のアドルノとはいえ、彼の豊富な語彙と息の長い文体、複雑交差した論の立て方に苦戦を強いられました。
カフカ論は特に良かった。ベンヤミンのエッセイとあわせて読むとさらに面白いかも。何よりもカフカを読む際もっと楽しめる。
訳者の方も言ってるけど、アドルノへのベンヤミンの広汎な影響力は甚大で、まさに師弟の関係に近い。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
アドルノの文学論は凄いです。このカフカ論を読むと身震いします。
あと、有名な「アウシュビッツ以後、詩を書くことは野蛮である」という言葉が出てくる本です。
この言葉に関しては、実は「否定弁証法」でも反省的に述べられています。絶望感は相変わらずですが、いくらか前掲書では肯定的な側面もあり、どうしてこういう語句が語られたのかを理解するのに役立つと思います。アドルノ的文化批判の真髄というのは晦渋で分かりづらいので、その一文を知ればアドルノ理解の助けになると思います。
アドルノという人は、我々がどっぷり浸かっているものをあれこれ言う人なのですが、それを責任を担う個人としてあえて言うことに意味があったと思っています。彼の発言に耳を傾けていると、そんなことを言ったら、我々は生きられない!なんて憤慨する人もいると思いますが、なぜそういう風に憤慨するのかを考えさせることが、彼の目的でもあったと思います。
なので、毛嫌いせずに不快なところは不快なものとして、とにかく考えながら読んでみると良いかもしれません。
ところで、全体的な印象としては、批判されている当の人たちがもはや過去のものになっていて、分からない部分がたくさんあるという印象。とにかく今はしっかり読んでみたいと思っています。