- Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480089076
作品紹介・あらすじ
絵画は美しいのみならず、描かれた時代の思想・宗教観を密かに映し出している。ミケランジェロのシスティーナ礼拝堂の天井画、レオナルド・ダ・ヴィンチの『モナ・リザ』、デューラーの『メレンコリア』、ジョルジョーネの『テンペスタ(嵐)』。世界の名画のなかでもとくに謎に満ちたこれらの作品から、絵画の隠された謎をさぐる。画家が本当に描きたかったのは何か、何に託してその意図を伝えたか?美術研究の成果を存分に駆使しながら、絵画に描かれた思想や意味を鮮やかに読み解くスリリングで楽しい美術史入門。
感想・レビュー・書評
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終始ライトな語り口で、だけど押さえるべきところはきちんと押さえて、まさにベスト・オブ・美術史入門。作者の絵画への解釈はどれも興味深かったが、とくに《テンペスタ(嵐)》は必見必読。ヨーロッパを語る上で「火・水・空気・土」はどうやら欠かせない要素らしい。美術をもっと知りたくなる、学びたくなる一冊。
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画には奥行きが生じるから、観る者は非言語的で見えない部分を解釈しなければならない。そこで著者の「ダ・ヴィンチは無神論者」という結論から始まって通説を跳ねのけていく犀利な論述は斜光となり、朧な細部に射す光に照らされた光景がイメージを与え、説明図を携えて、絵の意味を解き明かすことができる。一枚の絵を近景で観過ぎず「人類の総合的な歴史」の流れを遠望した時に、どんな世界図が立ち現われて、どう関連づけられるか、図像を解釈するのは至福の時間。自力で行う時のために、鑑賞の成果を資産として蓄えられている充足感も溢れた。
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本書では、西欧を代表する芸術家たち(ミケランジェロ、ダヴィンチ、ボッティチェリやデューラーなど)の傑作について、描かれた時代の歴史や思想的背景、そして画家の人間に対する思いが綴られています。著者は既に鬼籍に入っていますが、美術史家としての博識はもちろんのこと、芸術家がどういう思いで作品を描いたか、についての洞察に引き付けられました。
ダヴィンチの「岩窟の聖母」と「聖アンナと聖母子」について、前者の画中でキリストのそばに描かれたスミレの表すもの、そして後者で子羊と戯れるキリストを引き寄せようとする聖母の思いについての著者の解釈には心が震える思いがしました。
絵画に対峙するときに、その世界観をどう読むか。指針を与えてくれる素晴らしい本でした。 -
作品から思想と意味を読み取る過程が刺激的。そして、優れた芸術ほど、その読み取る作業は万人に開かれている。本書ではミケランジェロ、ダ・ヴィンチ、デューラー、ジョルジョーネの作品だけだが、歴史を見る目が変わる。社会、象徴、表現、思想は汲めども尽きない学問の豊かな泉だ。
・自然、宇宙と人体との相関をアントロポモルフィズムという。
・16世紀にメディチが美術学校、アカデミーをつくった。
・アルプスをこえて南に行くことは、単なる空間移動ではなく、文明の源に帰ること。 -
2023.12.25 一つ一つの絵画作品の奥深さを感じることができた。なかなか深〜いお話ですごく勉強になった。
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宗教のことも知れる
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ある時代以前(18世紀以前)の絵画はその時代の重要なメディアであり、ある思想や意味を含んで書いていることが多いそうです。その込められた意味を理解することの面白さを説いていました。
レオナルド.ダ.ヴィンチの章が印象的でした。「岩窟の聖母」に書かれたスミレは謙遜の花、イエスの最大の美徳は謙遜であった、それを表現している、いうのは知りませんでした。イエスは神の子でありながら、誰よりも低く地面に座っている、これこそ究極の謙遜を表現しているそうです。ちなみに最大の悪徳は傲慢だそうです。
どんな局面でも傲慢にならず謙虚でいよう、これは太古から変わらぬ教えなのだ、と感じることができました。
作者は、「人間は言語のみならずイメージにより言葉で表せないような意味深いものを表現する、」と言っていました。この本のおかげでその表現を少し理解でき、絵を鑑賞する時のイメージが膨らみそうです。
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文庫版はモノクロなので、できればスマホか何かで絵画の写真をググりながら読みたい本。
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本書はイコノロジー(図像解釈学)の入門書。もっとも、入門書とはいっても、従来の解釈にとどまらず、最新の学説や見方も紹介しており、奥行きもある。また、ここからさらに学びたい人のためには、巻末に参考書も用意されている。対象とされたのは、ミケランジェロ、ダ・ヴィンチ、デューラー、ジョルジョーネの4人の代表的な名画。ミケランジェロのシスティーナ礼拝堂の「ノアの方舟」の解釈にも驚くが、白眉は「神なき宇宙」を見ていたというダ・ヴィンチ論。絵画の解釈にとどまらず、「ルネッサンスとは何であったのか」に見事に答えるもの。
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美術史入門としての位置づけの本らしいです。
本書を読んで思ったのは、一枚の絵からこんなにも話が広がるものなのか、ということでした。この絵を描いたのは誰で、いつ生まれていつ亡くなって、その時代にはこういうことが起きていて―
そういうことが一つずつ丁寧に説明されています。
美術って見た目の美しさが全てだと思っていましたが、違うんですね。少なくとも中世まで、絵は思想の表現手段の一つだったのだそう。でも、文章表現とは違い、そこに在るものが全てで、表現の幅がとてつもなく広いです。だから、美術を解釈するには、歴史・社会学・民俗学…等々いろんな知識が必要なのだとか。
現代でも、様々な画像やイラストが描かれていますが、一つ一つ、誰かが何かを思って、または考えて描かれているとわたしは知っています。美術も確かにそういうものなのかもしれないと考えるきっかけになりました。