てつがくを着て、まちを歩こう: ファッション考現学 (ちくま学芸文庫 ワ 5-2)
- 筑摩書房 (2006年6月7日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480089878
感想・レビュー・書評
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「ファッション考現学」というサブ・タイトルがつけられているように、さまざまな雑誌に掲載されたファッション論を集めた本です。
著者は本書の冒頭で、次のように述べています。「ファッションにぜんぜん気がいかないひとはかっこよくないが、ファッション、ファッション……とそれしか頭にないひとはもっとかっこわるい。このふたつ、一見反対のことのようで、じつは同じ態度を意味している。他人がそこにいないのだ」。他者の視線を浴びる衣服は、われわれが世界と出会い、両者が互いにせめぎあう最前線にほかなりません。人びとは着飾ることで、他者の注目を集めたり、他者のまなざしを拒絶したりしながら、自己の輪郭をかたちづくっていきます。そうしたせめぎあいの場において、「自己」はあらわにされています。著者は、表層のファッションの背後に隠された「ほんとうの自己」の存在など信じてはいません。そのつどの状況にあわせて可変的である衣服こそが「自己」であり、流行に追随したり抵抗したり、背伸びをしたり少し気を緩めたりと、そのつどのイメージに揺さぶられながら、われわれはそのつどの「じぶん」を選びとっていると論じられています。
ファッションは、けっしてわれわれの存在の「うわべ」や「外装」ではなく、むしろ「魂の皮膚」だと著者は述べます。ファッションについてセンスよくありたいと願うことは、他者のまなざしを受けるときのひりひりするような感覚にセンシティヴであることに通じているのかもしれません。
ファッションを論じる著者の文章に、センスよくありたい、あるいはセンシティヴでいたいという意識の過剰を感じとって鼻白むひともいるかもしれません。しかし本書を読んで、オタクが自分の趣味について延々と語りつづけるのを聞かされるときに感じるようなどうしようもない倦怠感を覚えることはありませんでした。「好きなもの語り」の臭みを感じさせないファッション時評というのは、もしかするとそれほど多くないのではないかという気がします。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
著者はファッション評論家かなんかの人だと思ったら、京大の教授なんかやってる思想家だったらしい。内田先生のような、読ませる文章なので呼んでてとてもリズムがあって小気味よい感じ。若い頃、狂ったように服のことばかり考えていたときの、ファッション哲学というものを自分もよく考えていたが、そのギラギラしていた頃の自分に似たようなエッセンスが随所にあった。
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ファッションについて鷲田清一なりの視点を通して書かれる
fashionの意味の一つとして「流行」という意味があったり、「ファッション」メンヘラみたいになんとなく軽いイメージのあるものゆえ、その意味であったりを見いだすっていうのは中々難しいのかなとおもったりした。うまくまとまらないけど.....
服は他人への気配りという当たり前といえば当たり前のことにきづかされる
いま他人が見たいものを着る(季節感のあるものであったり)ということが、お洒落というこもなのかも -
服装ひとつで人の印象はガラッと変わる。
ファッションは自分を表現する手段のひとつ。
どちらもその通りだと思うのだが、「印象(impression)」の反対語は「表現(expresssion)」である。ファッションは元々、夏に着物に薄地の絹織物をはおることで見る人の目を涼ませたり、艶やかな色の服で見る人の心を明るく楽しませたりする、ホスピタリティの精神から来るものであった。だが昨今では、「自分をどう見せるか」という表現の手段として捉えられることがほとんどである。また、その「どう見せるか」という点についても、自分らしさを追求しつつも、流行に乗った結果、結局周りと同じような格好をしているというどうも矛盾した状況にある。
女らしさも男らしさも、スーツのようなパリっとした格好もジーンズを履いたカジュアルな格好も、100%になるとどれも魅力は半減する。女らしさの中に見え隠れする男っぽさ、カジュアルさの中に入り交じる緊張感など、「ゆらぎ」「中途半端さ」の中に魅力がある。
…などなど、「ファッション」を切り口に人間の魅力や個性、現代人の感覚など様々な観点についての哲学的考察。どれも新しい視点で読んでいて楽しかった。 -
相手がいるから服をきる。
そっと、身繕いをする。
関心を持って、認めるからね。 -
ケータイ電話が日常のコミュニケーションの主流となり、現実とヴァーチャルな世界との境界がかぎりなく暖味なものになりつつある今日、ファッション、モードの世界はかつての規範から解きはなたれた人びとの思い思いの「てつがく」の交響の場となっている。目まぐるしく変遷するモードの世界に、変わることのない肯
定的眼差しを送りつづけてきた著者のしなやかなファッション考現学。 -
なんだか素敵な気分になれる本。
むずかしくなくて、リラックスして読める。 -
「センスはバランス感覚」おそらく鷲田さんが書いていたのはこの本だったはず…。
これ以上に適切な言葉が思い浮かばないほど実感させられる今この頃。 -
流行といえばファッションね。迷走するファッションの話です。
むなしい世界ですね。
私的に、ファッションで一番嫌なのは、毎日変えなくちゃいけない点。
自分にぴったりのコーディネーションを見つけても、次の日にはまた新しいのをひねり出さなくちゃいけないのが最高に面倒臭いですよね。