- Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480092762
作品紹介・あらすじ
日蓮の思想は、近代日本において超国家主義者に信奉されるなど、時に危険なイデオロギーとも目されてきた。だが、実際の著作を読んでゆくと、真の日蓮は一筋縄ではゆかない、実に多面的な思想家であることに気付くだろう。政治権力に挑戦する闘う思想家、孤独で内省的な理論家、ユートピアを思い描く夢想家、おおらかな現実主義者など。魅力的なその人柄に触れつつ、『立正安国論』『三大秘法抄』などの遺文をひとつひとつ読み解き、多彩で奥深い思想世界を探る。ちくま新書版に増補をくわえて刊行する。
感想・レビュー・書評
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イエス・キリストはキリスト教という新しい宗教を打ち立てたという認識はなく、既存の宗教を正しい道に戻す立場であった。日蓮も同じである。天台宗寺院で学び、天台宗の奉じる法華経が正しい教えと主張する。比叡山延暦寺を建てた最澄は自らの宗派を天台法華宗と称していた。しかし、最澄の後の天台宗は密教を取り入れるようになった。これは日蓮の否定の対象になる。
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NHK100分de名著:2月の名著
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解説:花野充道
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さすが東大の権威。すごい説得力。知ってる情報を再確認する読み方でも認識を新たにさせられる。おすすめ。
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日蓮の研究は、それぞれの宗門内部で活発におこなわれており、尊敬すべき仕事も多くありますが、それらはいまだ十分に宗門の外に対して開かれたものとなっていないように思われます。一方アカデミズムにおいては、戦前の日蓮主義が政治への積極的なコミットメントをおこなってきたことへの反省に立って、日蓮の国家へのかかわりについて慎重な立場をとりつづけてきました。
著者は、教学上の立場にとらわれることなく、日本思想史研究者の立場から『三大秘法抄』のような偽撰説のあるテクストについてもくわしく検討をおこない、同時に日蓮の思想と政治との緊張を孕んだ結びつきを解きほぐしています。
本書は入門書なので平易な言葉に書かれていますが、宗門から自由な日蓮像を確立するための出発点を確立したという点で、優れた内容の本ではないかと思います。 -
興味深い指摘が多く、個人的には得るところ大であった。
ただし、仏教用語の前提知識、とりわけ、天台教学の知識がないと完全な理解は難しいだろう。
慎重でありながらも、偽作の疑いのある遺文に意義を見出して行くあたりが醍醐味か。
・消息による布教
・女性信者への機微
・文字本尊は親鸞も用いていた -
内村鑑三が「代表的日本人」で取り上げた日蓮。
理想を追い求める一方で、現実から遊離しない。現実の中に本質を見ながら、かつ理想を忘れない。このバランス感覚が魅力の一つだ。
それゆえ、現代においても色あせない哲学を打ち立てることができた。
また、波乱万丈の61年の生涯を通じて、情熱を持ち続け、進化し続けた姿は、現代を生き抜く私たちにとって、大きなヒントを与えてくれる。
例えば、日蓮の打ちたてた唱題は、念仏の実践を取り入れている。また、真言密教の不動明王を曼荼羅に包含している。
日蓮はなぜ、大情熱を持ち続けることができたのか。
日蓮はなぜ、進化し続けることができたのか。
仏ゆえに成し遂げたことか。
追記:著者の末木文美士(すえきふみひこ)氏は、「東日本大震災は日本への天罰である」という記事を書き、批判を受けている。被災者の叫び声を聞けば、この記事は書けまい。被災者の叫び声が聞こえないのは、学問を追いかけてきた学者だからではないか。
人を救うためには、自分が苦労しなければならない。