北欧の神話 (ちくま学芸文庫 ヤ 28-1)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480097934

感想・レビュー・書評

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  • そういえば北欧神話って、断片的な物語やキャラは知っているものの、ちゃんと概要や全体像のわかるものを読んだことがなかったっけと思い、1982年の本が何故か今になって文庫化されていたのでこれを。神々の個々の性格については、なんとなくファンタジー小説やゲーム等から想像していたイメージと、ちょっと違いました。

    まず主神オーディン。主神というくらいだからゼウス的な存在なのかと思いきや、そうでもないらしい。ローマ神話のメルクリウス(マーキュリー)になぞらえられるようですが、個人的にはそれもちょっと違う気がして。マーキュリー的な役割はむしろオーディン本人ではなく部下(侍女)のワルキューレたちが担っている気がするし、オーディン自身は芸術の庇護者、巫女絡みの部分はまだしもアポロンに近い気がする。それにしても火のないところに煙をたててまで戦争をしたがるこの策士の神様、あまり性格はよろしくなさそう。シャーマン、魔術師、魔法使いなどと呼ばれる側面もあり、死者の神でもあり、かなりうさんくさい。

    実はオーディンより上位の古い神ではないかと言われているトールは、鉄槌をふるう雷神であり、つまりこちらのほうがゼウスに近いイメージなのだけど、マルスと同一視されるらしい。巨人退治などの力自慢冒険系逸話が多いのはヘラクレスっぽい。面白かったのは、盗まれた槌を取り戻すためにトールが女装(女神フレイヤ、しかも花嫁姿)し、ロキがその侍女に成りすまして敵を欺く話。まんまと騙される相手にビックリ。気づけよ(笑)

    北欧神話とギリシャ&ローマの神話との関連は、曜日名との関連説明がわかりやすかったです。以下勝手に一覧にすると、なるほど、と納得。

    火曜日 Tuesday チュール(Tyr) =火星(マルス)
    水曜日 Wednesday オーディン(Odin)=水星(メルクリウス=マーキュリー)
    木曜日 Thursday トール(Thor)=木星(ユピテル=ゼウス)
    金曜日 Friday フレイヤ(Freyja) =金星(ヴィーナス=アフロディテ)

    ロキに関しては、この本の著者の考察では、もともとそんなに邪悪な神というわけではなかったのが、キリスト教が入ってきたことで、ロキの策謀で殺されたオーディンの息子バルドルをイエスに、殺害を唆したロキをサタンになぞらえられてしまい、サタン的性格が後付けされて変化していったのではないかとのこと。なるほど。確かに他のエピソードを見る限り、ロキは悪戯好きのお調子者ではあるけれど、トールとも仲良しだし、トラブルメーカーではあるものの、それほど邪悪な印象は受けない。

    ラグナロク(神々の黄昏)は、いわゆる最後の審判的な、神が人間を裁く云々ではなく、神々自身が争い、ほぼ全滅っていうのが終末観として独特。細部では世界各国の神話と重なる部分があり、それはそれで興味深いのだけど、神様全滅っていう終末観は他にはない気がする。

    あとシグルドリヴァ(ワルキューレの一人?)が眠りの棘で眠りづつけてしまうという逸話は「眠れる森の美女」の原型ぽくて興味深い。3人1組の運命をつかさどる妖精の存在などもいるし、元ネタは北欧発祥だったのかも。

  • 北欧神話は海洋性の神話が多い。
    そして最終的には破滅エンディング。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/737858

  • 北欧神話と言えば、Final Fantasyシリーズで有名になったオーディンのほか、ロキとトールとフレイアぐらいしか知らなかったが、この本を読んでみると、実際のところ有名なのはこのへんぐらいしかいないということが分かる。そう考えると、日本でゲームやアニメでは、北欧神話の神々はほぼ網羅されていると言ってしまってもいい気がする。

    ゲームの影響からか、オーディンと言えば直接攻撃メインの戦いの神という印象だったが、実際のところは知識と魔術の神といった方がいい。そして、他の神話の神に比べて、至高神にしては万能性がなく、やや品位に欠けるところもある。まぁ、美女を見つけては神であるか人であるかを問わず、何かに化けては手を出しまくったゼウスほどではないが、そういう人間臭さというか、例え神であっても全く完璧で清らかな存在ではない、というのが、ギリシャや北欧の人々の精神性だったのかもしれない。

    わずか200ページちょっとの文庫本ながら、コンパクトに北欧神話の主だった神のエピソードや北欧の精神世界、信仰のパターンを理解することができるので、なかなかのオススメ。

  • ■一橋大学所在情報(HERMES-catalogへのリンク)
    【書籍】
    https://opac.lib.hit-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/1001139217

  • 入門とかかいつまんで流れを理解するにはうってつけ。二冊目にもう少し詳しいやつを買おうかな。

  • ラグナレク、ヨルムンガンドなど、
    現代のファンタジーやコミックにも
    登場する名前のそもそもが知れる。

    石ノ森章太郎のサイボーグ009の
    北欧神話編とか、今にして思えば
    よくできていたな~。

  • 2018/9/24読了。北欧神話を元にして書かれた物語などをちょこちょこ読んでいたのでら漠然とした憧れを持っていた。今回基本的な流れを確認したくて購入。

    オーディン、トール、ロキの力関係など確認できたが、むしろ北欧神話のラグナレクの説明を初めて読んだので新鮮だった。

    ギリシャ神話に神々の最後は無い(あっても私が知らないだけか?)ので北欧の神々の壮絶な最後に興奮した。

    その上、(自分たちのことも含めて)物事に永遠はないことを神々が理解していた事は実に興味深い。

  • 北欧神話のエピソードを解説をまじえながら紹介する。神々と巨人の物語は、デンマーク、スウェーデン、ノルウェーが中心で、デンマークのオーデンセは、オーディンに由来するという。

    神話によれば9つの世界から成り立っており、神の国アスガルド、巨人の国ヨンツヘイム、小人の国スヴァルトアルヘイム、人の国ミッドガルド、雪と氷の国ニブルヘイムなどがある。詩と戦いの神オーディン、ハンマーを武器とする雷の神トール、豊穣の神で奔放なフレイヤ、オーディンの最愛の息子バルドルは命を落とすがラグナロクの後に復活する。常に神にあだなす厄介者のロキ。ロキの子供のミッドガルド蛇が海に潜んでいたり、イドゥンという女神が若返りの黄金の林檎を守っていたり、豊かな逸話の数々。

    オーディンは、諍いを起こすのを好み、世界中を旅し知恵を貪欲に求める神で、ルーネ文字を読めるようになるために世界樹ユグドラシルに槍で自らを傷つけて吊り下がり、片目を差し出してミーミルの泉を飲み、女を騙して知恵の霊酒を盗んだりする。勇敢な戦士を集めていて死んだ戦士を侍女のワルキュリエに迎えに行かせワルハラ宮に住まわせ、毎日戦争をさせてラグナレクに備えるという。

    最後は、神と巨人の戦いラグラレクが訪れ神も世界も滅ぶという。

  • たいへん面白かったです。

    山室静『北欧の神話』面白い。しかし、(一部の異教復興運動は除き)すでに信仰されなくなった神々の神話は、まるで遠くから聞こえてくる音楽のような、見る人の居なくなった夢のような趣。

    『指輪物語』の原型になっている、一部直接の引用とすら言えるところもあって。「中つ国」がだいたい"midgard"だしね。

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著者プロフィール

文芸評論家・翻訳家。1906年鳥取県生まれ。高校卒業後、代用教員等を経て、岩波書店に入社。退社後、東北大学文学部で学ぶ。雑誌「近代文学」等の創刊に参加し、日本女子大学教授をつとめる。北欧文学に造詣が深く、ムーミン童話全集をはじめ、多くの作品を翻訳し、日本に紹介した。著書に『アンデルセンの生涯』(毎日出版文化賞受賞)、『山室静著作集』(平林たい子賞)など多数。2000年逝去。

「2020年 『ムーミン全集[新版]6 ムーミン谷の仲間たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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