- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480097934
感想・レビュー・書評
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そういえば北欧神話って、断片的な物語やキャラは知っているものの、ちゃんと概要や全体像のわかるものを読んだことがなかったっけと思い、1982年の本が何故か今になって文庫化されていたのでこれを。神々の個々の性格については、なんとなくファンタジー小説やゲーム等から想像していたイメージと、ちょっと違いました。
まず主神オーディン。主神というくらいだからゼウス的な存在なのかと思いきや、そうでもないらしい。ローマ神話のメルクリウス(マーキュリー)になぞらえられるようですが、個人的にはそれもちょっと違う気がして。マーキュリー的な役割はむしろオーディン本人ではなく部下(侍女)のワルキューレたちが担っている気がするし、オーディン自身は芸術の庇護者、巫女絡みの部分はまだしもアポロンに近い気がする。それにしても火のないところに煙をたててまで戦争をしたがるこの策士の神様、あまり性格はよろしくなさそう。シャーマン、魔術師、魔法使いなどと呼ばれる側面もあり、死者の神でもあり、かなりうさんくさい。
実はオーディンより上位の古い神ではないかと言われているトールは、鉄槌をふるう雷神であり、つまりこちらのほうがゼウスに近いイメージなのだけど、マルスと同一視されるらしい。巨人退治などの力自慢冒険系逸話が多いのはヘラクレスっぽい。面白かったのは、盗まれた槌を取り戻すためにトールが女装(女神フレイヤ、しかも花嫁姿)し、ロキがその侍女に成りすまして敵を欺く話。まんまと騙される相手にビックリ。気づけよ(笑)
北欧神話とギリシャ&ローマの神話との関連は、曜日名との関連説明がわかりやすかったです。以下勝手に一覧にすると、なるほど、と納得。
火曜日 Tuesday チュール(Tyr) =火星(マルス)
水曜日 Wednesday オーディン(Odin)=水星(メルクリウス=マーキュリー)
木曜日 Thursday トール(Thor)=木星(ユピテル=ゼウス)
金曜日 Friday フレイヤ(Freyja) =金星(ヴィーナス=アフロディテ)
ロキに関しては、この本の著者の考察では、もともとそんなに邪悪な神というわけではなかったのが、キリスト教が入ってきたことで、ロキの策謀で殺されたオーディンの息子バルドルをイエスに、殺害を唆したロキをサタンになぞらえられてしまい、サタン的性格が後付けされて変化していったのではないかとのこと。なるほど。確かに他のエピソードを見る限り、ロキは悪戯好きのお調子者ではあるけれど、トールとも仲良しだし、トラブルメーカーではあるものの、それほど邪悪な印象は受けない。
ラグナロク(神々の黄昏)は、いわゆる最後の審判的な、神が人間を裁く云々ではなく、神々自身が争い、ほぼ全滅っていうのが終末観として独特。細部では世界各国の神話と重なる部分があり、それはそれで興味深いのだけど、神様全滅っていう終末観は他にはない気がする。
あとシグルドリヴァ(ワルキューレの一人?)が眠りの棘で眠りづつけてしまうという逸話は「眠れる森の美女」の原型ぽくて興味深い。3人1組の運命をつかさどる妖精の存在などもいるし、元ネタは北欧発祥だったのかも。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
北欧神話は海洋性の神話が多い。
そして最終的には破滅エンディング。 -
【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/737858 -
■一橋大学所在情報(HERMES-catalogへのリンク)
【書籍】
https://opac.lib.hit-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/1001139217
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入門とかかいつまんで流れを理解するにはうってつけ。二冊目にもう少し詳しいやつを買おうかな。
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ラグナレク、ヨルムンガンドなど、
現代のファンタジーやコミックにも
登場する名前のそもそもが知れる。
石ノ森章太郎のサイボーグ009の
北欧神話編とか、今にして思えば
よくできていたな~。 -
2018/9/24読了。北欧神話を元にして書かれた物語などをちょこちょこ読んでいたのでら漠然とした憧れを持っていた。今回基本的な流れを確認したくて購入。
オーディン、トール、ロキの力関係など確認できたが、むしろ北欧神話のラグナレクの説明を初めて読んだので新鮮だった。
ギリシャ神話に神々の最後は無い(あっても私が知らないだけか?)ので北欧の神々の壮絶な最後に興奮した。
その上、(自分たちのことも含めて)物事に永遠はないことを神々が理解していた事は実に興味深い。 -
たいへん面白かったです。
山室静『北欧の神話』面白い。しかし、(一部の異教復興運動は除き)すでに信仰されなくなった神々の神話は、まるで遠くから聞こえてくる音楽のような、見る人の居なくなった夢のような趣。
『指輪物語』の原型になっている、一部直接の引用とすら言えるところもあって。「中つ国」がだいたい"midgard"だしね。