20世紀の歴史 上 (ちくま学芸文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (576ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480098665

感想・レビュー・書評

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  • 20世紀の歴史をテーマごとに概説した本であり,特にマルクス主義者(と思われる)の史観として重要な著書と言える。

  • 読みきれず

  • 原書名:THE AGE OF EXTREMES

    第1部 破滅の時代(総力戦の時代;世界革命;奈落の底へ落ちる経済;自由主義の陥落;同じ敵に抗って;芸術―1914-45;帝国の終わり)
    第2部 黄金時代(冷戦;繁栄の時代)

    著者:エリック・ホブズボーム(Hobsbawm, Eric J., 1917-2012、エジプト・アレキサンドリア、西洋史)
    訳者:大井由紀(社会学)

  • ○歴史家が20世紀を理解できるのであれば、その大部分を可能にするのは、観察することと耳を傾けることとである。
    ○エンリコ・ゴンブリッチ(イギリスの美術史家):20世紀の主な特徴は、世界人口がひどく増えてしまったことだ。これは未曽有の大惨事だ。どう対処していいのやら、わたしたちには見当もつかない。
    ○絶望することはない。もっとも絶望的な状況であったも。
    ○20世紀が幕を閉じる頃には、若い世代のほとんどは自分たちが生きている時代に共通の過去と有機的な関係を欠いている、つまり「いま」しかない環境で育つことになる。
    ○近代帝国主義は、大英帝国のエリザベス女王が死去した頃には非常に強固で、自信に満ち溢れていたが、けっきょく、人ひとりの一生よりも長続きせずに終わってしまった。
    ○現状では、公的に識字として認められている最低限の能力と、エリート層で期待されている読み書き能力との差が開いてきている。
    ○世界とはつまり、過去そのものと現在にとっての過去が役割を失った世界、人間を個としても全体としてもずっと導いてきた古い地図や航海図にわれわれが移動する土地や航海する海がもはや乗っていない世界である。そんな世界にあって、わたしたちはどこに行きつくのか、どこに行くべきなのか、わからないでいる。
    ○第一次世界大戦はフランス・イギリス・ロシアの三国協商側とドイツとオーストリア=ハンガリーの「中央同盟国」側との戦争で、本質的にヨーロッパのものだった。
    ○以前の戦争はふつう特定の決まった目的があって開始された。第一次世界大戦はこれらと違って、目的が限定されないままで始まった。
    ○20世紀が始まるまでは、社会全体が巻き込まれる戦争というのは例外的だった。
    ○全体的にみて戦争がもたらしたのは、構造の変化というより変化の加速度化であった。
    ○野蛮さを示す指標が、1914年以降上昇してきていることに、残念だが疑問の余地はない。
    ○私たちの世紀で何が最も残酷だったかというと、遠く離れていながら決定を下せることと、制度と型にはまった繰り返し作業がもつ非人格性である。とくにそれが、気の毒だが作戦上必要だと正当化される場合には、いっそう残酷である。
    ○レーニンとボルシェヴィキが本当に持っていた唯一の財産は、大衆が何を欲しているのかを見極める力であった。
    ○世界革命が許容されるのは、(A)ソヴィエトの国益と矛盾せず、(B)ソヴィエトが直接統制するなかで実現される場合だけだった。
    ○家族のコネや財産はないが能力と教育がある若者にとり、軍人としての生活は魅力的なキャリアへの展望を与えた。
    ○大戦前の段階では、いずれ革命をと願う者の道具箱に、単純にゲリラ戦は入っていなかった。
    ○解放は、余所から来た征服者に対して被抑圧者が一致して蜂起するという単純なものではなく、ずっと複雑だった。
    ○一次産品の価格が下落したということは、単純に、一次産品への需要が一次産品の生産能力のペースに追い付けなかった、ということである。
    ○保障とは、雇用(賃金)・病気や事故といった、不確実な恐怖に対する予防線、収入のない老後という確実な恐怖に対する備えを指す。そのため手に職のある人々は、給料はほどほどでもいいが、安定していて年金が支払われる仕事に子どもに就いてもらいたいと願っていた。
    ○自由市場が好況な時には、賃金が上がらないいっぽうで利潤が不相応なほど増え、富裕層は国の利益さらに大きな分け前にあずかっていた。
    ○鉄道や、より効率的な船、あるいは鉄鋼や工作機械の導入と違い、新しい製品と新しい生活スタイルには、高収入と増収、そして将来への高い信頼が急速に広まっていなければならなかった。
    ○教会をして、旧態依然とした反動主義のみならずファシズムとも結びつけたのは、教会・反動主義・ファシズムに共通する、18世紀の啓蒙運動とフランス革命、そして両者から派生したと教会が考えるものすべてに対する憎悪であった。
    ○教育が必要な類の専門職ではユダヤ人が過度に増えていた。
    ○ファシストの運動には、反資本主義・反少数独裁をたびたび強く主張し、社会の抜本的変化を望む人々が参加していた以上、革命運動の要素もあった。
    ○「独占資本主義」の議論に関しては、巨大ビジネスでは、政府が資産を実際に没収しない限り、どんな政府でも妥協すること、そしていかなる体制も巨大ビジネスと妥協せねばならない。
    ○共産主義は、ソ連外部での政治勢力が微々たるものだった時ですら、国際的プレゼンスをもった。
    ○ドイツはシャルルマーニュと反共産主義を日頃から訴えており、未来のヨーロッパの秩序の中核であり、唯一の保証人として考えられていた。
    ○地域のナショナリズムがファシズムの味方につくか否かは、枢軸国の進歩によって失うものより得るものが多いか、そして、共産主義およびその他の国家・国籍・エスニック集団(ユダヤ人、セルビア人)に対する嫌悪が、ドイツ人・イタリア人への嫌悪より大きいかどうかで決まった。
    ○民主主義を実現可能にする条件とは何か?第一に、幅広い同意と正当性を得ることである。第二は、「国民」の多種多様な構成員をどの程度両立させられるかである。第三は、民主的な政府が統治をあまりする必要がないということだった。19世紀のブルジョア社会で、市民生活の大部分は、政府の領域ではなく、自律的な経済や私的・非公式のアソシエーション(いわゆる「市民社会」)で起きていると仮定していた。第四は、富と繁栄である。
    ○イギリスでは、いかなる形であっても比例代表制をを受け入れることを拒んだことが二大政党制に有利に働き(勝者総取り方式)、二大政党以外は傍流に追いやられた。
    ○戦争は、あらゆる手を尽くした後の政治的最終手段であった。
    ○戦争が起きてもおかしくないと思ったのであれば、なすべきことはただ一つ、できる限り効率的に戦争に備えることだった。
    ○ヨーロッパのレジスタンス運動について、一つは、レジスタンスの軍事的重要性は、1943年にイタリアが戦争から撤退する以前はとるに足らないもので、バチカン半島各所を除いて決定的なものではなかった。二点目は、ポーランドは明らかの例外として、政策が左派に偏っていたことである。
    ○スターリンは、基本的には終戦時に赤軍が占領していた地域に社会主義を限定しようとするものだった。
    ○才気あふれるファッション・デザイナーたちは、分析的なタイプでないことで有名だ。しかし、予言を生業とする者より、次に流行りそうなものを当てられるのはなぜか。それは、歴史上もっともはっきりしない問題の一つである。そして文化史を研究する者にとっては、もっとも重要な問いの一つである。
    ○ダダイスムは、あらゆる芸術を拒絶したため、表現形式上の特徴をもたなかった。
    ○シュールレアリスムは、斬新さをもってアバンギャルドの芸の幅を確実に広げた。
    ○ラジオは貧困層の生活、とくに家に引きこもりがちの貧しい女性の世帯の生活を、これまでにない形で変えた。
    ○資本主義と社会主義で形は違っても、経済や技術科学を「発展」させることで進歩、つまり富・権力・文化の様式を生み出す社会である。
    ○この世紀に第三世界に変革をもたらした人々の歴史は、少数のエリート、時には取るに足らないほど少数の場合もある集団の歴史である。
    ○領土をずっと維持している政治的存在という概念そのもの―固定された境界線によって他の政体と区別され、恒久的な権力の支配下に置かれている―つまり、われわれが当たり前に思っている独立した主権国家という少なくとも村落レベルを超えた考え方は、人びとにとって何の意味ももっていなかった。
    ○軍産複合体とは、戦争を準備することによって暮らしが成り立っている人と資源の集合体を指す。
    ○たいがいの人間は、歴史家と同じような仕組みになっている。つまり、過去に経験したことの本質に、後で振り返ってはじめて気がつく。
    ○技術がもたらした大変動は、評論家にとっては三つの点で衝撃的だった。第一に、豊かな世界の日常をすっかり変えただけではなく、控えめではあるものの、貧しい世界の日常も完全に変えた。第二に、関係する技術が複雑になるほど、発見や発明から生産への道のりもより複雑になり、その道のりを歩むプロセスももっと入念で費用がかかるものになった。第三に、新しい技術は圧倒的多数が資本集約的で、労働力は節約されているか、機械が代わりに働いていることすらある。こうした経済で人間が不可欠とされるのは、ただ一点のみにおいてであった。つまり、商品とサービスの買い手としてだけである。

    このように歴史を掘り下げることは、非常に難しいことであると思う。自分の認識が一面的であり奥行きがほとんどないということが分かった。日本と西洋の意識の違いがよくわかる。「ある家族の会話」と併せて考えると面白いと感じた。

  • 東2法経図・6F開架 209.7A/H81n/1/K

  • 毎日新聞201885掲載

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著者プロフィール

イギリスの歴史家。1917年エジプトのアレキサンドリアでユダヤ人の家庭に生まれ、幼年時代をオーストリアのウィーンやドイツのベルリンで過ごした。ドイツでヒトラーが政権を掌握したことにより、1933年に渡英。ケンブリッジ大学で学び、第二次世界大戦後、ロンドン大学バークベック・コレッジで教鞭をとりつつ、社会主義知識人としてさまざまな活動を行った。2012年10月、ロンドンで死去。多数の著作があるが、特に18世紀末以降の歴史を扱った4部作、『市民革命と産業革命 ―― 二重革命の時代』(岩波書店、1968年)、『資本の時代 1848-1875』(みすず書房、1981-82年)、『帝国の時代 1875-1914』(みすず書房、1993、98年)、『20世紀の歴史 ―― 極端な時代』(三省堂、1996年)がよく知られている。これらで提唱した「長い19世紀」(フランス革命から第一次世界大戦まで)、「短い20世紀」(第一次世界大戦から冷戦終結まで)という時代区分や、編著『創られた伝統』(紀伊国屋書店、1992年)での「伝統の創造」論などは、近現代史研究に大きな影響をおよぼした。


「2015年 『破断の時代 ― 20世紀の文化と社会』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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