明治文學全集 19 廣津柳浪集

著者 :
制作 : 広津 和郎  廣津 柳浪 
  • 筑摩書房
4.00
  • (0)
  • (1)
  • (0)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 6
感想 : 1
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480103192

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  幕末の頃生まれ、1928(昭和3)年に68歳で没した広津柳浪の作品集。デビュー作は珍妙なものだが1887(明治20)年に新聞発表。本書で最も新しい作品は1905(明治38)年。
     永井荷風は19歳の頃広津柳浪に教えて貰いに行ったことがあり、柳浪との合作名義での習作も残っているらしいが、さほど長く付き合わずに去ったのか、その後の消息がよく分からない。
     現在の視点から漱石などの「明治文学」に広津柳浪の作品を置いて眺めてみると、確かに古い感じはする。例えば為永春水のような江戸戯作者と、明治文学との間の中間ぐらいに位置しそうなイメージだ。
     文章表現は悪くない。良いとこともしばしばあるようだ。人物の会話を書くのが得意なようで、むしろ会話によってストーリーが進展していくという、近年のエンタメ小説の作法に近いところもある。
     物語性の強い小説群で、筋が面白くなってきて結構引き込まれるように読んだ。
     柳浪の作風は当時「悲惨小説」「深刻小説」などと呼ばれたそうで、かなり貧しい層の庶民を登場させ、大抵は悲劇的ななりゆきに終わるので、そんな感じは当時は珍しかったようだ。とはいえ、私の目から見るとエミール・ゾラほど破滅的・破壊的な文学でもなく、そこに大きなパワーは感じなかった。
     が、割と読んで面白い作品が多かったと思う。特に「八幡の狂女」などは手に汗握るエンタメ作品と言っても良い。
     もっとも、しばしば会話文などがやたら「くどく」なってしまうクセがあり、そこは良くなかった。

全1件中 1 - 1件を表示

吉田精一の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×