- Amazon.co.jp ・本 (315ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480424525
感想・レビュー・書評
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高校の頃から好きだったカフカの短編。大学生協で見つけて買いました。
心霊現象や魔法などが出てくるわけでもないのに現実感の全くない世界で、現代アートの映像作品を見ているよう。
時折感じられる、人生や人間についての示唆が詰まった主題にビリっと来ます。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「流刑地にて」は、人殺しの道具を誇らしげに饒舌に語っている様子が気持ち悪かった。男の人にその装置を否定されて、どうして自分の自慢するその装置で死ななければならないのかよく分からなかった。
「巣造り」は、主人公の強迫観念的な延々と続くモノローグを、ずっと読んでいるのが嫌になった。よくこれだけかけるなあと思うと同時に、自分も何かに固執している時は、このようなことを延々と考え続けているのかもしれないと思った。
全体的に、自分で取り決めたルールの中で生きている人たちの話だと思った。 -
カフカは大変不思議な文章を書くと思う。文章は平たんだけれども、その意味をくみ取ることはとても難しい。作者自身が伝えようとしているテーマを直接文章に書き記すのではなく、テーマの前に物語を提示して、読者に不思議な印象を与えてくれる作家なのではないだろうか。
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「巣穴」
危機を、それにより沸き立つ不安を管理しマネジメントしようとすること。その方策とその立案に向け繰り出される言説は掌握するほどが困難なほど増殖し、ために、結果それ自体に言説の主体自身も囲繞され、拠って立つ場であり庇護されるはずであった巣穴が、身動きの取れない陥穿となり牢獄となる。
とも読める気がするけど、これは明らかに自分が悪いのだが、そんな読み方はつまんない。本書にはなにげに生理的な部分にまでふれてくるかのような変な生々しさを感取させるものがあって、このカフカの作品と面白さをどう言葉にすればよいのだろう。
いくつかの出版社から異なる訳者によって短編集が出版されているがすべて網羅した訳ではもちろんないけれど、この本では特にその生々しさみたいなものを感じた。