向田邦子との二十年 (ちくま文庫 く 6-3)

著者 :
  • 筑摩書房
3.94
  • (7)
  • (16)
  • (9)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 166
感想 : 14
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (382ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480425881

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 名前の匂い
    人の名前には匂いがあると思う。
    温度のようなものもあるような気がする。
    もっとも、それは単に名前の文字からだけ来るものではなく、名前には必ず顔がついているからそう思うのかもしれない。
    私の知っている〈秋子〉という名の人は、どの人もつつましく涼しげだし、〈朱美〉には華やかでいろっぽい人が多い。
    それはよく言われることだが、自分の名前と長年連れ添って暮らしているうちに、人の方から名前に近づいて行くからなのかもしれない。
    人とその名前は、どこへ行くにもいっしょである。
    いっしょに思いあぐね、いっしょに頬を染め、いっしょに怒ったりするうちに、名前に匂いが移り、体温も伝わって行くのだろう。
    女の名前は特にそうである。

  • 向田邦子が好きである。
    何故好きかと言われると、ストーブの匂いを思い出すから、と答えてしまいそうだ。それは国語の國安恩師が好きであったのも加味されているが、あの時あの頃の時代の匂いを思い出すからだ。時代が違えどなぜか懐かしく切ない。
    212ページの「縞馬の話」は涙が出そうになった。
    フェデリコ・フェリー二の道、という映画について語っていた部分だった。それを読み進めるうちに

    信じる、とか約束、とかもはや現代社会で暮れなずんでいる言葉達を思い起こした。今繁茂している、たくさんの言葉の海に隠れたその生々しい傷を思い出す。いつかジュノでとんかつたべいこうよ、とか、今度こそ夜景見に行こうねとか、また来年も海に行こうね。
    そういう悲しくも美しい果たせなかったものたちが心の片隅で燃え煤のようにちりぢりしているのだ。

    それは今現代社会でもきえうせているものではあるまい。

  • タイトル通り、久世さんが語る向田さんの本。
    客観的ではなく、あくまで久世さんの目から見た向田さん、久世さんが知っていた、そして知ることのできなかった向田さんについて。

全14件中 11 - 14件を表示

著者プロフィール

久世光彦

一九三五(昭和十)年、東京生まれ。東京大学文学部美術史学科卒。TBSを経て、テレビ番組制作会社を設立、ドラマの演出を手がける。九三年『蝶とヒットラー』でドゥマゴ文学賞、九四年『一九三四年冬――乱歩』で山本周五郎賞、九七年『聖なる春』で芸術選奨文部大臣賞、二〇〇〇年『蕭々館日録』で泉鏡花賞を受賞。一九九八年紫綬褒章受章。他の著書に『早く昔になればいい』『卑弥呼』『謎の母』『曠吉の恋――昭和人情馬鹿物語』など多数。二〇〇六年(平成十八)三月、死去。

「2022年 『蕭々館日録 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

久世光彦の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×