ネオンと絵具箱 (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 104
感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (348ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480429186

作品紹介・あらすじ

現代美術作家・大竹伸朗の視点で切り取る日常の雑感と創作への思い。絵画や音楽、展覧会、スクラップブックや夢日記、ロンドン、別海、宇和島での日常、路上と創作、趣味、家族、友人、過去、未来、そして現実と妄想…日々浮かぶトリトメなきテーマの裏にあぶり出る「わからない雑景」。未収録エッセイ28篇、カラー口絵8頁を収録。2003〜2011年のエッセイ。

感想・レビュー・書評

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  •  現代美術作家である著者の2003-2011年までのエッセイ。1977年のイギリス、制作の本拠地である宇和島、故郷である東京、はたまた夢まで。時代と場所を縦横無尽に横断しながら徒然と日々思っていることが書き記されていた。既存の価値観にぐらぐら揺さぶりをかけられるし、価値の定義が比較的曖昧な美術の世界でサバイブしてきた著者の審美眼の一端を知れるのは貴重なことだと思う。「ザ・エッセイ」なんだけども、僕が著者のエッセイが特に好きな理由は独特の文体と強烈なパンチラインがゴロゴロ転がっていること。いくつか引用。

    いつの世も本質はコピーとオリジナルの微妙な狭間にごくわずかな確率で起きる一瞬の出来事の中に薄ら笑いで潜んでいたりする。そうやすやすと良識や常識で捕まえられるほどヤワな相手でないことだけは確かだ。

    誰の日常にも淡々と当たり前に訪れる「毎日」という怪物、これに見合う「自分」を与えられた時間の中に貫くこと、それはとてつもなく厚い壁として毎日立ちはだかっている。

    結局いつの時代も「信じられる奴」と「信じられない奴」がいるだけでそこには年上も年下もない。「おい!そこのオヤジ、今、お前のできること、キチンと示してみろ!」それだけだ。

    このように単純な引用でも威力の高いラインだけどエッセイの中ではさらに光り輝いていた。3つ目は特に自分がおじさんであることを認識しつつ、それに抗いたいという気持ちにビシッと刺さった。傍から見ると役に立たない、無駄や無意味と思われたとしても主観的な価値観を大事にしてそれを貫く。毎度勇気をもらうことができる著者の言葉をこれからも追い続けたい。

  • 同名の単行本に収録されたエッセイに、その後書かれたエッセイを加えて文庫化している。宇和島のアトリエとその周辺での身辺雑記と回顧展、直島銭湯の話等どれも興味深く、楽しめた。特に、宇和島のオヤジと鳥羽一郎のド演歌の話は、笑えた。文章も素晴らしい。画家には、名文家が多いが、大竹伸朗も岸田劉生、小出楢重、野見山暁治に続く書き手だろう。

  • 2012-6-2

  • 現代美術家の大竹伸朗さんのエッセイ。

    瀬戸内国際芸術祭でも複数の作品を見ることができる大竹伸朗さん。このエッセイは彼の日常をユルい感じで書いているので、気軽に読めます。
    ですが、彼の美術的なひらめきに満ちた文章がガツンと来ること多数。そして周りの人にたいする愛や、ちょっと親父っぽい哀愁にも愛着を覚え、飽きません。

    写メをとって友達に送っているばかりいる場合ではないのです。

  • 大竹伸朗の展覧会を初めて見たのが2007年の広島市現代美術館で、ちょうどそのころのエッセイであったためすっと入ってきた。松尾くんのこと、とか、林先生、とか、ちょっといい文章。

  • モロッコ旅行記「カスバの男」は
    巻末の角田光代さんの読書感想文での興奮度が理解できなかった。
    描写は妙にさめているのに、記述内容では興奮している。

    このエッセイ集は全く期待していなかったが、
    通常のエッセイ集が数年前の古いネタなのに、これは、ついこの間のことが書かれ、
    大竹伸朗、静かなその人の、感情の起伏が手にとるように描写されている。

    現在開催中の回顧展の準備での数々のエピソードとそのときの心境、
    牧場での展覧会の開催のいきさつ、宇和島駅のネオンのこと、
    さらには、ロンドンでのラッセルミルズとの出会い。デビットシルビアンとの交友。
    非常に興味深い内容ばかり。
    「全景」を見た人、見る人には必読の書といってもいい。

    このエッセイに書かれているアルバム「3R4」は好きな音のひとつでもある。
    彼等としてはポップなシングルと合わせて「8 TIMES」というCDで再発されたものがここにある。
    もう、20数年前の音だが、数年前のOVALとどちらが新しいとは誰も言えない・・・ 
    (2006/12/12記 月曜社版)

  • 美術家 大竹伸朗による2003〜2011年のエッセイ集。自身の作品、展覧会に纏わるものから日常の風景や出会った人々まで独特の切り口で記されている。あらゆる物事が作品に直結しているようで、全身美術家と言える。

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著者プロフィール

大竹伸朗(おおたけ・しんろう)
画家。1955年東京生まれ。74年~80年にかけて北海道、英国、香港に滞在。79年初作品発表。82年以降、東京、香川、広島、ソウル、ロンドン、シンガポールにて個展。瀬戸内国際芸術祭、光州ビエンナーレ、ドクメンタ、ヴェネチア・ビエンナーレ、横浜トリエンナーレ、アジア・パシフィック・トリエンナーレ、ハワイ・トリエンナーレなど国内外の企画展に参加。著書に、『既にそこにあるもの』『ネオンと絵具箱』(ちくま文庫)、『ビ』『ナニカトナニカ』(新潮社)ほか多数。2022年11月に東京国立近代美術館で回顧展を予定。

「2022年 『見えない音、聴こえない絵』 で使われていた紹介文から引用しています。」

大竹伸朗の作品

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