いい子は家で (ちくま文庫 あ 44-1)

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 111
感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480430366

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  • いい子は家で
    青木淳悟

    ・いい子は家で
     俺と似たような感じの主人公。ニートで、俺と違うところは女がいるところ、よく外に出るところ、シティサイクルなところ。
     兄、女ともだち、父、母。彼らとの日常のなかで、突然異常な世界にスライドする。変化とかではない。にゅるっとスライドする。で、いつのまにか戻っている。『コンビニ人間』と同じような、日常と異常の境目のない切り替わりを感じた。(コンビニ人間のほうがリアルで、こちらはファンタジーよりだったけど。)
     主人公の妄想かほんとうの異常か、そのどちらであるかは分からないけど、おかしなことが起こって、解決しないで過ぎていく。おかしなことすら、日常のようにすぎていく。ミステリーならオチがあって解決してスッキリするけど、それを期待していたけど、異常が異常のまま過ぎ去って、終わった。どこかゴールがあって、それに向かって進むのではなく、線が線のままあるというか、ただ、そこにあるだけ、という感じがした。
     人生とはこういうものなのかもしれない。伏線があって、回収されて、なにかが明かされて、オチがあって。そんなよくできた物語のように人生を捉えてしまいがちだが、実際は違う。日々が過ぎていって、たまにおかしいこと、面白いこと、うれしいこと、悲しいことがあって、その連続でしかなくて、80年もすれば突然終わる。この小説の最後、「ただ母は返事をせずにじっと壁を見つめている。」のように、突然終わる。人生とはそんなものなのかもしれない。そんなことを思わせてくれる小説だった。
     シュルレアリスムってやつなのか?

  • いちいち、微に入り細に入り。

  • 表題作では、現代家族の歪さをマジックリアリズムで描いている。その手法は効果的であると思ったが、テーマ自体は良くあるもの以上の感想を抱けなかった。
    ただし、文章力、表現力は特筆すべきものがある。これ以降の作品も読んでみたいと思う作家だった

  • 日常的な事象をミクロに描くなど、実験的なこだわりは分かるものの、それだけで読ませるまでには至っておらず、もう一度読みたいと思わせる強度はない。だったら、ピンチョンやルーセルを読んでいる方がいい。

  •  家族を決して理想化させないリアリティーある描写のはずなのにとても怖かった。血が繋がっていようとも、家族は自分とは違う“他人”なのだと思う。滑稽なのだけど底の知れない不気味さがあって読んでいる間ずっと不穏な気持ちになった。面白かった!

  •  やい、課長。やい、課長と、突然兄が言い出したり、父の耳元からうんこのようなものが出たり。「ひたすら日常の、ひきこもり小説風の描写」からその奇妙な展開になる方法で作品を書いている。日常がだんだんと歪んでいく。異様な感覚、変化をうまく描写しているのだけれども、その不気味さがとてもポップで良いと思った。
     私の母も、この小説のように、私を監視しているのだろうか。ひたすら母を「家の監視者」として書き切っている。窓、玄関、カーテン、家を出る理由、すべて母のチェックを気にしなければならない息子をずーっと描いている。
     感想を言おうにも、「家族」というのを、一切外を書かずに、閉じきったまま書いているので、言いにくい。母親が水をムダに買ってくるところとか、次男が自動車保険の書類に目を通しているときの親とのやりとりとか、とにかく「あるある」が、いかにすっからかんで空虚か、すっかすかということを濃厚に書いている。そのすっかすかの濃厚を楽しめる人は楽しめるが、私にとっては、これがあまりにも当たり前すぎて、いや、そのままやん! というので、共感どころではなかったのであります。

  • こんな日常的なことが小説になるなんて…。と思いつつ、もうちょっとと刺激を求めている自分を発見。

  • この世にそっくりな、どこかの話。

  • どうしてこの本を読んでいるんだろう・・・
    途中からそう思ってしまうのです
    あまりにも共感する部分が少ないのかも
    時間がたって、また読んだら変わるかな
    でも、もう一度読む気にはなかなかなれそうもない

  • 現代を活写する全く新しい家族小説(文学部:4年生)

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著者プロフィール

青木淳悟(あおき・じゅんご)…1979年埼玉県生まれ。早稲田大学第二文学部表現・芸術系専修卒業。2003年、「四十日と四十夜のメルヘン」で第35回新潮新人賞を受賞し小説家デビュー。05年、同作を収めた作品集『四十日と四十夜のメルヘン』で第27回野間文芸新人賞、12年、『私のいない高校』で第25回三島由紀夫賞受賞。ほかの作品に『いい子は家で』『このあいだ東京でね』『男一代之改革』がある。

「2015年 『匿名芸術家』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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