きみを夢みて (ちくま文庫 え 18-1)

  • 筑摩書房
3.50
  • (4)
  • (11)
  • (12)
  • (2)
  • (1)
本棚登録 : 131
感想 : 17
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480432988

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • エリクソン節全開なのだが,描いているのは幻想の世界ではなく,現代のアメリカそのものである.
    JFKを(ノスタルジー的に)描いた小説にはいくつも出会ってきたが,ロバートの方のケネディを描いた小説は初めてだ.彼を取り巻く熱狂が破滅に向かう様が描かれ,それが8年前のオバマに対する熱狂を重ねられていた.
    主題は「家族」であり,この家族がさまざまなトラブルに巻き込まれて,最後に絆を深めていく様が,現在と未来,現実と幻視が交錯しながら描かれていた.

  • 投げかけられた原因が、すべて然るべき結果に収まっていくことで、物語には美しい円環が生まれる。一方この小説で描き出される円環は、フリーハンドかつ目隠しで描かれたようにワイルドだ。とてもエリクソンらしい。円の始点と終点はすれ違い、それ故に無限の世界線が流入する。読者は因果論を離れ、奇妙な出来事の反復(自動車事故、暴漢に襲われる、大統領選の熱狂…)からマインドマップを作り出す。小説と小説内小説のらせん構造はとても複雑だけど、そこはいつもの猛烈な書きっぷりに身を任せ、読者はただ「感じ」ればいい。

    いつも以上にゴツゴツしてるし、多少予備知識も必要とするのでまぁ読みにくかったけど、やっぱりこの圧倒的に押し流されていく感じはエリクソン以外では味わえないところがある。

  • おもしくなかった。気が滅入る内容で話の続きが気にならない。黒人の孤児を家族に受け入れた白人一家の家庭がうまくいかなくなり、別に結託するわけでもなく、孤児の小憎たらしいことと言ったら。 意味はよくわからなくても、これを言ったら周りの人間が悲しむとか嫌な思いをするとかは、子供でも察してしかるべきなんだああああ。 多分「あたしは好きでここにいるわけじゃない」という主張なんだろうけどさ。 皆さんのおっしゃっている、文章の技巧さみたいなものはよくわかりませんでした。

  • 2021/7/17購入

  • 特集:These Dreams of You

  • 2017/11/25

  • very veryアメリカ。アメリカが抱える歴史と現在の複雑なテーマを、時空を超えて様々なトピックスを織り上げるエリクソンのストーリーテリングが見事だ。ただしオバマ就任が重要なトピックスの一つになっている本書には旬があって、今読むのは少し遅かった。もっとも、次期大統領にはトランプがなるかという選挙の最中なので、アメリカの「意外な選択」を噛みしめる意味はある。

  • 『黒い時計の旅』とほぼ同時に読み始めて(黒い~は家で読む用、こちらは通勤電車用)黒い時計~は面白くてぐいぐい読み終えたのだけど、こちらはどうにも捗らなくて、半分くらい読んで1回数日寝かせてから再チャレンジ。後半に入ってやっと面白くなってきてなんとか読み終えました。先にこっちを読んでいたら、他のエリクソン作品を読もうと思わなかったかもしれない。難解・・・というか、入り込み辛かったのはあまりにもこの小説が「アメリカ」それも「現代のアメリカ」すぎたからかなあ。ナチスの時代なら過去のこととしてファンタジー化できるけれど、オバマだのブランジェリーナだのまだ生きてる人のことは近すぎて。デヴィット・ボウイは死んじゃったけど書かれた時点ではまだ存命だし。

    物語の舞台はアメリカだけでなくロンドン、パリ、ベルリン、エチオピアとどんどん移り変わっていく。主人公は元作家のザン、写真家の妻ヴィヴ、12歳の息子パーカー、そしてエチオピアから迎えた養女のシバ4歳の一家。ストーリーのアウトラインだけ辿るなら崩壊しかかった家族の再生物語。前半いまいち入りこめなかったのは、このファミリーのそれぞれがてんでバラバラに自分勝手なことをしていて、なんだかイライラしたから。あっというまに借金まみれになってしまう不安定な家庭でわざわざ南アフリカから養女を迎える夫婦、そのうえ養女の親戚に送金し続けたり、本当の母親をつきとめようと探偵までやとい、超貧乏になってもまだエチオピアまで実母探しに出かけるヴィヴの行動が全く理解できず、だったら養女など貰わなければいいのにと思ってしまう。

    中盤からザンの小説の中で起こったこととシバの祖母ジャスミンの過去が交差しはじめ、このくだりは黒い時計~同様とても面白かった。小説に書かれたことが現実でも実現していくのか、それとも現実に起こったことを小説に書いているだけなのか、その女性は実在するのか、たまたま小説の登場人物に選ばれてしまっただけなのか、それとも小説に書かれることによって彼女は存在したのか。ふいに時空がねじ曲がって、別の二十世紀に放り込まれてしまう感覚はとても好き。「ユリシーズ」が書かれる前の時代にそのペーパーバックを手にしてタイムスリップしてしまった男、ザンの小説の中で起こることがとても興味深かった。

  • 作者の文体を捉えた直接的な翻訳は、慣れるまで読みにくかった。読み解くというよりは、意味を受け取っていく小説。音楽を内包し、それが文章によって可視化されていく感じ。
    アメリカ人(筆者)が、社会の諸問題と個人の体験を呼応するように書いているため、日本人にとって身近に感じにくい部分もある。

  • ちょっと時間が経ってしまったので、ちゃんと書けないけど
    最近のエリクソンの中では特に好き

全17件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1950年、米国カリフォルニア州生まれ。作家。『彷徨う日々』『ルビコン・ビーチ』『黒い時計の旅』『リープ・イヤー』『Xのアーチ』『アムニジアスコープ』『真夜中に海がやってきた』『エクスタシーの湖』『きみを夢みて』などの邦訳があり、数多の愛読者から熱狂的な支持を受けている。大学で映画論を修め、『LAウィークリー』や『ロサンゼルス・マガジン』で映画評を担当し、映画との関わりは長くて深い。本作は俳優のジェームズ・フランコの監督・主演で映画化が進行している。

「2016年 『ゼロヴィル』 で使われていた紹介文から引用しています。」

スティーヴ・エリクソンの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
カーソン・マッカ...
レアード・ハント
スティーヴ・エリ...
バルガス=リョサ
チャールズ・ブコ...
リチャード パワ...
ロベルト ボラー...
リチャード パワ...
イタロ カルヴィ...
アンナ カヴァン
ミシェル ウエル...
リチャード ブロ...
ブライアン エヴ...
リチャード ブロ...
ジョン・ウィリア...
ウィリアム・サロ...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×