- Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480433084
感想・レビュー・書評
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「ある島の可能性」に引き続きウェルベック2冊目。本作も孤独な成金の一生が描かれている。そうはいっても、「ある島の可能性」と違うのは、人生の後半は自ら進んで隠者になっていったというところだろうか。一応殺人事件もあってミステリー的な要素もあるがそれほど苦労することもなく解決する。やはり、主題は芸術論である。
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時々読み返したくなりそう。ウエルベックの好きなところてんこ盛りな作品で、設定とあらすじから判断した予想通りウエルベックの私的ベストだった。「素粒子」のインパクトは未だに強烈に残ってるが、これは強烈というより主人公ジェドさながらに穏やかな作品だった。芸術に対する客観的な解釈を芸術家の孤独な半生と共に描き出すドラマ展開がいい。じんわりくる。芸術性と合理性とか芸術と金(資本主義)とかも興味深い。芸術作品を文章で表現する面白さもあった。特にジェドの遺作とか。どんな感じなのかなと想像して楽しい。
ウエルベック3冊読んで、どれも前半はじっくりと読まされ後半へ行くに連れ読む手を止められなくなるくらい吸引力が増していく。実在の人物を出してフィクションと繋げながら時代毎の空気や社会を語る面白さは実在部分の背景知識があればこそなんだけど、全くわからないなりにも面白いから凄い。装飾レベルなときもあるが、核心部分は引用の場合も含め文章にされてるしフィクションのキャラクターが動いて語ってくれるからかな。
知らない土地の話でも丁寧に描写する。固有名詞をバンバン出しながら丁寧に描写する文体も、見知った場所でありながらキャラクターの目を通した世界は読者にとって初めての新鮮なものであろうみたいな姿勢なのだろうか。
ウエルベックは「素粒子」→「ある島の可能性」→「地図と領土」と読んできた。あとは「セロトニン」に興味が湧く。他は苦手なセクシャル描写が多そうだったりあまり惹かれない題材だったりで今の所読む気はない。 -
ウェルベックはスキャンダラスなイメージだけが先行していて買わず嫌いだったけど、名声に負けない傑作!読んで良かった。
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「素粒子」に比べて政治的主張の色彩が薄い点で、より純粋かつ大衆に受け入れやすい小説。現代の商業的芸術に異議を唱えるべく、作家自ら死体となって現れるあたりは衝撃的でもある一方、心から美術を愛する人たちにとってはある種の救いになる作品でもあると思いました。
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22.9.14〜29
ウエルベックの作品を読むと、毎回中盤でほだされるのはどうしてだろう。主人公が語る建前の中からその奥にある感情を読み取れるようになるからなのかな。特に、この作品だと父との会話でうおーと感動して、そのままぐいぐいと読んだ。書き出しからある種のこっち側への宣言みたいに見て取れる/作家ウエルベック自身がこちらに見せかけている言葉たちも好き。カラックスのポーラXみたいだと思った。ウエルベックのなかだと一番好きかも。