- Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480434593
作品紹介・あらすじ
治安の総帥から政治家へ。――異色の政治家後藤田正晴は、どのような信念を持ち、どんな決断を下したのか。その生涯を多面的に読み解く決定版評伝。
感想・レビュー・書評
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官僚政治家として名をはせた後藤田正晴の生涯を記述した本。官僚出身の政治家は特別珍しいことではないが、後藤田は本のタイトルにあるように、典型的な政治家とは異なる特徴をもつ。後藤田は特別な理念や信ずる宗教、思想、哲学等を持っておらず、人脈作り、派閥作りに関しても熱心に取り組まなかった。本書を読むとわかるが、感性よりも論理、合理性を重んじる人物である。これは官僚としてキャリアが長かったこと、戦前期に特別な体験をしたことが影響しているためであろう。
後藤田は日本の転換期において官僚として仕事に勤しんだためか、通常の官僚出身の政治家とは一線を画す。後藤田は、敗戦から数年後に創設された警察予備隊(のちの自衛隊)で、いかに戦前のような軍事色をなくして、国民から歓迎されなければならないのかを工夫した。その経験から、彼は一環して憲法改正(第9条)に反対の立場であり、自衛隊の海外派遣が検討された際、声高に反対した。このように、自民党に属する政治家であるのにもかかわらず、社会党以上に反対の立場であったのは、現在の自民党の政治家を見ると意外であろう。
本書の冒頭を読んだ時点では、近寄りがたい人物と思うかもしれないが、読み進めていくうちに、徹底した合理論者ではなく、相手の心情を掌握できる、つまり、感情と論理の使い分け(特に人に対する怒り方)が卓越した政治家だということがわかる。これほどバランス調整が秀でている政治家はまれであろう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2020年3月読了。