品切れだったアンナ・カヴァンの短編集がちくま文庫に。ちくま文庫のカヴァンは『氷』に続いて2冊目。
この短編集、表題作にもなっている『アサイラム・ピース』も良いのだが、冒頭の『母斑』のインパクトを超えるものは無いだろう。
少女時代の記憶と、大人になってからの偶然の対比が言い様のない余韻を残して終わる。短編としてもかなり短いというのに、ここまで心に残るものは少ない。
『まだ実際に一部が刑務所として利用されているが、観光客も受け入れている施設』というのは、現実には存在しないものであろう、とは思う。しかし、何処かにありそう……というか、寧ろ、何処かにあって欲しい。そして出来るならば、自分もその場に立ってみたい。きっと楽しいだろう。
ところで、アンナ・カヴァンは、サンリオSF文庫から刊行されていた当時も、現在も、SF作家という受け取り方をされているんだろうか? 代表作である『氷』なんかはSFだと思うが、こと、本書に関しては、ホラーとして認識されていても不思議ではないなぁ。