翻訳教室 ――はじめの一歩 (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480437143

作品紹介・あらすじ

「翻訳をする」とは一体どういう事だろう? 引く手数多の翻訳家とその母校の生徒達によるとっておきの超・入門書。スタートを切りたい全ての人へ。

感想・レビュー・書評

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  • 2012年NHKの「ようこそ先輩 課外授業」を元にした本の文庫化。今月発売であとがきでは今のコロナ禍についても言及されてる。楽しい授業の様子や「想像力の壁を越え広げる」言語のかけがえのなさなど、心に響く話がたくさんありとても良かった。

  • ちくまプリマー新書から文庫に格上げ?

    翻訳教室 鴻巣 友季子(著/文) - 筑摩書房 | 版元ドットコム
    https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784480437143

  • ーー訳者というのは、まず読者なのです。翻訳というのは、「深い読書」のことなのです。(p.14)

    「読む」ことのプロ中のプロである翻訳家による本。異なる言語に架橋するための、柔らかで逞しい想像力を育む大切さを教えてくれる。

    偶然、先日、ようやく『the missing piece』の原書を手に入れた。まさか、この本でも取り上げられているとは。柳父章さんや多和田葉子さんの著書にふれた箇所もあり、これまでの自分自身の読書歴に重なるところが多い。また、ネガティヴ・ケイパビリティのような、最近の私の探求キーワードに触れた箇所もあり、この方の翻訳に私が惹かれるのももっともだと思えた。
    鴻巣さんの翻訳には、ずいぶん前からお世話になっている。『嵐が丘』『風と共に去りぬ』から始まり、最近ではマーガレット・アトウッド作品やクッツェー作品まで。もしかしたら本棚にある名前では一二を争う多さかもしれない。
    本書は小学六年生を対象にした翻訳の出前授業を中心にまとめられているが、内容は子ども向けではなく、中高生から大人がターゲット。語り口はやさしいし、読みにくさはないけれど、随所で考えさせられる。娘が英語を始めたら『the missing piece』と一緒に読ませよう。

  • 他言語を身につけるというのは、新しい視点をもつことでもあります。p176

    同質性、親和性だけだと、枠が広がっていかないでしょう。ある程度、異質性や他者性を感じる本を手に取ってみるのは、いいかもしれません。なにかちょっと神経を逆なでするような本、というのは、きっと興味のある本なんですよ。p186

    必要なのは、「受動的→能動的」といった発想の転換。能動的に読む、書く、聴く、話すことではないでしょうか。p203

    語学学習の核心にあるのは、やはり「読む」行為だと思います。よく読めるということは、よく聴くことを助け、よく読めてよく聴けることは、よく書く力を培う。その総合力として「話す」があるのではないでしょうか。p209

  • 小学生の想像力取り戻したい

  • 2012年におこなわれたNHKの番組「課外授業 ようこそ先輩」の授業記録を元にしてちくまプリマー新書で刊行されたものが、ちくま文庫入り(より広い読者を期待して? プリマー新書版を絶やしてしまうのも惜しい気がするが)。
    加筆・修正すこしあり、文庫版あとがきもついた。

    出張授業は身近な電車になりきるという準備運動を経て、シェル・シルヴァスタインの有名な作品「ぼくを探して」の原文を日本語に翻訳するというもの。すでに英語に親しんでいる子もいればほとんどゼロに近い子もいたはずだと思うが、かんたんなゲームでつづりや辞書に親しみ、ポイントを押さえた解説やヒント・挿絵を頼りに、グループごとに協力してそれなりの訳文を仕上げていく姿におどろかされる。そして「翻訳」は決して一部の専門家だけの特殊な仕事ではなく、わたしたちの日常の読書やコミュニケーションの延長線上にあるものなのだな、と気がつく。
    翻訳は深い読書であり批評であり、想像力で壁をこえ他者になりきり自分に還って自分の言葉として人に伝える行為であるということ。能動的に読むことの大切さ(そして楽しさおもしろさ)、個別の言語や文化それぞれのかけがえのなさと他の言語を学ぶ意味、こうしたことを実践を通じて12歳という年齢で学べた子どもたちはしあわせだと思うし、できれば教育課程の中でだれもがこうしたことを学べるようになってほしい。

  • 著者が母校の小学校で行った翻訳教室がベースになっているが、内容は予想以上に深いものだった。

    著者は能動的に読むことを強く推奨していて、翻訳とは超精読であり、原文に働きかけるように読むべしと熱く語っている。

    翻訳への興味は別にして、読書をより楽しみたいと思う人には有意義な刺激に溢れた内容だった。

  • ちょうど英語書籍を翻訳しており、単純な「和訳」の作業とは全く別の作業だと感じていたために読んだ。

    完全に中立な翻訳作業、すなわち「何も足さない、何も引かない」というのはあり得ないし幻想(p.196)であり、訳者は自分が原文から読み取ったものを大胆に引き受けて訳文を作っていくのだ、という主張が心に残った。

  • NHKの番組『課外授業 ようこそ先輩』をもとにした本。鴻巣友季子氏が母校の世田谷区立赤堤小学校の6年生に翻訳を教える。英文法も辞書の引き方もきちんと習っていない小学生が『Missing Piece』を訳す過程が面白く、しかも時にはなかなかの名訳に出くわしたりもする。

    鴻巣氏によれば、翻訳で大切なことは、「想像力の枠から出ようとすること。少なくとも、出ようとする意識をもつことです。言い換えれば、人間は自分の想像力の壁のなかで生きている。そのことを忘れないことだと思います」。
    だから鴻巣氏は、他者になりきること、世田谷線の列車の視点で物を見て列車の立場で考えることから翻訳のレッスンを始める。
    他者になりきることで「訳者が消える」、「透明な翻訳」が生まれる。それは受動的(機械的)な翻訳のことではない。翻訳は「英文和訳」ではない。翻訳とは「深い読書」。

    "I love you"を文豪たちがどう訳したかという話が面白かった(『I Love Youの訳し方』という本もあった)。なるほど、「見る角度によって言葉の姿はずいぶん変わる」。翻訳に正解はない。正解がなければ誤答もない。想像力に正解も誤答もないのだから。

  • 私英語の本を読んでない。なんでだろう。読んでない。読めなくなってるのかもしれない。なんでだろう。
    翻訳の本質的な部分と、読むこと。文庫あとがきがよかった。

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著者プロフィール

英語翻訳家、文芸評論家。古典新訳にマーガレット・ミッチェル『風と共に去りぬ』、シャーロット・ブロンテ『嵐が丘』、他訳書に、J・M・クッツェー『恥辱』など多数。著書に『翻訳ってなんだろう?』、共著に『翻訳問答』など。

「2020年 『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』 で使われていた紹介文から引用しています。」

鴻巣友季子の作品

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